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文化庁月報
平成25年6月号(No.537)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

ようこそ歌舞伎の世界へ−国立劇場歌舞伎鑑賞教室−
6月『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』別ウィンドウが開きます
7月『芦屋道満大内鑑−葛の葉−』別ウィンドウが開きます

国立劇場制作部歌舞伎課 地頭薗大介

 歌舞伎座再開場のニュースなどで何かと話題の歌舞伎ですが,“一度は観てみたいけれど,どうも敷居が高そうで・・・”,“チケット代も高そうだし・・・”,といった声がよく聞かれます。歌舞伎は400年以上前にその原型が生まれ,日本文化を代表する伝統芸能の一つとして発展を遂げてきましたが,歴史ある歌舞伎も「演劇」である以上は,客席を埋める観客の存在がなければ成り立ちません。国立劇場では,歌舞伎を現代の我々の時代に生かし,未来へ伝えていくために,これまで歌舞伎に縁のなかった方が無理なく“歌舞伎デビュー”していただける場として,毎年6月と7月に「歌舞伎鑑賞教室」を開催しています。
 特に初めてご覧になる方にとって,“第一印象”はとても大切なもの。今年も“歌舞伎入門篇”として相応しい作品を厳選して,充実の俳優陣でお届けします。また,本編の前には,注目の若手俳優たちがみどころや約束事などをわかりやすく解説する「歌舞伎のみかた」もあり,どなたでもすんなりとお芝居の世界に入っていけるよう,さまざまな工夫が凝らしてあります。
 歌舞伎鑑賞教室は,本物の歌舞伎の醍醐味をリーズナブルに味わえる,歌舞伎デビューにうってつけの公演です。それでは,今年の演目のみどころをご紹介しましょう。

6月『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』・・・・・絢爛たる歌舞伎舞踊の傑作

平維茂(中村錦之助),更科姫実ハ戸隠山の鬼女(中村扇雀)

平維茂(中村錦之助),更科姫実ハ戸隠山の鬼女(中村扇雀)

 時代は平安中期。所は信州(長野県)の戸隠山(とがくしやま)。一面の紅葉の山中へ,従者を連れて紅葉狩に訪れた武将・平維茂(たいらのこれもち)は,酒宴を開いている更科(さらしな)(ひめ)の一行に呼び止められます。酒を勧められ,姫や侍女の美しい舞を見ているうちに,維茂と従者はやがてウトウト。その様子を見届けた姫の一行が立ち去ったところへ,どこからともなく山神(さんじん)が現れ,迫り来る危急を告げようと維茂らを目覚めさせます。実は先ほどの美しい姫の正体は,戸隠山に棲む鬼女だったのです。鬼女は維茂に襲い掛かりますが,維茂も名剣・小烏丸(こがらすまる)で応戦し,ついにこれを退治するのでした。
 この作品は,能の同名作品を歌舞伎にアレンジした舞踊劇の大曲です。近代歌舞伎の礎を築き,“劇聖”と称えられた九代目市川團十郎が初演で更科姫を勤め,振付の趣向を考案しました。「新歌舞伎十八番」とは,九代目團十郎が自らの自信作を選定した作品群のことで,『紅葉狩』もその中の一作です。
 幕が開いてまず目を奪われるのが,一面鮮やかに色付く紅葉の景色。そして,常磐津節・義太夫節(竹本)・長唄という三種の伴奏音楽が掛け合いで演奏されることで(これを三方(さんぽう)掛合(かけあい)と言います),舞台をさらに豪華に盛り立てます。
 前半のみどころは,気品に満ちた維茂の凛々しい姿や,侍女や従者によって次々と繰り広げられる踊りの数々。その中でも注目は,二本の扇を自在に扱う更科姫の優雅で華麗な舞です。
 そのおしとやかだった姫が後半になると一転。恐ろしい鬼の形相となり,維茂と激しい立廻りを繰り広げます。(歌舞伎でアクションシーンを表現すると,こんな風になるのか,ときっと驚かれることでしょう。)ここでは独特の化粧法を用いた鬼女の迫力ある隈取(くまどり)や,着ている衣裳が瞬時に変わる“ぶっ返り”と呼ばれる手法など,歌舞伎ならではの演出をご覧になれます。
 最後まで飽きさせない工夫が随所に盛り込まれており,初心者の方にもうってつけの作品です。

7月『芦屋道満大内鑑−葛の葉−』・・・・・夫婦,母子の切ない別れに涙

女房葛の葉(中村時蔵)

女房葛の葉(中村時蔵)

 動物や植物などが人の姿となって人間と結婚するお話(いわゆる「異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」)は,洋の東西を問わず,古くから世界中に見られますが,この「(くず)()」もそんなお話です。
 陰陽師・安倍(あべの)保名(やすな)は,狐狩で追われてきた信田(しのだ)の森の白狐を救いますが,その直後,恋人の葛の葉姫やその両親ともども悪者に襲われ,葛の葉たちの姿を見失います。重傷を負った保名は葛の葉が殺されたと思い,自らの命を絶とうとしますが,そこへ当の葛の葉が現れて保名の自害をとどめ,介抱します。
 今回上演される場面は,それから約6年後。保名は葛の葉と夫婦になり,五歳になる童子とともに仲睦まじく暮らしていました。(ちなみにこの童子は,後に有名な陰陽師・安倍(あべの)清明(せいめい)となる男の子です。)
 そこへある日,本物の葛の葉姫が両親とともにこの家を訪れたことから,保名はこれまで共に暮らしてきた妻に不審を抱きます。葛の葉はもはやこれまでと,可愛いわが子に心を残しつつも,故郷の森へと泣く泣く帰って行きます。保名は妻を探して,その名を呼び続けますが,あとには葛の葉が思いの丈を込めた一首の和歌が障子に残っているだけでした。
 親子の情愛や,夫婦の情愛が胸に強く迫る作品です。姫と女房の二人の葛の葉は,一人の役者が早替りで演じ分けます。“子別れ”の場面になってからの,狐の本性を感じさせる独特の台詞回しや,霊力を表現する数々の仕掛け(これは実際に見てのお楽しみ)など,たくさんのみどころがありますが,その中でも特に注目していただきたいのが,葛の葉が形見の歌を障子に書き残すところ。縋り付くわが子を抱え,左手や口まで使って,下から上へ,あるいは裏返しになった文字で書いてみせる「曲書(きょくが)き」は,修練を要する難しい技巧です。
 この作品は,大人の初心者の方に対してはもちろん,歌舞伎初体験のお子様と一緒に親子で鑑賞されたいという方にもぜひオススメしたい作品です。例年7月の鑑賞教室は,後半を「親子で楽しむ歌舞伎教室」としており,たくさんの親子連れのお客様で大いに賑わっています。
 そして毎回ご好評をいただいている『解説 歌舞伎のみかた』も,6月は中村隼人さんと中村虎之介さん,7月は中村萬太郎さんという,10〜20代の若い俳優を解説者に起用して,楽しくわかりやすく,皆様を歌舞伎の世界へエスコートします。こちらもどうぞお楽しみに!

国立劇場歌舞伎鑑賞教室 6月『新歌舞伎十八番の内 紅葉狩』,7月『芦屋道満大内鑑−葛の葉−』

〒102-8656  東京都千代田区隼町4-1

お問い合わせ
【国立劇場チケットセンター】(午前10時〜午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話]
交通
東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,半蔵門線・有楽町線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分
公演日時
【6月】 2日(日)〜24日(月) 11時開演・2時30分開演 ※14日(金)・21日(金)は2時30分のみ
    ※《社会人のための歌舞伎鑑賞教室》=14日(金)・21日(金)7時開演
【7月】 3日(水)〜24日(水) 11時開演・2時30分開演 ※12日(金)・19日(金)は2時30分のみ
    ※《社会人のための歌舞伎鑑賞教室》=12日(金)・19日(金)7時開演
    ※15日(月)・19日(金)〜24日(水)は《親子で楽しむ歌舞伎教室》
ご観劇料
一般:1等席3,800円,2等席1,500円
学生:全席1,300円
※障害者の方は2割引です。
※《親子で楽しむ歌舞伎教室》は申し込み方法,料金体系が異なります。詳細は下記HPをご覧ください。
http://www.ntj.jac.go.jp/oyako2013/kabuki.html 別ウィンドウが開きます
ホームページ
http://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu.html別ウィンドウが開きます
【インターネット予約】
http://ticket.ntj.jac.go.jp別ウィンドウが開きます(一般券・PCのみ)

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