HOME > 文化庁月報 > 連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

文化庁月報
平成25年6月号(No.537)

文化庁月報トップへ

連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

参加型プログラム「みんなの強く生きるコトバンク」

碧南市藤井達吉現代美術館学芸員 鍔本悠子

目次

  1. 1 いつでもできる,誰でもできる
  2. 2 「みんなの強く生きるコトバンク」
  3. 3 美術館体験を深める足がかりとして

 お母さんに連れられた子どもが,「疲れた」,「もう帰ろう」と言って駄々をこねる。じっくり鑑賞している家族を展示室に残して,お父さんがロビーのソファで退屈そうにあくびする。美術館でたまに見かける光景です。美術館で美術作品を見る。それだけでも素晴らしい体験ですが,特に美術館体験が少ない方にとっては,美術館がつまらないところであると映ることも多いのではないでしょうか。そのような人たちも含めて,展覧会を鑑賞される方にとって美術館での体験がより印象的なものになるような出来事を演出できないものだろうか。できれば,楽しさを抱いたその出来事のなかで,展覧会や作品のエッセンスに知らず知らずのうちに触れてしまうような・・・。

 そのような思いから,碧南市藤井達吉現代美術館では,展覧会の内容に合わせていつでも誰でも参加できるプログラムを行っています。ここでは,平成24年秋に開催した岡本太郎展(※注)に合わせて当館で行った参加型プログラム「みんなの強く生きるコトバンク」をご紹介します。

いつでもできる,誰でもできる

所蔵作品展で実施した人気投票

所蔵作品展で実施した人気投票

 参加型プログラムの最大の特徴は,展覧会の会期中なら「いつでも誰でも参加することができる」という点です。講演会やギャラリートーク,ワークショップ等は日程や時間,対象に枠がありますが,参加型プログラムのハードルは一つ。やりたいかやりたくないか。基本的には,参加される方の意思次第でどなたでも参加することができます。展覧会をじっくり鑑賞されている方にとっても,なんとなく鑑賞されている方にとっても,なるべく自然な形で自分からアクションを起こしてみたくなるような場をつくることを意識し,展覧会に合わせて内容を考えています。

「みんなの強く生きるコトバンク」

「みんなの強く生きるコトバンク」会場の様子

「みんなの強く生きるコトバンク」会場の様子

 そのような活動の一つとして,平成24年秋に開催した岡本太郎展に関連して実施した参加型プログラムが「みんなの強く生きるコトバンク」です。このプログラムでは,「芸術は爆発だ!」など,インパクトのある言葉を残したことでも知られる岡本太郎の書籍『強く生きる言葉』(イースト・プレス,2001年)に関連して,展覧会を鑑賞された方それぞれの「強く生きる言葉」を用紙に書いてもらいました。さらに「コトバンク」と名付けたポストに投函してもらい,パネルに掲示していくことで,それぞれの強く生きる言葉を他の来館者の方々と共有できるようにしました。
 展覧会の大きなコンセプトは,「現代を生きる人間が岡本太郎作品からエネルギーを充填し,それを未来の行動のために放つ力とするため,鑑賞者のエネルギーチャージを目指す」という,ストレートなものです。そこで,プログラムでは展覧会を鑑賞した人が,今度は自らエネルギーを発する,その第一歩を踏み出すことをねらいとしました。

美術館体験を深めていく足がかりとして

寄せられたたくさんの言葉たち

寄せられたたくさんの言葉たち

 実際に預けられた言葉は「出る釘になろう」「今日より若い日はない,今頑張ろう」「これでいいのだ」「笑われても気がすむまでやる!」などなど。こちらの予想以上に,現状肯定や未来への決意表明など,ポジティブな活力に満ち溢れた言葉が多く寄せられ,「気軽にできて楽しかった」「自分の思いを発信できてよかった」という感想もいただくことができました。さらに企画側でも,会期途中の状況に合わせて「用紙の色数を増やして,形も奇抜に切り出そう」,「掲示しきれなくなったものはリングに綴じて閲覧できるようにしては?」等の改良案が挙がり,積極的に試行錯誤を重ねながらの実践となりました。

 また,言葉が増えていくにつれ,文字だけを書いていたものが,文字をデザインして描くようになり,次は言葉だけでなく絵や模様も一緒に描くようになる,という風に取り組み方に広がりが生まれていきました。これは間接的に参加者同士が互いに影響を受け合い,様々な方向に反応や発見が連鎖していった結果だと捉えています。今後もプログラムを通して多方向的なコミュニケーションの場を作るとともに,あらゆる人の美術館体験が深まっていくための足がかりとなるようなプログラム作りを目指していきたいと考えています。

※注 「川崎市岡本太郎美術館所蔵作品による エネルギー充填(チャージ)!我らに伴走する岡本太郎展」は碧南市藤井達吉現代美術館にて2012年10月10日〜11月25日に開催された。

碧南市藤井達吉現代美術館

〒447-0847 愛知県碧南市音羽町1丁目1番地

お問い合わせ
0566-48-6602
開館時間
10:00〜18:00(入場は閉館30分前まで)
休館日
月曜日(月曜日が休日に当たるときは,その翌日) 年末年始
観覧料
常設展無料 企画展は展覧会ごとに定めます。
※市内在住または在学の小学生・中学生・高校生,市内に住所を有する65歳以上の方,身体障害者手帳,精神障害者保健福祉手帳,療育手帳をお持ちの方とその介添者1名は無料。
ホームページ
http://www.city.hekinan.aichi.jp/tatsukichimuseum/別ウィンドウが開きます

トップページへ

ページトップへ