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文化庁月報
平成25年5月号(No.536)

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連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

市民学芸員がつくる学びの場 ―小学3年生に伝える「昔のくらし」―

飯能市郷土館学芸員 村上達哉

目次

  1. 1 「市民学芸員」って?
  2. 2 小3対応と市民学芸員
  3. 3 各プログラムの内容
  4. 4 課題とこれから

 飯能市郷土館では,毎年1月中旬から2月の上旬にかけて,市内13校の小学3年生の見学を受け入れています。社会科の単元「昔の人々とくらし」の学習の一環で,平成13年度以降は当館の市民学芸員が主体となっています。今回は,市民学芸員による小学3年生見学受け入れ(以下「小3対応」とします)についてご紹介します。

1 「市民学芸員」って?

 当館において市民学芸員は,「市民に向けた学習機会を提供するシステム」であり,「本務学芸員を補完する立場」,そして「博物館側の情報発信機能と受け手の市民の間をつなぐ伝達媒体としてのサポーター」と位置付けられています。このように,市民学芸員は,館の利用者の中で最も館に近い存在と言えます。
 市民学芸員はこれまでにI期からVI期の養成を行っており,小3対応は,博学連携事業参加型(II・IV・V期)の市民学芸員に民俗調査参加型(III期)が加わって実施しています。

2 小3対応と市民学芸員

 小3対応の学習プログラム(以下「プログラム」とします)は,市民学芸員が小3対応に加わった平成13年度以降,大幅に充実しました。市民学芸員の手作りで民家の台所が再現され,A常設展示見学・Bむかしの道具さがしクイズ・C体験学習と三つのプログラムを,子ども達をだいたい5人一組に班分けし,同時並行で行っています。
 プログラムの実施だけでなく,その改善や新規の開発も基本的に市民学芸員が主体で行い,館はそのサポートと内容の確認をしています。現在ある形での小3対応は,市民学芸員の存在なくしてはあり得ません。

常設展示見学:市民学芸員「長光寺の雲版の形は何を真似たものかな?」 子ども達「・・・ガッツポーズ?」

常設展示見学:市民学芸員「長光寺の雲版の形は何を真似たものかな?」 子ども達「・・・ガッツポーズ?」


むかしの道具さがしクイズ:子ども達「ねぇねぇ。これって洗濯に使う道具じゃない?」 市民学芸員「さぁ,どうかなぁ?(答えを言ってしまうとクイズにならないものね。頑張って!)」

むかしの道具さがしクイズ:子ども達「ねぇねぇ。これって洗濯に使う道具じゃない?」 市民学芸員「さぁ,どうかなぁ?(答えを言ってしまうとクイズにならないものね。頑張って!)」


体験学習:アイロンをかけた後,子ども達が頬にハンカチを当てて「温かい・・・」と言うのが,「可愛らしくて,たまらない」と市民学芸員。

体験学習:アイロンをかけた後,子ども達が頬にハンカチを当てて「温かい・・・」と言うのが,「可愛らしくて,たまらない」と市民学芸員。

3 各プログラムの内容

 プログラムの内容は以下のとおりで,いずれも,市民学芸員が講師・演者・指導者となって行なっています。
 A 常設展示見学:(1)飯能市域の国指定重要文化財の説明,(2)市域の歴史の中で重要な位置を占める西川林業の説明,(3)昔の子どもの遊びに関する解説と紙芝居体験,の三つの中から,学校に二つ選んでもらい実施しています。紙芝居体験は,テレビの存在が当たり前な子ども達には新鮮らしく,「面白かった」という感想をよく聞きます。
 B むかしの道具さがしクイズ:学習研修室に20点の民具を4箇所に分けて置き,子ども達が民具を手に取り観察して,洗濯・炊事・学校生活・暖房のどれに関係するかを考えるクイズです。クイズの答え合わせの後,各民具の解説をしています。
 子ども達にとって民具は,ほとんどが初めて見るものばかり。「これ,なんだろうなー」と興味津々です。民具の解説で盛り上がるのは,最後の行灯の解説です。部屋を真っ暗にし,市民学芸員が「さあ,どれくらいの明るさだと思う?」と,電球で再現した行灯の火を灯すと,予想以上の暗さに子ども達から「えーっ!?」,「くらーい」と驚きの声が上がります。
 C 体験学習:石臼により米と炒り焦がした大麦の二種を製粉する体験と,火のし・炭火アイロンで木綿のハンカチをアイロンがけする体験を行っています。
 石臼体験は,時間も限られており出来る粉はわずか。「皆で挽いて,これだけの粉が出来ました。お団子を食べようとすると・・・食べられるのは君と君までかな?」という市民学芸員に,「そんなー!」と他の子ども達。「粉にする仕事は大変だよね」市民学芸員の言葉に子ども達も納得です。火のし・炭火アイロン体験では,炭火の熱に驚くとともに,アイロンを当てた瞬間に上がる蒸気に「おーっ!」と思わず声が。

4 課題とこれから

 小3対応について市民学芸員は,「子ども達と接する時間が楽しい」「子ども達から元気をもらっている」と語ります。その一方で,半月の間ほぼ連日行うため,「年々体力的に厳しくなってきた」との声も。市民学芸員の定期的な養成が必要なのですが,新しく人が入るとベテランの人が辞めるというジレンマがあります。また館は,毎年,市民学芸員の学習機会の設定に頭を悩ませています。要望は多種多様であり,なかなか簡単に決められません。館の力量が問われるところです。
 このように課題はあるのですが,館は市民学芸員から,多くのことを教わり助けられていると感謝(なかなか感謝の念を伝えることも難しいのですが)するとともに,子ども達の学びの場として小3対応を重視しています。
 今後とも,市民学芸員の活動,そして小3対応の充実に,尽力したいと考えております。

※市民参加の活動別ウィンドウが開きます

飯能市郷土館

〒357-0063 埼玉県飯能市大字飯能258-1

お問い合わせ
TEL 042-972-1414  FAX 042-972-1431  E-mail kyodokan@city.hanno.saitama.jp
開館時間
9:00〜17:00
休館日
月曜日,祝日の翌日(ただしこの日が休日の場合開館) 年末年始(12月28日〜1月4日)
観覧料
無料
ホームページ
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