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文化庁月報
平成24年8月号(No.527)

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特集 歴史文化基本構想

歴史文化基本構想

文化財部長 石野利和

 文化庁は,地方公共団体が歴史文化基本構想を作成する際の参考となるよう,本年2月に「歴史文化基本構想」策定技術指針PDFファイルが別ウィンドウで開きます(PDF形式(260KB)(以下,「技術指針」とする。)を作成し,各都道府県教育委員会に通知するとともに,域内の市区町村教育委員会への周知をお願いしました。今月号では,歴史文化基本構想について特集していますが,まず,そもそも歴史文化基本構想とは何か,また,技術指針の作成に至るまでの経緯や,今後の歴史文化基本構想の展望等について説明します。

目次

  1. 1 歴史文化基本構想とは
  2. 2 なぜ歴史文化基本構想が必要なのか
  3. 3 歴史文化基本構想の今後の展望

1. 歴史文化基本構想とは

 歴史文化基本構想とは,「地域の文化財をその周辺環境も含め総合的に保存・活用していくための基本構想」であり,地方公共団体が文化財保護行政を推進するためのマスタープランとなるものです。また文化財を活かした地域づくりに資するものとして活用することが期待されています。我が国の文化財保護の体系は,文化財保護法により文化財を6つの類型(有形文化財,無形文化財,民俗文化財,記念物,伝統的建造物群,文化的景観)に分類し,その分類ごとに国が指定等することを基本としています。しかし,文化財として国又は地方公共団体による指定の措置がとられているか否かにかかわらず,歴史上又は芸術上の価値が高いもの,あるいは人々の生活の理解のために必要なものすべてが文化的所産です。そのため,歴史文化基本構想は,文化財保護法の6つの類型にとらわれることなく,また,指定・未指定に関わらず,文化財を幅広く捉えて,その周辺環境も含めて総合的に把握して保存・活用することを目指すものです。歴史文化とは,文化財とそれに関わる様々な要素とが一体となったものであり,文化財が置かれている自然環境や周囲の景観,文化財を支える人々の活動に加え,文化財を維持・継承するめの技術,文化財に関する歴史資料や伝承等の「文化財の周辺環境」も含まれています。
 歴史文化基本構想と歴史まちづくり法(正式名称は「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律別ウィンドウが開きます」)による歴史的風致維持向上計画とは密接な関係があります。歴史的風致維持向上計画は,市町村が策定し主務大臣(文部科学大臣,農林水産大臣,国土交通大臣)の認定を受けることにより,法律上の特例措置や国による各種支援を受けながら,歴史的価値の高い建造物の復元などにより良好な市街地の環境を向上させるものです。歴史的風致を構成する固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動や,その活動が行われる歴史上価値の高い建造物等は文化財であることが多いため,歴史的風致維持向上計画の策定にあたっては,あらかじめ歴史文化基本構想を策定し,それを踏まえたものとするよう努めることが望ましく,そのことは,歴史まちづくり法第4条第1項に基づき定められた歴史的風致維持向上基本方針PDFファイルが別ウィンドウで開きます(PDF形式(240KB))にも記述されています。

2. なぜ歴史文化基本構想が必要なのか

 東日本大震災で被害を受けた文化財は,国指定等に限っても744件にものぼります。これら以外にも被害を受けた文化財は多数存在するものと見込まれ,それらは,地域の人々が気付かないうちに滅失している可能性もあります。地域の宝である文化財がその地域の人々に気付かれぬ間に失われてしまうことは大変残念なことです。そのような事態を防ぐためにも,文化財を周辺環境も含めて総合的に把握することを踏まえた歴史文化基本構想は重要な役割を果たすのです。このたびの震災により,歴史文化基本構想の重要性を一層強く認識する必要があると感じています。
 大規模災害によらずとも,文化財は常に滅失の危機にさらされています。長い歴史の中で,有形・無形を問わず,文化財は人の手により保存,継承していく取り組みを続けていかなければ,滅失してしまいます。文化財を滅失の危機から救うためには,それぞれの地域において,文化財を把握して保存・活用することが不可欠であり,そのためにも歴史文化基本構想の策定が必要なのです。
 技術指針では,歴史文化基本構想の策定により,以下のような効果が期待されるとしています。

  • 文化財を総合的に把握することは,類型ごとの文化財保護の枠組みでは考慮しづらい視点からも捉えることになり,文化財が有する多様な価値を顕在化することができる。その結果,他の文化財や周辺環境と一体的に保存・活用することの必要性が周知され,社会全体として文化財を保護するという気運にもつながる。
  • 文化財をその周辺環境と一体的に捉えることによって,文化財を核とした地域の魅力の増進につながり,地域の活性化にも資する。
  • 文化財を人々の営みの中で,自然や風土,社会や生活を反映しながら今日まで伝承され,発展してきたものという視点から捉えることにより,文化財は地域にとってのかけがえのないものとして捉えられる。その結果,地域との連携協力の推進が図られる。
  • 歴史文化基本構想の策定に当たり,関係機関との連携が不可欠であることから,都市行政や景観行政をはじめ他の行政分野との連携を図るための契機になる。

3. 歴史文化基本構想の今後の展望

 文化庁は,技術指針を作成したことを踏まえ,地方公共団体の実務担当者の皆様を対象として,歴史文化基本構想に関する研修会を本年2月に東京・一ツ橋の学術総合センターで開催しました。この研修会には,文化財のみならず都市計画やまちづくりの担当の皆様にもご参加いただきました。この研修会では,平成20年度から平成22年度に「文化財総合的把握モデル事業(以下,「モデル事業」とする。)」を実施していただいた23市町村の皆様から,モデル事業の成果についてご報告いただきました。また,研修の最後に実施した演習では,島根県益田市から歴史文化の特徴等についてご説明いただき,それをベースに参加者同士で大変熱心な議論が行われました。文化庁では,今後も引き続き歴史文化基本構想の研修会を開催したいと考えています。
 歴史文化基本構想は,地域の,地域による,地域のための文化財保護のマスタープランです。文化庁としては,各地方公共団体において歴史文化基本構想の策定に向けて積極的な検討がなされ,歴史文化基本構想の策定が全国的に推進されることを期待しています。文化庁では,「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」を実施していますが,この事業では,歴史文化基本構想の策定に向けての文化財の総合的把握のための調査や歴史文化基本構想策定後の取り組みについて,国の支援を受けることが可能です。各地方公共団体の皆様におかれては,歴史文化基本構想に関してご不明な点があれば,いつでも文化庁までご相談いただければ幸いです。

歴史文化基本構想に関する研修会(平成24年2月 学術総合センターにて)

歴史文化基本構想に関する研修会
(平成24年2月 学術総合センターにて)

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