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文化庁月報
平成25年7月号(No.538)

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連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

博物館と回想法〜キオクをたどる資料でいきいきと〜

北名古屋市歴史民俗資料館 館長 市橋芳則

目次

  1. 1 一人ひとりのキオクが展示を千差万別にする
  2. 2 昭和日常博物館の試み
  3. 3 懐かしさを共有する−回想法
  4. 4 地域とミュージアムの深い関わり

1 一人ひとりのキオクが展示を千差万別にする

「思い思いのキオクがよみがえる」

「思い思いのキオクがよみがえる」

 階段を上がって3階のフロアに近づき,展示の片鱗(へんりん)が見え始めると「おーっ懐かしい」「すごーい,なにこれ」といった「意外」と「感動」のこもった言葉を多くの方が発します。
 さらに一歩,展示会場に足を踏み入れると,目に入ったモノを笑顔と大きな声で説明し始めます。その説明は,学芸員がする解説とは異なり,自身の体験を交えたオリジナリティあふれるものとなります。
 歴史系博物館の展示品は,均一の情報を提供する。が,ここでは,経験の相違等によって展示の受け取り方は多様となります。
 博物館の資料である過去のモノたちが,懐かしさというチカラを発揮し,来館者に感動や感傷を提供し,言葉を発しての交流を促すミュージアム,それが昭和時代の暮らしに特化した「昭和日常博物館」です。

2 昭和日常博物館の試み

 昭和が平成となり25年,四半世紀が経過しました。最近,テレビ番組などでは,懐かしいレトロな雰囲気を「昭和だね」「昭和の人間だからさ」と表現している様子を頻繁に目にするようになりました。
 昭和時代は60年余り,前半と後半では生活様式が激変します。昭和30年代には,三種の神器と呼ばれるテレビ,冷蔵庫,洗濯機が登場し普及していきました。昭和日常博物館では,昭和時代の暮らしの激変ぶりをモノで残し記録し,活用していくという試みを展開しています。10万点を超える生活資料が集まり,約1万点を展示しています。
 昭和時代のごくありふれた日常生活で使われた品々だからこそ,多くの来館者のキオクを揺さぶり,笑顔を引き出しています。

3 懐かしさを共有する−回想法

「三世代でコミュニケーション」

「三世代でコミュニケーション」

 館内には,昭和の暮らしで使われた電化製品などの道具や菓子・食品などのパッケージが展示してあります。こうした過去に実際使ったり食べたりしたモノを見ると,自然に当時のキオクがよみがえり,その思い出を語らずにはいられなくなるようです。家族,友だちなど楽しげな表情で語り合う姿を良く見かけます。
 回想法とは,懐かしい思い出,記憶を語り合うことで,脳を活性化し,心身を元気にする心理・社会的アプローチです。
 洗濯板とたらい,しぼり機のついた電気洗濯機の前で「子どもの頃,よく洗濯の手伝いをしたけど,洗濯板で洗うのはつらかったねー」「でも,電気洗濯機を買ったときは私はテレビより感動した」といった会話が聞かれます。言葉とともに洗濯板で洗うしぐさや,右手をクルクル回して電気洗濯機についていたローラー式のしぼり機にも話が及びます。

4 地域とミュージアムの深い関わり

「世代間交流ワークショップ」

「世代間交流ワークショップ」

 回想法は,地域に暮らす高齢者を元気にしていくプロジェクトとして活用されています。博物館と高齢者ケア・認知症予防・健康推進などを推進する福祉関係の部局とが連携を図った「思い出ふれあい(回想法)事業」を2002年から実践しています。私たちは,これを「博福連携」と名付け,活動の軸の一つとしています。高齢者が思い出を語り合う「回想法スクール」に始まり,参加した方々は「いきいき隊」として活動を継続することで健康を維持,さらに,子どもたちと世代間交流を図っています。本館では,「いきいき隊」のメンバーがミュージアム・エデュケーターとしての役割を担う機会を「世代間交流ワークショップ」というスタイルで提供しています。
 「洗濯板と昔のアイロン体験」「かつお節−削りたての味と香り」「石臼できな粉を()てみよう」など,世代を超えた笑顔と言葉が交流する機会となっています。

北名古屋市歴史民俗資料館「昭和日常博物館」

〒481-8588 愛知県北名古屋市熊之庄御榊53

お問い合わせ
0568-25-3600
開館時間
9:00〜17:00
休館日
・毎週月曜日(ただし,祝日のときは開館し,その日後の最初の休日でない日)
・館内整理日(毎月末日)(ただし,日曜日又は月曜日のときはその日後の最初の休日又は休館日でない日)
・特別整理期間・年末年始(12月28日〜1月4日)
観覧料
無料
ホームページ
http://www.city.kitanagoya.lg.jp/rekimin/別ウィンドウが開きます

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