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平成25年5月号(No.536)

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文化庁ニュース

劇場、音楽堂等の活性化に向けて
−劇場、音楽堂等の事業の活性化のための取組に関する指針(概要)−

文化庁文化部芸術文化課

 昨年六月に,劇場,音楽堂等の役割を明らかにし,将来にわたって,劇場,音楽堂等がその役割を果たすための施策を総合的に推進し,心豊かな市民生活や活力ある地域社会の実現,国際社会の調和ある発展を期して,議員立法により「劇場,音楽堂等の活性化に関する法律」が全会一致で可決され,制定されました。
 劇場,音楽堂等は,文化芸術を継承,創造,発信する場であり,人々の創造性を育むとともに感動と希望をもたらし,人々が共に生きる絆を形成するための地域の文化拠点であり,活力ある社会を構築するための大きな役割を担っています。
 本年三月には,同法に基づき,文部科学大臣が,劇場,音楽堂等の事業を進める際に取り組むべき方向性を示す,「劇場,音楽堂等の事業の活性化に関する指針」(以下「指針」)が定められました。本指針については,昨年八月に劇場,音楽堂等の関係者等からヒアリングを行うとともに,十一月下旬から一ヶ月間,広く国民の皆様からの御意見を募集し,それらを踏まえて,策定したところです。今後,各劇場,音楽堂等の設置者及び運営者は,本指針を踏まえ,それぞれの劇場,音楽堂等の設置目的や運営方針に基づき,積極的な取組を実施していくことが期待されています。

 以下に,本指針の概要を御説明します。

○本指針策定の基本的考え方

 本指針は,劇場,音楽堂等の設置者又は運営者が,事業の活性化のために行う取組の方向性を示すものであり,規制を行うための基準ではありません。
 また,全国で二千を優に超える国公私立の劇場,音楽堂等を対象とするものであることから,全ての劇場,音楽堂等が共有できるものとするとともに,同時に各劇場,音楽堂等の設置目的や,規模,活動状況や地域の状況等の実態の多様性に対応できるものとして策定しました。
 具体的には,全ての劇場,音楽堂等が目指すべき方向性と,各劇場,音楽堂等の実態等に応じて選択的又は段階的に取り組むことが適切な事柄を分けて示すこととし,前者については,「設置者又は運営者は,・・・するよう努めるものとする」と記述し,後者については,「劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,次の事項に留意する必要がある」と記述しました。
 また,本指針は劇場,音楽堂等の設置者又は運営者が取り組むべき事項を示すものですが,事項によって取り組むべき主体を書き分けています。このため,運営方針の明確化,評価の実施,施設・設備の改修等の計画の策定,指定管理者制度の運用に関する事項などについては,設置者(公立の劇場,音楽堂等にあっては,地方公共団体)が責任を持って実施すべきことを明確にしています。

○劇場,音楽堂等の設置者又は運営者の取組に関する事項

・運営方針の明確化に関する事項
 劇場,音楽堂等の設置者は,関係事業の実施を通じて,設置目的を適切に実現することが求められています。このため,設置者は,その設置する劇場,音楽堂等の運営方針を長期的視点に立って明確に定め,利用者等に同方針を周知することなどに努めるものとされています。

・質の高い事業の実施に関する事項
 劇場,音楽堂等の設置者又は運営者は,その設置目的及び運営方針を踏まえ,実施する事業を適切に決定するよう努めるものとされています。また,実施する事業については,創造性及び企画性の高い事業,特色のある事業,利用者等のニーズ等に対応した事業その他の質の高い事業として実施するよう努めるものとされています。
 事業の企画及び実施に当たっては,その劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,広く成果を国内外へ発信することや,創造性及び企画性を要する実演芸術の公演を試行すること,利用者等のニーズ等を十分勘案すること,字幕を表示した公演を実施するなど様々な工夫や配慮等を行うことなどに留意することが必要とされています。
 さらに,設置者はその設置する劇場,音楽堂等の事業について,適切な評価基準を設定し,実演芸術の水準の向上や地域活性化への貢献などの長期的な視点も踏まえた評価を適切に実施するよう努めることとされています。評価の実施に当たっては,利用者等の視点に配慮するとともに,定量的指標のみでは測り得ない実演芸術の定性的側面に十分留意することとされています。

・専門的人材の養成・確保及び職員の資質の向上に関する事項
 劇場,音楽堂等の設置者又は運営者は,その設置する劇場,音楽堂等の運営を適切に行うため,その設置目的及び運営方針を踏まえ,実演芸術の公演等を企画制作する能力や,舞台関係の施設・設備を運用する能力,組織・事業を管理運営する能力,実演芸術を創造する能力など,事業を行うために必要な専門的能力を有する人材の養成を行うよう努めるものとされています。このため,設置者又は運営者は,その実態等を勘案しつつ,他の劇場・音楽堂等,実演芸術団体等及び大学等と連携・協力し,実践的な知識及び技術を習得するための研修等の機会を設けるとともに,人材交流を行うよう努めるものとされています。
 この場合において,必要な専門的人材が配置されている施設にあっては,自らの専門的知見を広く他の劇場,音楽堂等及び実演芸術団体等に提供すること,またそれ以外の劇場,音楽堂等にあっては,配置されている劇場,音楽堂等との継続的な連携・協力関係を構築することにより,専門的助言を得られる体制を確保することについて留意すべきとされています。さらに,大学等との連携・協力に当たっては,実践的な知識及び技術の効果的な習得を重視することが必要とされています。
 また,設置者又は運営者は,その設置目的及び運営方針を踏まえ,専門的人材の範囲の特定,確保の方法等を明確にし,専門的人材を配置するとともに,各自の能力を十分に発揮し得る職場環境を確保するよう努めるものとされています。この場合において,それぞれの劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,必要な専門的人材が配置されている施設にあっては,分野ごとに必要な専門的人材を適正に配置することや,質の高い事業を実施するため,各事業間相互の連携が図られるよう配慮することに留意することが必要とされています。また,それ以外の劇場,音楽堂等にあっては,配置されている劇場,音楽堂等から必要に応じて専門的な助言・協力を得つつ,専門的人材を配置する優先順位,配置方法等を検討するとともに,専門的人材の効果的な配置及び充実を図るよう留意することが必要とされています。
 その他,設置者又は運営者は,その適切な運営のため,関係機関と連携・協力しつつ,職員の資質の向上を図る研修等を行うよう努めるものとされています。

・普及啓発の実施に関する事項
 設置者又は運営者は,その設置目的及び運営方針を踏まえ,普及啓発のための事業について利用者等に周知し,関係事業を適切に実施するよう努めるものとされています。この場合において,それぞれの劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,利用者が参加する取組を行うことや,実演芸術に親しむ機会を広く提供するため,積極的に実演芸術の公演等の鑑賞機会を設けることなどに留意することが必要とされています。
 また,設置者又は運営者は,特に児童生徒等に対して質の高い実演芸術に触れる機会を提供するよう努めるものとされています。この場合において,その劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,地域全体で児童生徒等を対象とした質の高い実演芸術に触れる機会を充実する取組を行うことや,実演芸術団体等と連携・協力し,学校を訪問して実演芸術の公演を行うなどの取組を行うことに留意することが必要とされています。

・関係機関との連携・協力に関する事項
 設置者又は運営者は,その事業の活性化を図るため,他の劇場,音楽堂等,実演芸術団体等,教育機関等との連携・協力を積極的に進め,効果的な連携・協力関係を構築するよう努めるものとされています。この場合において,それぞれの劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,連携・協力する内容を当事者間であらかじめ十分に協議するなどすることや,所在する地域にかかわらず目指す方向性の一致する機関との間でも連携・協力を行うこと,他の劇場,音楽堂等及び実演芸術団体等と連携・協力し,共同制作,巡回公演,技術提供その他の取組や情報交換を行うことなどに留意することが必要とされています。さらに,国立劇場及び新国立劇場にあっては,実演芸術に関する高度の専門的知見の提供など他の劇場,音楽堂と積極的に連携・協力する方策について検討することや,他の劇場・音楽堂等にあっては,国立劇場及び新国立劇場が有する専門的知見の活用などの連携・協力について検討することに留意することが必要とされています。

・国際交流に関する事項
 設置者又は運営者は,その設置目的,運営方針,実態等を勘案しつつ,実演芸術に関する国際交流を推進するよう努めるものとされています。この場合において,地域に居住する外国人や訪日外国人旅行者等との交流を図る取組を行うことや,必要に応じ,海外の劇場,音楽堂等又は実演芸術団体等と連携・協力し,人的交流や情報交換を行うこと等や海外公演の実施,国内への公演の招致,国際共同制作を行うことなどに留意することが必要とされています。

・調査研究に関する事項
 設置者又は運営者は,その事業の充実を図るため,実演芸術の動向,事業の効果,利用者等のニーズや評価等に関する調査研究機能の強化に努めるものとされています。この場合において,その劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,事業の実施等を通じて得た知見等を他の劇場,音楽堂等に積極的に提供したり,他の劇場,音楽堂等と共同して調査研究を行ったりするなど,他の機関との連携・協力を推進することや,必要に応じ,実演芸術に関する豊富な知見等を有する大学等,国立劇場,新国立劇場,実演芸術団体等との連携・協力を推進することに留意することが必要とされています。

・経営の安定化に関する事項
 設置者又は運営者は,事業の実施に当たって,国民又は住民の実演芸術に対する関心を高め,利用者の拡大を図るための工夫を行うよう努めるものとされています。この場合において,その劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,利用者等のニーズや評価等に関する調査研究の成果の適切な活用,社会的意義及び事業内容についての積極的な広報等による国民又は住民の実演芸術に関する理解の増進等,実演芸術を鑑賞する者の育成,観光,社会福祉等の分野の機関との連携・協力を図り,より多様で効果的な劇場,音楽堂等の活用を図ることについて留意することが必要とされています。
 また,経営の安定化を図るため,事業の質を維持することを前提に,多様な財源を確保するよう努めるものとされています。さらに,設置者又は運営者は,利用者等から日常的に寄せられる要望等に対応するための体制を整えるとともに,要望等の内容を積極的に把握・分析し,適切な対応策を講じるよう努めるものとされています。

・安全管理等に関する事項
 設置者又は運営者は,安全かつ快適な施設として維持管理されるよう,施設・設備の定期的な保守点検等を適切に行うよう努めるものとされ,特に経年劣化した施設・設備の改修等については,設置者において計画を立て着実に実施することなどに努めるものとされています。
 また,質の高い事業の実施と施設・設備の安全管理との両立を図る観点から,事業を安全に実施し得る環境を確保するための安全管理に係る規程を整備し,職員に徹底するとともに,施設・設備の安全管理を適切に行い得る体制の整備に努めるものとされています。
 さらに,非常時における対応についてあらかじめ検討し,必要な対策を講じるよう努めるものとされています。

・指定管理者制度の運用に関する事項
 指定管理者制度により劇場,音楽堂等の管理運営を行う場合には,設置者は,創造性及び企画性が劇場,音楽堂等の事業の質に直結するという施設の特性に基づき,事業内容の充実,専門的人材の養成・確保,事業の継続性等の重要性を踏まえつつ,同制度の趣旨を適切に生かし得る方策を検討するよう努めるものとされています。
 この場合において,設置者は,その設置する劇場,音楽堂等の実態等を勘案しつつ,質の高い事業を実施することができる専門的な知識及び技術を有する指定管理者を選定することや,優れた実演芸術の公演等の制作,有能な専門的人材の養成・確保等には一定期間を要するという劇場,音楽堂等の特性を踏まえ,適切な指定管理機関を定めること,その実施方法等を協定等に適切に位置付けるなど配慮すること,事業を円滑に行うことができるよう,指定管理者との間で十分な意思疎通を図ることに留意することが必要とされています。

○国,地方公共団体の取組等に関する事項

・国の取組に関する事項
 国は,法前文の趣旨を踏まえるとともに,法第一条に規定された目的を達成するため,必要な対応を行うものとされています。具体的には,法各条の規定に基づき,劇場,音楽堂等に係る環境の整備その他の必要な施策を総合的に策定し,実施する役割を果たすよう努めること,設置者又は運営者,実演芸術団体等の関係者及び地方公共団体と相互に連携を図りながら協力するよう努めること,必要な助言,情報の提供,財政上,金融上及び税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めることなどが示されています。
 文化庁では,これを踏まえ,平成二十五年度予算案において,新規に「劇場・音楽堂等活性化事業」を計上しています。本事業を通じて,我が国の文化拠点である劇場,音楽堂等が行う,音楽,舞踊,演劇等の実演芸術の創造発信や,実演芸術の専門的人材の養成,実演芸術の普及啓発事業,劇場,音楽堂等間のネットワーク形成等に対し,総合的な支援を行うなど,劇場,音楽堂等の一層の活性化に向けた取組を推進していくこととしています。

・地方公共団体の取組に関する事項
 地方公共団体は,法前文の趣旨を踏まえるとともに,法第一条に規定された目的を達成するため,必要な対応を行うものとされています。具体的には,法各条の規定に基づき,自主的かつ主体的に,その地域の特性に応じた施策を策定し,及び区域内の劇場,音楽堂等を積極的に活用しつつ実施する役割を果たすよう努めること,設置者又は運営者,実演芸術団体等の関係者及び国と相互に連携を図りながら協力するよう努めること,必要な助言,情報の提供,財政上等の措置等を講ずるよう努めることなどが示されています。

・その他の関係機関の協力に関する事項
 法前文の趣旨を踏まえるとともに,法第一条に規定された目的を達成するため,本指針に定める事項を設置者又は運営者,国及び地方公共団体が実施するに当たっては,実演芸術団体等,教育機関等は積極的に協力することが求められるとされています。

 以上が,指針の概要になりますが,指針やその施行通知の詳しい内容は,下記のホームページに掲載しておりますので,ご覧ください。文化庁では,今後とも,本指針の趣旨・内容の周知・徹底に努めるとともに,本指針を踏まえた取組を積極的に行う設置者又は運営者に対する様々な支援の充実に努めていきたいと考えています。

 劇場,音楽堂等の活性化に関する法律について
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