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文化庁月報
平成25年7月号(No.538)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

国立文楽劇場 9月特別企画公演
「田楽と猿楽−中世芸能をひもとく」
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国立文楽劇場企画制作課 細野裕美

中世芸能の世界

 中世の日本ではさまざまな文化・芸能がゆたかに開花し,日本の芸能史をかたるうえで欠くことのできない重要な時期といわれています。なかでも田楽(でんがく)猿楽(さるがく)は鎌倉時代に人気を博した芸能であり,今回の特別企画公演では,それぞれの代表格で,いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されている「那智(なち)の田楽」(田楽)と「奈良豆比古神社(ならづひこじんじゃ)の翁舞」(猿楽)を紹介いたします。

田楽とは―

 田楽躍(でんがくおどり)とは,数名の者がビンザサラ(編木)と腰太鼓を鳴らしつつ,隊形を次々に面白く変化させながらリズムよく躍るものです。田楽躍は,舞楽などと同じく大陸から渡来した芸能と考えられており,専門集団によって,先行した流行芸である高足,刀玉といった軽業的な演目もセットで演じられました。

 平安中期以降,社寺の祭礼に奉納された記録が残され,鎌倉幕府最後の執権北条高時も田楽に魅入られた人物として有名です。その軽快なリズムでひとびとを熱狂させた田楽ですが,徐々に猿楽におされ室町時代末期には衰退しました。いまは地方の祭礼芸能のなかに,わずかに往時の姿をしのぶのみです。

那智の田楽

那智の田楽

(第一部)那智の田楽
(那智田楽保存会)

 熊野那智大社は,和歌山県南部に位置する熊野三山の聖地のひとつとして篤い信仰を集めてきました。
 同社につたわる「那智の田楽」は中世初頭熊野詣の隆盛にあわせて,京の都で大流行した田楽躍が移入したものと考えられています。
 毎年七月,熊野那智大社の例大祭,那智の火祭り(扇会式)に奉納されています。全二十一番もの曲目を残し,田楽躍の特色をよく伝えています。

翁猿楽(翁舞)とは―

 中世には,現在の能楽のもとになった猿楽という芸能を演じる専門集団が,社寺の儀式や祭礼に参勤し芸を奉納していました。なかでも猿楽がさかんであった大和地方では大小さまざまな猿楽集団が活躍していましたが,とりわけ大きな力を持った大和猿楽四座が,いまの能楽の流儀(観世,金春,金剛,宝生)へとつながっています。
 これら猿楽座の本芸であった翁猿楽(翁舞)は天下泰平などを祈禱(きとう)する内容で,「式三番」の形式(千歳,翁,三番叟(さんばそう))をもっています。現在の能楽「翁」として知られるだけでなく,各地の民俗芸能にも古型を残しています。

奈良豆比古神社の翁舞

奈良豆比古神社の翁舞

(第二部)奈良豆比古神社の翁舞
(奈良豆比古神社翁舞保存会)

 「奈良豆比古神社の翁舞」は,奈良市奈良阪町の奈良豆比古神社で,毎年十月八日の宵宮祭りにおいて奉納されます。
 三番叟,脇,千歳,太夫と登場して,前謡「とうとうたらりたらりら」と始まり,天下泰平,国家安穏をいのりめでたく舞います。室町時代の古面もゆかしく,めずらしい三人翁の登場は圧巻です。また,三番叟と千歳による問答にも独自の形式を残し注目されます。

中世芸能をひもとく

 ―中世に花開いた芸能,田楽と猿楽。本公演は,中世の趣をよく伝えるこのふたつの芸能を同時に取り上げて,多岐にわたる中世芸能の世界をひもとく一機会とするものであります。いずれも舞台公開されること自体非常に稀なことであり,さらに那智の田楽は昨年末,ユネスコの無形文化遺産に登録決定し,記念すべき時期の同時公開となりました。

 上演前には,芸能史研究家の山路興造氏による田楽と翁猿楽に関する詳しいお話があります。また字幕表示装置をもちいて舞台上の進行にあわせた解説や詞章などの表示,公演プログラム(解説書)の販売など,鑑賞にあたっての,いろいろなかたちの手引きも予定しております。
 この機会にどうぞ国立文楽劇場に足をお運びいただきまして,中世に浸るひとときをお過ごしください。

国立文楽劇場  9月特別企画公演 『田楽と猿楽―中世芸能をひもとく』

〒542-0073 大阪市中央区日本橋1-12-10

お問い合わせ
【国立劇場チケットセンター】(午前10時〜午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話]
交通
大阪市営地下鉄堺筋線・千日前線,近鉄奈良線 日本橋駅下車 7号出口より東へ徒歩1分
公演日時
9月23日(月・祝) 1時開演
入場料金
一般:4,300円 学生:3,000円
※障害者の方は2割引です。
ホームページ
http://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu.html別ウィンドウが開きます
【インターネット予約】
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