文化庁月報
平成25年6月号(No.537)
イベント案内
東京国立近代美術館フィルムセンター
生誕110年 映画監督 清水宏
独創的な映画作家・清水宏
今年は,日本映画の揺籃期から戦後の黄金期まで,約35年間で164本もの映画作品を撮った監督・清水宏(1903-66)の生誕110年にあたります。
清水は,1924年に松竹で21歳の若さで監督昇進して以降,戦前はモダンな感覚を持った新進気鋭の映画監督として,菊池寛原作を映画化した『不壊の白珠』(1929)といったメロドラマや,3時間を超える『銀河』(1931)のような大作映画をはじめ,撮影所の量産体制を支えます。同時にその一方で,人物の演出やロケーション撮影などに先進的なリアリズムを導入し,とりわけ『風の中の子供』(1937)や『子供の四季』二部作(1939)に代表される子ども映画の演出においては,世界映画史的に見ても先駆的な達成を果たし,その独創的な作風に注目を集めます。
戦後は一時映画界から退き,戦争孤児たちを引き取って共同生活を送りますが,やがて彼らと独立プロダクション「蜂の巣映画部」を設立し,孤児たちが自分自身の役で出演する画期的な劇映画『蜂の巣の子供たち』(1948)を世に送ります。映画は大きな社会的反響を呼び,その後2本の続篇も製作されます。映画製作に復帰した清水は,その後新東宝・東宝・大映といったメジャー映画会社にも招かれ,児童映画や母もの映画などを監督しました。
史上最大規模の回顧上映
これまで,フィルムセンター(1974年)をはじめ,何度か清水の回顧上映が行われてきましたが,その上映本数は多くても25本程度であり,映画作家・清水宏の全貌を知るには物足りない規模のものでした。今回の回顧特集は,1929年の『森の鍛冶屋』から1959年の遺作『母のおもかげ』まで,現存する清水作品の上映プリントを可能な限り集めた,史上最大規模のもの(計50本)となります。
撮影所全盛期の職人監督であり,いち早く撮影所を飛び出した独立映画作家でもある清水の映画世界は,いまだ汲み尽くされていません。今回の回顧上映を通じて,新しい観客による映画作家・清水宏の「発見」が期待されます。
清水宏監督
(研究員 大澤浄)
東京国立近代美術館フィルムセンター
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