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文化庁月報
平成25年4月号(No.535)
特集
平成25年度の文化行政 〜重点的な取組〜
目次
- 1 豊かな文化芸術の創造と人材育成
- 2 我が国のかけがえのない文化財の保存・活用及び継承等
- 3 我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進
- 4 国語及び日本語教育に関する施策の推進
- 5 文化発信拠点の整備
- 6 デジタル化,ネットワーク化に対応した著作権行政
文化芸術は,人々が真にゆとりと潤いを実感できる心豊かな生活を実現していく上で不可欠なものであると同時に,個人としての,またさまざまなコミュニティの構成員としての誇りやアイデンティティを形成する,何物にも代え難い心のよりどころとなるものであって,国民全体の社会的財産です。
また,文化芸術は,創造的な経済活動の源泉であるとともに,人々を惹きつける魅力や社会への影響力を持つ「ソフトパワー」であり,持続的な経済発展や国際協力の円滑化の基盤ともなることから,我が国の国力を高めるものです。
このような認識のもと,心豊かな国民生活を実現するとともに,活力ある社会を構築して国力の増進を図るため,文化芸術の振興を国の政策の根幹に据え,今こそ新たな「文化芸術立国」を目指す必要があります。
平成24年度には,著作権法改正,「劇場,音楽堂等の活性化に関する法律」,「古典の日に関する法律」など,法律面の整備が実現されました。
平成25年度文化庁予算においては,「文化力による地域と日本の再生」を目指し,総額1,033億円を確保したところです。具体的には,豊かな文化芸術の創造と人材育成,かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等や,我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進といった主要政策を通じた文化芸術の地域活性化への活用など,「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」を踏まえた内容となっています。このほか東日本大震災復旧・復興対策として国指定等文化財の復旧等に21億円(東日本大震災復興特別会計)を計上しています。
1 豊かな文化芸術の創造と人材育成
平成24年6月,「劇場,音楽堂等の活性化に関する法律」が制定されました。この法律は,劇場,音楽堂等の活性化を図ることにより,我が国の実演芸術の振興を図るため,劇場,音楽堂等の事業,関係者並びに国及び地方公共団体の役割,基本的施策等を定めたものです。この法律に基づき,我が国の文化拠点である劇場,音楽堂等が行う優れた実演芸術の創造発信等を総合的に支援します。
また,優れた文化芸術創造活動を生み出す環境を創出し,我が国の芸術水準と国際的評価を高めるため,我が国のトップレベルの芸術団体による舞台芸術の創造発信を重点的に支援します。
さらに,発表・研修の機会の提供など新進芸術家の育成や,一流の芸術団体・芸術家による,子どもたちの文化芸術体験の機会の提供を通じ,将来の芸術家の芽を育み,国民すべてが観客となる土壌をつくるとともに,創造力を育成し,自由な発想やひらめき・感性を備えた強い人材の育成を実現します。
(1)文化芸術創造活動に対する効果的な支援
- 【1】トップレベルの舞台芸術創造事業
我が国の芸術水準の直接的な牽引力となる芸術水準の高い団体が行う,音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能の芸術創造活動に対し支援を実施します。平成23年度から,次のように新たな支援を導入しています。- (イ) 公演本番に必要な出演料,会場費等についてはチケット収入等の自己収入で賄い,支援は,脚本や演出,稽古等の公演以前の芸術創造活動に必要な費目に限定
- (ロ) 一定期間を見越し,安定した芸術創造活動を実施できるよう,1事業単位の支援を行うだけでなく,年間の優れた芸術創造活動を事業ごとに積み重ねた,年間事業支援の導入
- 【2】日本版アーツカウンシルの試行的導入
文化芸術活動への支援策をより効果的に行うため,専門家を活用した審査・評価の仕組み(日本版アーツカウンシル)を独立行政法人日本芸術文化振興会において試行的に導入しています。(対象分野:音楽,舞踊,演劇,伝統芸能・大衆芸能)
5都市共同制作公演
ビゼー 歌劇カルメン「東京芸術劇場」
(2)劇場・音楽堂等活性化事業
劇場,音楽堂等が行う,音楽,舞踊,演劇等の実演芸術の創造発信や,専門的人材の養成,普及啓発事業,劇場,音楽堂等間のネットワーク形成等に対し,総合的に支援することにより,文化拠点としての活性化等を図り,地域コミュニティの創造と再生を推進し,心豊かな国民生活及び活力ある地域社会の実現に寄与します。
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【1】特別支援事業
我が国の実演芸術の水準を向上させる牽引力のあるトップレベルの劇場,音楽堂等が行う国際的水準の実演芸術の創造発信や,専門的人材の養成事業,普及啓発事業等を総合的に支援します。 - 【2】共同制作支援事業
実演芸術の創造発進力を高めることを目的として,複数の劇場,音楽堂等が複数又は単一の実演芸術団体と共同して行う実演芸術の新たな創造活動(新作,新演出,新振付,翻訳初演等)を支援します。 - 【3】活動別支援事業
地域の実演芸術の振興を牽引する劇場,音楽堂等が中心となり,地域住民や芸術関係者等とともに取り組む実演芸術の創造活動や人材養成事業,普及啓発事業を活動単位で支援します。 - 【4】劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援事業
劇場,音楽堂等相互の連携・協力を促進し,国民がその居住する地域にかかわらず等しく実演芸術を鑑賞できるよう,劇場,音楽堂等又は芸術団体が企画制作する実演芸術の巡回公演に対し支援します。 - 【5】劇場・音楽堂等基盤整備事業
劇場,音楽堂等において自主的・主体的な実演芸術活動が行われる環境を醸成するため,各種情報提供,調査研究及び研修会(アートマネジメント研修,技術職員研修)を文化庁が実施します。
(3)芸術祭
芸術祭は,広く一般に内外の優れた芸術作品を鑑賞する機会を提供するとともに,芸術の創造とその発展を図ることを目的に,昭和21年以来,毎年秋に開催されています。
山梨大会マスコット「カルチャくん」
(4)国民文化祭
国民文化祭は,アマチュア活動を中心とした国民一般のさまざまな文化活動を全国規模で発表する場を提供し,顕彰等を実施することにより,文化活動への参加意欲を喚起し,新たな文化の創造を促し,地方文化の発展に寄与することを目的として,開催される文化の祭典です。第28回となる平成25年度は,「文化の風とあそぶ〜みつめる・こえる・つなげる」をテーマに山梨県で開催されます。
(5)地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ
地方公共団体が企画する音楽,演劇,舞踊,美術,メディア芸術等を中心とした文化芸術の創造発信事業に対して補助することにより,文化芸術活動等を活発化させ,地域文化の再生やコミュニティの再構築などを図り,地域の活性化を推進します。
(6)次代の文化を創造する新進芸術家育成事業
新進芸術家等が基礎や技術を磨いていくために必要な舞台などの実践の機会や,広い分野に関する知識を身につける場を提供するとともに,その基盤整備を行います。
平成24年度次代を担う子どもの文化芸術体験事業(巡回公演事業)
(7)次代を担う子どもの文化芸術体験事業
子どもたちが,優れた文化芸術を鑑賞し,文化芸術団体による実演指導,ワークショップやこれらの団体との共演に参加し,優れた文化芸術に身近に触れる機会を提供します。
- 【1】文化芸術団体による巡回公演
- 【2】文化芸術団体によるワークショップ
- 【3】芸術家個人・小グループの学校への派遣
(8)新進芸術家の海外研修制度
美術,音楽,舞踊,演劇等の各分野における新進芸術家に,海外で実践的な研修に従事する機会を提供します。
1年派遣,2年派遣,3年派遣,特別研修(80日間)の4種類があり,これまでに約3000名を派遣しています。
長崎大会マスコットキャラクター「美龍(めいろん)」
(9)全国高等学校総合文化祭
全国高等学校総合文化祭は,高校生の芸術文化活動の向上充実と相互交流を深めることを狙いとして,昭和52年から開催している我が国最大規模の高校生の文化の祭典です。
大会の出場者が日頃の活動の成果を競い合い,交流を深める一方,大会の企画・運営にも高校生が中心的な役割を担うなど,高校生ならではの柔軟な発想を活かした大会となっています。第37回目となる平成25年度は,「集え長崎 帆を張れ 文化の船に」をキャッチフレーズに長崎県で開催されます。
2 我が国のかけがえのない文化財の保存・活用及び継承等
我が国の歴史,文化等の正しい理解のため欠くことのできない文化財について,国宝・重要文化財等の保存修理や防災施設の整備等を実施するとともに,東日本大震災により被災した文化財の復旧等を行うなど,次世代に確実に継承するための施策を推進します。
また,各地域の文化財等について,国と地域の「たから」,価値ある文化資源と捉え,地域の振興・活性化に活用するなどの取組を推進します。
国宝 歓喜院聖天堂(埼玉県熊谷市)
「写真提供:清水襄」
(1)建造物の保存修理等
国宝・重要文化財(建造物)を適切に保存し次世代に継承していくため,所有者等が実施する保存修理や防災施設整備等の事業に対し,補助及び指導・助言を行います。
(2)美術工芸品の保存修理等
国宝・重要文化財(美術工芸品)のうち,材質が脆弱な上に長い年月を経過して,風化,材質疲労等による損傷の進行が著しい状況におかれている文化財の修理や,防災設備の整備に対し,補助及び指導・助言を行います。
(3)伝統的建造物群の保存修理等
重要伝統的建造物群保存地区における集落・町並みの特性を維持していくため,市町村が実施する保存修理・修景,防災施設設備等の事業に対し補助及び指導・助言を行います。
国宝 土偶(山形県西ノ前遺跡出土)
(4)文化財建造物等を活用した地域活性化事業
文化財建造物等の公開活用を促進するため,ガイダンス施設や案内板の設置,環境整備等の支援を行います。
重要伝統的建造物群保存地区については,地区内の安全性向上のため,耐震事業にも支援を行います。
(5)地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業
史跡等の公開活用のための復元整備,石垣の崩落防止措置など安心・安全のための防災対策等を支援します。
(6)地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業
美術館・歴史博物館を地域の文化の拠点として活性化するとともに,地域との共働の下,美術館・歴史博物館が有する多面的な可能性を生かした事業の展開を支援します。
(7)文化遺産を活かした地域活性化事業
我が国の「たから」である地域の多様で豊かな文化遺産を活用した,伝統行事・伝統芸能の公開,後継者養成,古典に親しむ活動や,子ども達が親とともに地域の伝統文化に触れる体験事業など,特色ある総合的な取組を支援することで,文化振興とともに地域活性化を推進します。
(8)文化財の保護対策の検討
美術品のより安全な保存・管理環境を確保するため,適切な防災設備,保存(活用)施設等の設計及び管理の指針を構築します。
また,工芸技術分野の重要無形文化財の「わざ」やこれまで公開する機会が少なかった無形の文化財を支える伝統的な技術・技能を作品や関係資料等によって広く一般に公開し,その重要性を理解できる機会を提供します。
(9)「歴史文化基本構想」普及促進事業
全国の市町村が,地域の文化財を総合的に保存・活用するための基本的な方針である「歴史文化基本構想」の普及促進を図ります。
(10)国宝・重要文化財等の買上げ
国民の財産である文化財の散逸・滅失を未然に防ぐとともに,国民の鑑賞機会の充実を図るため,国による適切な保存・活用が必要な国宝・重要文化財等の買上げを実施します。
(11)高松塚古墳壁画保存・活用の推進
国宝高松塚古墳壁画は,石室を解体して壁画を修理する保存方針に基づき,石室解体後,修理施設において保存修理作業等を実施しています。引き続き壁画の保存修理作業を行うとともに,修理施設の公開等を実施します。
(12)キトラ古墳保存修理等
我が国の歴史を理解する上で極めて高い価値を有する特別史跡キトラ古墳の恒久的な保存と確実な継承を推進するため,取り外した壁画の本格的な保存修理(天文図の再構成等),古墳の整備及び壁画の保存管理施設の設計等を実施します。
史跡 小田原城跡(神奈川県小田原市)
(13)記念物等の保存整備・活用
史跡,名勝,天然記念物,文化的景観,埋蔵文化財等の保存整備等について,十分な補助を行うとともに,その活用を図る事業を支援します。
(14)無形文化財の伝承・公開
重要無形文化財の保護のため,各個認定の保持者(いわゆる「人間国宝」)に対する特別助成金の交付を行うとともに,保持団体や地方公共団体等が実施する伝承者養成事業や公開事業に対して補助を行います。
また,経済状況や生活様式の変化等による影響を受けて,無形文化財の「わざ」を保有する後継者の確保が困難となり,継承そのものが危ぶまれることから,支援が必要な無形文化財については,「わざ」の保有団体が実施する伝承者養成事業等に必要な補助を行います。
重要無形文化財「歌舞伎女方」
保持者:守田伸一(芸名 坂東玉三郎)
演目:「助六」揚巻 「写真提供:松竹株式会社」
(15)文化財保存技術の伝承等
文化財保存技術については,その保持者・保存団体を認定するとともに,伝統的な技術・技能を保存・伝承するための取組に対して補助を行います。また,生活様式の変化や技術の機械化などの影響を受け,文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術・技能を保有する後継者の確保が困難となっており,継承そのものが危ぶまれることから,支援が必要な文化財を支える技術・技能については,技術・技能者団体等が実施する伝承者養成事業等に必要な補助を行います。
(16)史跡等の買上げ
史跡,名勝,天然記念物は一定の広がりを持つ文化財であり,その保存は都市化の進展や開発に伴い危機に瀕しつつあります。このため,貴重な史跡等を国民共有の財産として大切に保存し,その後の整備・活用に対応することを目的として,地方公共団体が緊急に史跡等を公有化する事業に対する補助を行います。
選定保存技術「文化財石垣保存技術」
保持者:粟田純司
(17)世界文化遺産
我が国を代表する固有の文化遺産を,ユネスコの世界遺産一覧表に記載することは,日本文化を世界に向けて発信するとともに,歴史と文化を尊ぶ心を培う上で大きな意義を有します。このため,引き続き,我が国の世界遺産の保護・管理を推進するとともに,我が国の文化遺産を世界遺産に推薦するための調査などを行います。
(18)水中文化遺産調査研究事業
我が国の水中遺跡の調査や保存に係る手法の在り方について,水中遺跡の調査技術,保存活用方法,国内外の法制度,諸外国の事例などを踏まえ,調査・検討を行います。
(19)被災文化財の復旧
東日本大震災で被害を受けた国指定等文化財について,早期の保存・修復を図るため,文化財の所有者等が実施する被災文化財の復旧事業に対する指導,経費の補助など,必要な措置を講じます。
(20)被災ミュージアム再興事業
東日本大震災で被災した博物館資料の修理,修理した資料の整理・データベース化,応急措置を施した資料を収蔵する場所の確保,復興に向けた各種事業や被災した館の資料を活用した展覧会の実施等に必要な経費を支援します。
3 我が国の多彩な文化芸術の発信と国際文化交流の推進
文化庁メディア芸術祭の開催や若手クリエイター等の育成によるメディア芸術の振興を図るとともに,文化に携わる我が国の専門家を「文化交流使」として派遣する等の国際文化交流を推進し,日本の優れた芸術文化を広く世界に発信します。また,東アジア文化都市や東アジア共生会議の実施を通じて,東アジア諸国との交流の拡大に努めています。さらに,中核的国際芸術フェスティバルやアーティスト・イン・レジデンスなど各地域の特色ある国際文化交流事業に対する支援により,文化芸術発信の国際的拠点形成を推進します。
また,海外との有形・無形の文化遺産に対する国際協力を推進することにより,文化の分野の的確な国際貢献を図るとともに,我が国の専門家の活躍の場を広げ,その知識・技術を向上させ,さらなる経験の蓄積を図る取組を推進します。
(1)メディア芸術の振興
我が国のアニメーション,マンガ,ゲーム,メディアアート等のメディア芸術は,その作品を通じて広く国民に親しまれるとともに,海外で高く評価され,我が国への理解や関心を高めています。
また,メディア芸術は,我が国の文化振興はもとより,コンテンツ産業や観光の振興,国際文化交流の推進にも大きく寄与するものです。
このメディア芸術をいっそう振興するため,創作活動への支援,普及,人材育成などに重点を置いて,施策の充実を図っています。
具体的には,文化庁メディア芸術祭の開催を1つの柱として我が国の優れたメディア芸術作品を国内外に発信しています。また,「メディア芸術デジタルアーカイブ事業」や「メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業」を推進することによって,優れたメディア芸術作品を生み出すための環境整備を行っています。
さらに,優秀な若手クリエイターやアニメーターの育成支援等を通じ次世代を担う人材の育成に努めています。
(2)芸術家・文化人等による文化発信推進事業「文化庁文化交流使」
芸術家,文化人など文化に携わる方々を,一定期間「文化交流使」として指名し,世界の人々の日本文化への理解の深化や,日本と外国の文化人のネットワークの形成・強化につながる活動の展開を目的としています。
(3)東アジア文化交流推進プロジェクト
東アジア地域の文化交流等を通じて,相互理解を推進し,多様な文化を尊重しつつ東アジアの新たな共存の姿を追求していくことは,近年増々重要になっています。そのため,日中韓三カ国内で,文化芸術の中核的都市となる都市を選定し,その都市において,さまざまな文化活動・芸術活動を実施する「東アジア文化都市」,東アジア諸国の文化人,芸術家等が一堂に会する「東アジア共生会議」を実施することにより,東アジア地域における文化交流・人的交流をいっそう発展させていきます。
(4)国際文化交流・協力推進事業
首脳間や政府間で設定される周年事業等において行われる文化・芸術関連行事において,文化政策上の意義や国際貢献の観点からの意義に基づき,国としての対応が必要となるトップレベルの文化芸術発信事業や国際文化交流事業を実施しています。
(5)国際芸術フェスティバル支援事業
国際芸術フェスティバルは,世界の優れた芸術が一か所に集まるとともに,その国の文化芸術を世界に向けて発信する機会となっています。そこで我が国を代表する国際映画祭である,東京国際映画祭を支援することにより,文化芸術の世界的拠点としての育成を図ります。
(6)文化芸術の海外発信拠点形成事業
近年,国際文化交流や日本文化の発信は,地方公共団体やNGO・NPOなど,多様な主体によって担われるようになってきています。こうした状況において,海外の芸術家を招へいして創作活動を行うアーティスト・イン・レジデンス事業など各地域において取り組まれている特色ある国際文化交流事業を支援することにより,日本各地における文化創造と国際的発信拠点の形成を推進します。
(7)日本映画の振興
日本映画を振興するため,創造活動の促進,国内外における積極的な発信,及び映画や映画にかかわる人・団体等の交流を推進します。具体的には,優れた劇映画,記録映画や国際共同製作映画に対する支援,海外映画祭への出品等支援など,総合的な映画の振興施策を推進します。
(8)文化財の国際協力の推進
我が国及び世界の文化遺産は人類共通の財産であり,その保護のためには国際的な交流・協力が不可欠です。
また,文化財を通じた国際交流は,国家間の文化交流や相互理解の増進に寄与するものです。このような考えのもと,文化庁では,次のような事業を実施しています。
- 【1】文化遺産保護国際貢献事業
- 【2】アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業 など
(9)美術品補償制度の活用の促進
我が国における公益的な展覧会のために海外等から借り受けた美術品に損害が生じた場合に,その損害を政府が補償することにより,展覧会の開催を支援し,国民が美術品を鑑賞する機会の拡大を図ります。
4 国語及び日本語教育に関する施策の推進
文化庁では,国語の改善及びその普及を行うため,国語施策の充実を図るとともに,我が国に居住する外国人にとって,日本語が分からないことから生じる様々な問題を解消し,外国人が円滑に日本社会の一員として生活を送ることができるように日本語教育を推進しています。
(1)国語施策の推進
文化庁では,国語の改善及びその普及を行うため,様々な取組を行っています。国語に関する問題は,これまで国語審議会,現在の文化審議会国語分科会が中心となって検討を行い,様々な改善を図ってきました。
具体的には,国語の表記に関して,一般の社会生活における「目安」又は「よりどころ」として,「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」などを制定してきました。最近では,平成22年6月に,「改定常用漢字表」が答申され,同年11月に内閣告示として実施されています。
平成25年度は,文化審議会国語分科会でまとめられた,「国語分科会で今後取り組むべき課題について(報告)」を受け,そこで取り上げられた具体的なテーマに即して,順次検討していきます。
また,審議会での検討のほか,「国語問題研究協議会」の開催や「国語に関する世論調査」の実施,加えて,文化庁ウェブサイト上で公開されている「国語施策情報」,「敬語おもしろ相談室」などを通して,国民全体の国語に対する関心と理解を深めるために必要な施策を講じています。
さらに,平成21年2月にユネスコが消滅の危機にあると発表した,国内のアイヌ語など八つの言語・方言及び東日本大震災の影響が懸念される東北地方の方言の実態や保存・継承のための取組に関する調査を行っています。平成25年度は,八丈方言,国頭方言,沖縄方言,八重山方言の実態調査と,被災地方言の保存・継承のための取組の支援,アイヌ語学習用アーカイブの作成のための調査研究を予定しています。
(2)外国人に対する日本語教育の推進
文化庁では,コミュニケーションの手段,文化発信の基盤としての日本語教育の推進を図るため様々な取組を行っています。
具体的には,文化審議会国語分科会に日本語教育小委員会を設置し,外国人が日本社会の一員として日本語を用いて円滑に生活を送ることができるよう,「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容及び方法について約4年間にわたり計画的に検討を行い,これまでに次の五つの報告を取りまとめました。
- ・平成22年5月 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について
- ・平成23年1月 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案 活用のためのガイドブック
- ・平成24年1月 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案 教材例集
- ・平成24年1月 「生活者としての外国人」に対する日本語教育における日本語能力評価について
- ・平成25年2月 「生活者としての外国人」に対する日本語教育における指導力評価について
これら一連の成果物については,文化庁における事業で活用するとともに,その使い方を分かりやすく解説したハンドブックを作成し,文化庁日本語教育大会(平成25年度は東京を含む全国4か所で開催予定)などを通じて普及を図ることとしています。
また,「カリキュラム案」等を活用し,地域の実情に応じた日本語教室の実施,人材の養成及び教材の作成を支援する「生活者としての外国人」のための日本語教育事業を実施しています。
さらに,外国人に対する日本語教育の総合的推進の一環として,日本語教育関係機関が作成・開発し,公表している日本語教育に関する各種コンテンツ(教材,カリキュラム,報告書等)に関する情報を整理・蓄積することにより,情報の共有化と活用を促すことを目的として,それらを横断的に検索できるシステムを開発し,平成25年4月1日から運用を開始しました。
このほか,難民に対する日本語教育,日本語教育に関する調査・調査研究等の取組を行っています。
5 文化発信拠点の整備
(1)国立美術館
独立行政法人国立美術館は,5館(東京国立近代美術館,京都国立近代美術館,国立西洋美術館,国立国際美術館,国立新美術館)が,それぞれの特色を活かしつつ,連携・協力し,国民のニーズや研究成果を踏まえ,魅力ある質の高い所蔵作品展,企画展及び企画上映を実施しています。
また,美術作品の収集・保管,教育普及活動やこれらに関する調査研究等を通じ,我が国の美術振興の拠点として,国内外の研究者との交流,学芸員等の資質向上のための研修,公私立美術館への助言,地方への巡回展などを行うこととしています。
(2)国立劇場
・新国立劇場
国立劇場(国立劇場,国立演芸場,国立能楽堂,国立文楽劇場及び国立劇場おきなわ)は,伝統芸能の保存と振興を図るため,歌舞伎,文楽,能楽,大衆芸能,組踊などの伝統芸能を,各種の演出や技法を尊重しながら,できる限り古典伝承のままの姿で公開し,国民が伝統芸能を鑑賞する機会を提供しています。また,伝統芸能の伝承者養成や調査研究等の事業を実施しています。
新国立劇場は,現代舞台芸術の振興と普及を図るため,国際的に比肩しうる高い水準のオペラ,バレエ,現代舞踊,演劇などの自主制作の公演を行い,国民が現代舞台芸術を鑑賞する機会を提供しています。また,現代舞台芸術の実演家等の研修や調査研究等の事業を実施しています。
これらの劇場の運営は,独立行政法人日本芸術文化振興会が行っており,効率的かつ効果的に事業の充実に努めています。
(3)国立博物館,文化財研究所等
独立行政法人国立文化財機構は,国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)を設置し,歴史・伝統文化の保存と継承の中核的拠点として,文化財の収集・保存・修理・展示・公開及びこれらに関する調査研究を行うとともに,教育普及事業等の充実に努めています。
また,同法人が設置する文化財研究所(東京・奈良)では,多様な手法による文化財に関する調査・研究を推進し,その成果を積極的に国内外に発信するとともに,文化財の保存修復に関する国際協力を通じて我が国の国際貢献に寄与しています。あわせて,地方公共団体や公私立の博物館等に対して指導・助言を行い,人的ネットワークの形成や我が国の文化財保護に携わる方々の知識・技術の向上に寄与することとしています。
さらに,アジア太平洋地域の無形文化遺産保護のため,平成23年10月にアジア太平洋無形文化遺産研究センターを設置し,ユネスコ無形文化遺産保護条約を中心とした国際的動向の情報収集やアジア太平洋地域の無形文化遺産保護に関する基礎的な調査・研究の推進を行っています。
また,東日本大震災で被災した文化財を救援するため,「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会」を設置(東京文化財研究所に事務局を設置)し,救援活動の中核的な役割を果たしました。
6 デジタル化,ネットワーク化に対応した著作権行政
近年のデジタル化,ネットワーク化の進展に伴い,著作物等の利用態様が多様化している中,著作権等の適切な保護と著作物等の公正な利用の調和が求められています。このため,文化庁においては著作権制度の在り方や著作物の円滑な流通に係る検討を行い,著作権制度の普及・啓発を図るための取組を推進しています。
(1)法制度の整備
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【1】平成24年著作権法改正
デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い,著作物の利用形態の多様化等が進む一方,著作物の違法利用・違法流通が常態化していることに鑑み,平成24年6月著作権法が改正されました。
具体的には,(イ)いわゆる「写り込み」等に係る規定,(ロ)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信に係る規定,(ハ)公文書管理法等に基づく利用に係る規定,(二)技術的保護手段に係る規定及び(ホ)違法ダウンロードの刑事罰化(詳細は後述参照)に係る規定の整備を行いました。
この法律は,平成25年1月1日((ハ)から(ホ)までは平成24年10月1日)から施行されています。
詳細は,文化庁HP「平成24年通常国会著作権法改正について」及び「文部科学広報平成24年 10月号 特集3」を御覧ください。 - 【2】違法ダウンロードの刑事罰化
違法ダウンロードの刑事罰化については,既に平成21年の著作権法改正により,違法ダウンロード(録音又は録画)は,個人的に利用する目的であっても違法とされていましたが,刑事罰の対象とはされていませんでした。
しかし,違法ダウンロードによる被害は未だ深刻な状況にあることから,今般の改正により,個人的に利用する目的であっても,それが販売又は有料配信されている音楽や映像であることと,違法配信であることの両方を知りながら行った場合,刑事罰が科されることとなったものです(ただし,この罪は親告罪とされており,著作権者からの告訴がなければ公訴は提起されないこととされています。) 。
なお,国及び地方公共団体は,学校その他の様々な場を通じて当該行為の防止に関する教育の充実を図らなければならないものとされています。
詳細は,文化庁HP「違法ダウンロードの刑事罰化について」を御覧ください。 - 【3】著作権分科会における検討
第12期文化審議会著作権分科会においては,近年のデジタル化,ネットワーク化の進展等に対応するため,平成24年3月より,「法制問題小委員会」「国際小委員会」の2つの小委員会を設け,著作権に関するさまざまな課題について検討を行いました。
「法制問題小委員会」においては,著作権法制度の在り方に関すること,具体的には,「間接侵害」等に係る課題について,検討を深めました。また,「国際小委員会」においては,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方等について検討を実施しました。
文化庁としては,著作者の利益の保護と著作物の公正な利用の促進を図るため,時代に合った著作権制度の整備に引き続き努めて参ります。
(2)円滑な流通の促進
文化庁では,著作物等の円滑な流通を促進するため,著作物の流通環境の整備,著作権契約システムの構築,著作物を活用したビジネスの振興に資する支援等を行っています。
具体的には,【1】著作権等管理事業法の的確な運用,【2】時代の変化に対応した著作物の流通の在り方に関する調査研究,【3】調査研究の成果等を基に著作物に係る新たなビジネス展開等を考えるシンポジウムの開催,【4】著作者が自分の著作物を他人に使ってもらっても良いと考える場合にその意思表示をするための取組を行っています。
(3)電子書籍の流通と利用の円滑化
我が国における電子書籍の利活用の推進に向けた検討を行うため平成22年3月「デジタル・ネットワーク社会におえる出版物の利活用の推進に関する懇談会(総務省,文部科学省,経済産業省の3省合同開催)が開催され,同年6月に報告が取りまとめられました。
当該報告を受け,文化庁においては,知の資産の有効活用と電子書籍流通の基盤整備に関する今後のあるべき姿について検討を行うため,平成22年11月「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」が設置されました。
当該検討会議では,【1】デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項,【2】出版物の権利処理の円滑化に関する事項及び【3】出版者への権利付与に関する事項について検討が進められ,平成23年12月に報告が取りまとめられました。
また,【1】を受けて,平成24年度には「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する実証実験」(文化庁ebooks プロジェクト)を実施しました。
(4)国際的課題への対応
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【1】海外における海賊版対策
アジア地域を中心に,我が国のゲームソフト,アニメ,音楽などに対する関心が高まる一方で,これらを違法に複製した海賊版の製造・流通及びインターネット上の著作権侵害が,放置することのできない深刻な問題となっています。そのため,文化庁では,権利者による権利行使の実効性を高めるための環境整備を目的として以下の施策を講じています。
(イ)二国間協議等の場を通じた侵害発生国・地域への取締強化の要請
(ロ)侵害発生国・地域における法制面での権利執行の強化の支援
(ハ)侵害発生国,地域の取締機関職員を対象としたトレーニングセミナーの実施
(二)我が国の企業等の諸外国での権利行使の支援
さらに,平成25年度には,侵害発生国・地域における著作権普及啓発事業を実施する予定です。 - 【2】国際的ルールづくりへの参画 国際的ルールづくりへの参画としては,現在WIPO(世界知的所有権機関)において放送機関に関する新条約の策定に向けた議論などが行われており,我が国は積極的に参画しています。平成24年6月には,視聴覚的実演家(俳優や舞踏家等)の保護を目的とした「視聴覚的実演に関する北京条約(仮称)」が採択されました。また,EPA(経済連携協定)交渉等において著作権等に関して,権利保護と利用のバランスや国益の保護といった観点から検討・対応を行っています。
(5)著作権教育の充実
著作権に関して高い意識や幅広い知識を身につけることは,今日ますます重要となっており,中学校や高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱うこととされています。文化庁では,全国各地での講習会の開催やさまざまな人を対象とした教材の作成・提供を行っています。講習会については,国民一般,都道府県等著作権事務担当者,図書館等職員及び教職員を対象として毎年十数箇所で開催しています。教材については,児童生徒を対象とした著作権学習ソフトウェア,教職員を対象とした指導事例集,大学生や企業を対象とした映像資料,初心者向けのテキスト,著作権Q&Aデータベース「なるほど質問箱」などを文化庁ホームページを通じて広く提供しています。
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