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文化庁月報
平成25年4月号(No.535)

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連載 「文化交流使の活動報告」

ヨーロッパでの文化交流使としての活動

雅楽演奏家 真鍋尚之

 2011年5月14日〜2012年5月13日まで文化交流使としてのベルリンを拠点に12ヵ国,30都市で50回の演奏会,およびワークショップや作曲家との共同作業を行った。

 活動の内容は

  1. 雅楽および笙についてのワークショップ。(歌唱指導・レンタルの笙を用いて演奏体験)
  2. 現地(ケルン)の雅楽アンサンブルの指導(笙・合奏・舞)計11回,毎回約5時間。舞の指導を重点的に合奏や笙の指導
  3. ベルリン在住の中国笙奏者との技術交換(毎週。4時間以上。日本の雅楽の奏法を伝えるとともに,中国笙の技術指導を受けた。)
  4. 作曲家と笙の新しい作品・可能性について共同作業。(18曲の笙のための作品を初演。演奏した曲,計50曲以上)
  5. アンサンブルなど他の楽器との共演。(共演した演奏家約20名)
  6. 日本人作曲家の作品の紹介。


 私は雅楽の演奏家であり,また現代音楽の作曲家・演奏家でもある。伝統を継承していくと共に,新しいものを創ると言う,相容れないものを同時に行っている。
 10数年前に始めた新しい作品を創る活動から数多くの作品が生まれ,自作および作曲家との共同作業により,完全に独奏楽器としての地位を築くところまで到達した。
 雅楽は合奏の形態で演奏されるので一人では演奏できない。単身で渡る今回は独奏の演奏会を中心に雅楽についてのレクチャーを行い,作曲家に笙の作曲法を教え,試演などの共同作業を進めつつ初演するという活動を行った。
 ヨーロッパで活動していて感じるのは普通の人が普通に興味を持ち,普通の場所でごく自然に演奏会を聞きに来るという事。それはクラシックであろうが現代音楽であろうが現代美術であろうが,あまり境界はなく,身近にあると言うこと。だから良いと思ってもらえた瞬間に演奏会の企画の話しはとんとん拍子に進んでいくし,熱心なお客さんが集まる。
 作曲家との共同作業は作曲家に新たに曲を書いてもらい,練習して本番を行うという性質上数ヶ月の準備期間を要する。諸事情によりベルリン到着から全ての準備をしなければならなかった。

 最初のひと月は家探しを初めとする一年の生活の準備,また演奏会が数多くあり同時に作曲の締切も迫りとにかく綱渡りの生活であった。
 その後は夏休みの時期もあり比較的じっくりと秋以降の準備を進める事ができた。その成果は秋以降,特に2月から5月の帰国直前までに突如として現れ,日程の都合上断らざるを得ない事もしばしばあった。
 文化交流使としての任期は2012年5月で終わったが,現在もその活動は続き2012年12月,東京にて活動の成果を発表するリサイタルを開催。
 2013年2月にはアンサンブル作品の初演,デュオ・ソロなど計4公演。
 7月および11月,ヨーロッパでの雅楽公演。滞在中に紹介できなかった本格的な雅楽公演の実現へ向けて準備中。
 今後も日本ではヨーロッパの優れた作曲家や演奏家を紹介し,ヨーロッパへは雅楽と日本の優れた作曲家を紹介する活動を続けていくつもりだ。

真鍋尚之

真鍋尚之

1971年神奈川県に生まれる。
洗足学園大学(現・洗足学園音楽大学)作曲・声楽専攻卒業。
東京芸術大学邦楽科雅楽専攻卒業。
 1998年第1回国立劇場作曲コンクールで「「呼吸U」が優秀賞(1位)を受賞するなど作曲および演奏での受賞多数。小野雅楽会・十二音会において笙・楽奏・楽琵琶・右舞の雅楽演奏のみならず,雅楽器のための作品の演奏,雅楽器及びその他の邦楽器・洋楽器・合唱等の作曲,共演等を行っている。2011年5月〜2012年5月まで文化交流使としてドイツ・オランダ・ベルギー・オーストリア・スイス・フランス・イタリア・チェコ・スウェーデン,ロシア,ベラルーシ,セルビアにて活動。

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