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文化庁月報
平成24年11月号(No.530)

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連載 「言葉のQ&A」

「御の字」の意味

国語課

 「70点取れれば御の字だ。」のように使われる「御の字」。本来の意味とは異なる「一応,納得できる」という意味でとらえている人が多いことが「国語に関する世論調査」で分かりました。

  • 「御の字」とは,本来どのような意味でしょうか。
  • 答 大いに有り難い,非常に満足である,という意味です。

 「御の字」を辞書で調べてみましょう。


「広辞苑 第6版」(平成20年・岩波書店)

おんのじ【御の字】(1)最上のもの。極上のもの。結構なもの。「今の世の――の客」(2)ありがたい,しめたなどの意。「この試験に六〇点とれれば――だ」

「日本語源大辞典 初版」(平成17年・小学館)

おん―の―じ【御の字】江戸初期の遊里語から出た語。御の字を付けたいほどのものの意から。(1)特にすぐれたもの。また,そのような人。(2)非常に結構なこと。きわめて満足なこと。

 辞書が示すように,本来,「御の字」は「それ以上になく有り難いもの」を示す言葉で,「ひとまず,納得する」というような意味ではありません。「日本語源大辞典」に「御の字を付けたいほどのものの意」とありますが,「(おん)」とは「からだ」の敬称である「御身(おんみ)」や「その人自身」を敬って言う「御自(おんみずか)ら」のように,言葉の頭に付いて尊敬の意味を添えて,特に優れたもの,最上のものを表す接頭辞です。このように「「御」の字を付けたいほど非常に有り難いもの」という意味が「御の字」には込められています。

  • 問2 「御の字」について尋ねた「国語に関する世論調査」の結果を教えてください。
  • 答 本来の意味である「大いに有り難い」と答えた人が4割弱,本来の意味ではない「一応,納得できる」と答えた人が5割強という結果でした。

 平成20年度の「国語に関する世論調査」で,「70点取れれば御の字だ」という例文を挙げ,「御の字」の意味を尋ねました。結果は次のとおりです。(下線を付したものが本来の意味。)

〔全 体〕

(ア) 一応,納得できる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51.4%
(イ) 大いに有り難い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38.5%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.5%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.1%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.6%

〔年代別グラフ〕

「御の字」

 全体の調査結果を見ると,本来の意味である(イ)「大いに有り難い」と回答した人の割合は4割弱で,5割強の人が本来の意味とは異なる(ア)「一応,納得できる」という意味で解釈していることが分かります。また,「分からない」の割合が全体の5.6%であることから,9割以上の人が「御の字」を日常でよく耳にしたり,使用したりしていると言えそうです。
 年代別に見ても,本来の意味ではない(ア)「一応,納得できる」と回答した人の割合が,どの年代でも,本来の意味である(イ)「大いに有り難い」を上回っていることが分かります。(ア)と(イ)の差は,30代と40代では他の年代に比べて小さいですが,16〜19歳と60歳以上では大きく開いています。
 ところで,「70点取れれば御の字だ。」と誰かが言った場合,その発言を聞いた人が「70点」をどのようにとらえるかが「御の字」の意味に影響している可能性があります。御の字の本来の意味を知っている人は,自分自身の「70点」に対する感じ方とは関係なく,その誰かの発言を「70点取れれば大いに満足だ。」と解釈することができるでしょう。しかし,本来の意味を知らない人の中には,「70点」を「満足ではないが,喜べる最低ラインの点数」と受け取って「70点取れればとりあえず納得できる。」と解釈する人がいるかもしれません。今回御紹介した調査結果では,本来の意味を知らない人が,例文の「70点」を「有り難い」点数ととらえたかどうかということが,回答に影響した可能性があるように思われます。

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