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文化庁月報
平成25年3月号(No.534)

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連載 「著作権トピックス」

意思表示システムの在り方に関する調査研究

株式会社野村総合研究所 上級コンサルタント 小林 慎太郎

 あらかじめ著作物の利用許諾に関する意思を,著作権者が表示しておく仕組み「意思表示システム」は,著作物の円滑な流通・利用を促進する方策の一つとして普及しつつあります。文化庁の「著作物等の円滑な利用,流通の促進に関する調査研究」の一環として,平成23年度実施の本調査研究では,国内外の動向や先行事例の研究,有識者委員会における検討を通じて我が国における意思表示システムの在り方について政策評価の枠組みに沿って整理し,その施策の方向性についてとりまとめました。

意思表示システムの検討経緯

 文化庁では,意思表示システムとして「自由利用マーク」を平成15年2月に策定し,現在に至るまで運用しています。しかし,同マークは,選択できる意思表示の条件が限られている等の課題があるため,新たな意思表示システム(以下「CLIPシステム」という。)を構築することとし,平成19〜21年度において,有識者による研究会を実施するとともに,運用のための情報システムを整備してきました。こうしてできたCLIPシステムの構想は,対象分野を,(1)すべて,(2)非営利分野,(3)福祉・教育分野の3つから選択し,改変の可否,許諾条件等の設定を柔軟に設定するものとなりました。
 一方,この間に民間団体が運営する類似の意思表示システム「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」(以下「CCライセンス」という。)が急速に普及し,民間,公共を問わずグローバルにCCライセンスを付与したコンテンツが流通するようになりました。CCライセンスは,表示,改変禁止,非営利,継承の4種類のマークを利用者が目的に応じて組合せて表示するもので,CLIPシステムのように個別の許諾条件を付与することは認められていません。CCライセンスが台頭する中で,CLIPシステムの構想を実行段階に移すべきか難しい判断が求められていました。

あるべき意思表示システムとは

 本調査研究では,福井健策弁護士(骨董通り法律事務所)を主査とする委員会を立ち上げ,国内外の事例研究や有識者への聞き取り調査を通じて,あるべき意思表示システムの在り方を検討しました。
 著作物の流通・利用を促進するために意思表示をするのであれば,エンドユーザ,クリエータなど利用者全てにとってわかりやすいことが不可欠で,マークは有効なツールです。一方,著作権者の許諾に係る意思を正確に表現するためには,単純なマークの組み合わせだけでは困難で,個別の条件付与が必要になります。ここには明確なトレードオフがありますが,本委員会では,わかりやすさを重視する意見が優勢でした。
 また,意思表示システムを安心して利用するためには,そのサービスが継続的に提供されると見込まれることが重要です。CCライセンスの運用には,多くの法律家,システムエンジニア等が携わって,大きな労力と費用が投じられていることに鑑みると,継続的な意思表示システムの運用には,安定した予算と人材の確保が不可欠です。さらに,国境を越えて著作物が流通するネットワーク社会において,意思表示システムがグローバルに通用することも欠かせない要素となりつつあります。
 検討の結果,民間の自主的な取組(CCライセンス等)を支援し,CLIPシステムの構築・運用に係る事業は廃止する方向で委員の意見が一致し,評価をとりまとめました。本調査研究の結果が今後の施策展開の契機となることを期待します。詳細については「意思表示システムの在り方に関する調査研究報告書」(平成24年3月)PDFファイルが別ウィンドウで開きますを参照ください。

自由利用マークの概要

自由利用マークの概要

CCライセンスのマークと概要

CCライセンスのマークと概要
(氏名)小林 慎太郎 (職業) 株式会社野村総合研究所
【経歴・活動欄】
ICT・メディア産業コンサルティング部ならびに未来創発センター所属の上級コンサルタント。専門はIT公共政策・経営。
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