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文化庁月報
平成25年5月号(No.536)

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連載 「文化交流使の活動報告」

中国での文化交流使としての活動

和太鼓奏者 藤本 吉利
在中国日本大使館での公演において,中国人来場者及び木寺昌人大使と写真撮影

在中国日本大使館での公演において,中国人来場者及び木寺昌人大使と写真撮影

 1月21日,羽田より日本を出発し,北京に向かいました。2000 年以来の中国訪問。今回は私1人で,そして文化交流使という大役をいただいての訪問。頑張らなくてはという想いと共に13年ぶりの中国に 胸が躍りました。昨年より日中関係が悪化している中で,文化交流使としての活動が出来たことを,とても嬉しく誇りに思いました。

北京日本人学校での活動

北京日本人学校での活動

 中国に来て最初の公演は,1月28日に北京日本人学校にて行ないました。13:30から45分間の公演です。対象は小学1年生から5年生までの約400名でした。
 公演内容は,『鬼剣舞の笛・通り』『木遣り唄』『登山囃子』『下山 囃子』『エアー大太鼓』そして,WSは『みんなで帆柱起こし音頭』と,6演目です。この中で,初めて試みが『エアー大太鼓』でした。日本の太鼓と言えば,欅などの1本の木をくりぬいて作られた長胴太鼓ですが,2尺以上の大きな太鼓になってくると,重たくて持ち運びが大変です。
 私は長胴太鼓を持って行きたかったのですが,1人ということもあり,身軽に持ち運びやすい青森県のお山参詣で使われる,かつぎ桶太鼓を1つ持って行きました。
 私の真骨頂とも言える大太鼓を演奏したくても太鼓が無い,それで思いついたのが『エアー大太鼓』でした。『エアーギター』の様に,目には見えない大太鼓に向かって撥を振り,音が出ないので太鼓の音を口で歌う。これはとても大変で長くは続けられません。3分間程の演奏となりました。子供達の反応は笑いも出ましたが,しっかり受けとめてくれました。とても面白かった様で受けました。
 WSは太鼓を叩く生徒だけでなく,見ている生徒達も一緒に参加出来る様にかけ声をかけてもらいました。その中で私も太鼓を叩きながら唄う。一体感のあるWSが出来たと思います。この最初の公演がいい感じに出来て,私はホッとしました。
 こんな調子で,上海日本人学校浦東校と虹橋校,杭州日本人学校と4つの学校で公演を行なわせていただきました。蘇州日本人学校でも行なう予定だったのですが,大雪の恐れがあり生徒の通学が危ぶまれるということで休校となり,公演することが出来ませんでした。  北京日本人学校のあとに在中国日本大使館での公演がありました。この公演の来場者は,ほとんどが中国人の方でした。ここで初めて中国の方との交流が出来て,とても嬉しかった。学校の太鼓をお借りしてWSも行ないました。皆さん積極的で楽しい交流が出来ました。着任されたばかりの木寺大使も最後までお付き合いくださり喜んでくださいました。

安塞腰鼓との交流

安塞腰鼓との交流

 その後,今回私が一番楽しみにしていた中国の太鼓芸能団体との交流を2月15日に陝西省延安市安塞にて行なうことが出来ました。『安塞腰鼓』として世界にも知られている,この腰鼓は中国映画『黄色い大地』の中にも登場し,小さな太鼓を腰に付けて叩きながら力強く大地を蹴って激しく踊る群舞が話題になりました。
 村を訪ねて代表者の徐舞さんの家に伺いました。若い踊り手が集まって来て衣装に着替え,村の広場で土煙をたて踊ってくれました。次に私も衣装に着替え演奏を披露しました。そして最後は熱く,太鼓共演で終了。そのあとは,徐さんの家の庭で打ち上げ会。昼食を皆さんと一緒にいただき交流の第2弾,唄ったり,踊ったり,これまた,とても嬉しい 交流が出来ました。

レストラン『MANZO』でのライブポスター

レストラン『MANZO』でのライブポスター

 また今回,予定にはなかった日本レストランでのライブ演奏を2ヶ所で行なうことが出来ました。北京の『初音』というレストラン。経営者はアランさんという中国人の方で,太鼓が大好きで店には3尺を超す程の大きな太鼓が飾ってあるのです。私はこの中国製の太鼓を使わせてもらって,想い存分に大太鼓を演奏することが出来ました。
 そして,中国滞在の最後の日に,北京で大変お世話になった山本敬さんが経営されている『MANZO』というレストランでもライブ演奏を行ないました。山本さんの店には太鼓がなかったのですが,この日の為に太鼓を購入されたのです。中国製の太鼓ですが,私が山本さんと一緒に太鼓屋さんに行って太鼓を選びました。以前から太鼓を店に飾りたいと思っておられた様です。私はこの太鼓を『MANZO』で初打ちさせていただきました。鼓童の公演を見られたというお客さんがおられて,最初の音と最後の打ち終えた時の音は全然違っていたとのこと。打つ程に音が良くなって行ったとマニアックな感想をいただいた。
 『MANZO』でのライブには今回の中国での交流のスケジュールと案内役兼通訳をお世話になった李長鎖さん,李さんの補佐役としてお世話になった李さんの義弟の張さん,そして山本さんを通して北京でお会いした方々など,多くの方がご来店くださり大盛況に終えることが出来ました。本当に嬉しかったです。

 この他の交流としては,孫豪さん(中国芸術学院の作曲家・笛奏者)と食事をして笛でも交流。フォーシャオチェンさん(中国歌劇舞劇院主席ニ胡奏者・元女子十二楽坊メンバー)と食事をして交流。黄豆豆(ホアンドウドウ)さん(上海歌舞団団長・世界に知られている中国のトップダンサー)また,楡林の天成音楽大庁の張聖宝さんを訪ね交流しました。
 今回,私は一人であったから,より深い交流が出来た様に思います。 そして,中国の人にとって太鼓はごくごく身近にあり,太鼓がとっても好きなんだということが解りました。そんな中国へ太鼓が大好きな私が文化交流使として訪ねられたことは,この上ない喜びとなりました。中国の人はおおらかです。細かいことはあまり気にしません。そして,逞しい。よく食べ,よく飲み,よく話し,とってもパワフルです。一生懸命に生きてる感じがします。私は,そんな中国の人達にとても愛着が湧きました。すぐ近くの国であるのに遠くに感じていた中国が,とっても近くなりました。また,中国に来ようと思いました。

藤本 吉利

藤本 吉利
和太鼓奏者

 1950年京都府生まれ。1972年「佐渡の國鬼太鼓座」に入座,1981年太鼓芸能集団「鼓童」創設メンバー。以来,現在まで数々の舞台に立ち,「大太鼓」や「屋台囃子」といった舞台のクライマックスを飾る。1994年に鼓童として外務大臣賞を受賞。ノーベル平和賞100回記念コンサートにて日本人アーティストとしての初めて演奏やFIFA World Cup KOREA/JAPANオフィシャルコンサートに出演など幅広い活躍を続ける。現在は舞台出演のほか,研修生の指導,ワークショップ講師など,幅広い活動を行っている。
 2012年,永年のグループへの功績が認められ「鼓童名誉団員」に選定。
 2013年1月〜同年2月まで「文化交流使」として中国にて活動。

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