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文化庁月報
平成24年4月号(No.523)

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連載 「言葉のQ&A」

「号泣する」の意味

文化部国語課

 ウェブサイトなどには,「声を押し殺して号泣した」「周囲に気付かれないように号泣した」といった表現が見受けられますが,これらの使い方は,本来の「号泣する」の意味とは違っています。

  • 問1 「号泣する」とは,本来どのような意味なのでしょうか。
  • 答 「号」という漢字には「大声で叫ぶ」の意味があります。「号泣する」とは,大声を上げて泣くことです。

 まず,「号泣」を辞書で調べてみましょう。


「日本国語大辞典 第2版」(平成12〜14年 小学館)

号泣 [名]大声を上げて泣き叫ぶこと。

「大辞林 第3版」(平成18年 三省堂)

号泣  [名](スル)大声をあげて泣くこと。泣き叫ぶこと。

「新明解国語辞典 第7版」(平成23年 三省堂)

号泣  ―する(自サ) (涙を見せたことのないような一人前の男性が)感きわまって大声をあげて泣くこと。

 ここに挙げた辞書に共通しているのは,「大声を上げて泣く」という点です。これは,「号」という漢字に「大声を上げる」という意味があることによります。漢和辞典を見てみましょう。

「新選漢和辞典 第7版」(平成15年 小学館)

号  意味 一〈さけ・ぶ〉〈な・く〉 [1]大声でさけぶ。[2]とらや動物がほえる。[3]大声でなきさけぶ。

同様に「大声で叫ぶ」という意味で「号」が用いられている熟語には,「号令」や「怒号」などがあります。

  • 問2 「号泣する」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。
  • 答 本来の意味である「大声を上げて泣く」を選んだ人の割合よりも,「激しく泣く」を選んだ人の割合が14ポイント上回るという結果でした。

 平成22年度の「国語に関する世論調査」で,「悲しみの余り,号泣した。」という例文を挙げて,「号泣する」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。)

(ア) 「大声を上げて泣く」という意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  34.1%
(イ) 「激しく泣く」という意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  48.3%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  14.8%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  1.0%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  1.8%

号泣する

 全体では,本来の使い方とは違う(イ)「「激しく泣く」という意味」を選択した人の割合が48%を超え,本来の使い方である(ア)「「大声を上げて泣く」という意味」を選択した人の割合(約34%)を上回っています。年代別のグラフでも,20代の数値が接近しているのを除いては,どの年代でも「激しく泣く」を選んだ人の割合が明らかに多くなっています。
 では,「号泣」という言葉が,実際にどのような使われ方をしているのかを見てみましょう。以下は,ウェブサイトで実際に使われていた「号泣」の例です。

・母が横で声も出さずに号泣していました
・明らかに涙を出さず,声を出さず号泣されておられたと……
・号泣ですよ!最後なんて声出さないようにするので精一杯でした
・声を押し殺して号泣してしまいました
・帰り道で思いっきり声を押し殺して号泣した

 僅かな涙をこっそりとこぼすような泣き方を「号泣」としているものは見当たりません。しかし,ここに挙げたように「声を出さずに」「声を殺して」号泣するといった使い方は多く見られます。つまり,声を上げるかどうかにかかわらず,「激しく泣く」「大泣きする」というような意味で「号泣」が使われている場合があるということです。「号泣」は「激しく泣く」泣き方の一つではありますが,大声を上げる場合だけを捉えて使われていたのですから,本来は「声を押し殺して号泣」することはできません。
 このように「号泣」の意味するところの範囲が拡大して用いられるようになったのは,週刊誌やテレビ番組などが,誰かの激しく泣く様子を,声の有無にかかわらず,「号泣」と表現し始め,それが,次第に,一般にも広がっていったのではないかと思われます。激しく泣いたり,大泣きしたりすることを表すのに,ふさわしい熟語がほかにないことなども関係しているのかもしれません。

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