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文化庁月報
平成25年8月号(No.539)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

国立能楽堂開場30周年記念公演 (平成25年9月)

国立能楽堂 大貫誠之

国立能楽堂30周年のあゆみ

 国立能楽堂はこの9月に,昭和58年の開場から30年を迎えます。今日まで能・狂言の公演,伝承者の養成,調査研究などの事業を通じて,能楽の保存と振興を図ってまいりました。公演事業においては,開場から1,500回以上の公演,約111万人もの入場者数を数え,殊に,本年度は30周年の節目にふさわしく,能・狂言の大曲・秘曲から名曲・稀曲(ききょく)まで,多種多彩な構成でお送りしております。
 なかでも開場月の9月に上演される「国立能楽堂開場30周年記念公演」では,能・狂言,各流儀の当代一流の名手による至芸の数々を,この30年のご愛顧に感謝しつつ,心ゆくまでお楽しみいただきたいと思っております。この「30周年記念公演」は〔一日目〕から〔四日目〕まで,4日間催されます。順を追ってその詳細をご紹介してまいりましょう。

国立能楽堂開場30周年記念公演
〔一日目〕9月15日

 〔一日目〕は国立能楽堂開場記念日の9月15日に催されます。厳かな「(おきな)」を幕開けに,艶麗なる絶世の美女を描く能「(よう)()()」,狂言の名作「(はぎ)大名(だいみょう)」,そして〔一日目〕の最後には,土蜘蛛の精の征伐譚を織り込んだ能「(つち)蜘蛛(ぐも)」を上演します。
 「翁」で翁の役はシテ方観世流宗家・観世(かんぜ)清和(きよかず),三番三の役は狂言方大蔵流・人間国宝の山本(やまもと)東次郎(とうじろう)が勤めます。能「楊貴妃」は「干之掛(かんのかかり) 臺留(うてなどめ)」の小書(こがき)(特殊演出)により,舞台により一層の華やかさが添えられます。シテ(主役)はシテ方観世流・芸術院会員の梅若(うめわか)玄祥(げんしょう)が勤めます。狂言「萩大名」では狂言方大蔵流宗家・大藏(おおくら)彌太郎(やたろう)が,また,能「土蜘蛛」ではシテ方金剛流宗家・金剛(こんごう)永謹(ひさのり)がシテを演じます。「土蜘蛛」は「千筋之伝(ちすじのでん) ささがに」の小書により演出に変化が生まれ,より迫力のある舞台となります。間狂言「ささがに」には狂言方大蔵流の重鎮,茂山(しげやま)千五郎(せんごろう)茂山(しげやま)七五三(しめ)の兄弟が出演します。

〔二日目〕9月16日

 〔二日目〕の能は人数ものの大曲2曲を一挙上演致します。能「住吉詣(すみよしもうで)」ではシテ方の立役が13人,能「正尊(しょうぞん)」では10人も登場します。通常シテ方の立役はシテ一人のみのことが多いので,いつもとは異なる華やかな雰囲気に圧倒されることでしょう。狂言は人気曲「鶏聟(にわとりむこ)」を上演します。
 能「住吉詣」は『源氏物語』を典拠にした作品で,今回は舞が一層華やかな「悦之舞(よろこびのまい)」の小書での上演,シテ・明石上(あかしのうえ)の役を観世流の重鎮・大槻(おおつき)文藏(ぶんぞう)が勤めます。国立能楽堂主催公演での観世流「住吉詣」は平成5年以来,実に20年ぶりの上演となります。
 能「正尊」は,一方『平家物語』に拠る作品で,今回は格調高い「起請文(きしょうもん)」の小書での上演,シテ・土佐坊(とさのぼう)正尊(しょうぞん)はシテ方金春流宗家・金春(こんぱる)安明(やすあき)が勤めます。本曲も平成4年以来,久しぶりの主催公演での上演となります。
 対照的な2曲ですが,上演機会の(まれ)な人数ものの作品をどうぞお楽しみください。また,狂言「鶏聟」は狂言方大蔵流の重鎮・(やま)(もと)則俊(のりとし)がシテの(むこ)の役を演じます。

〔三日目〕9月17日

 〔三日目〕には能の名曲3番と,狂言の大曲1番をお届けします。
 能「鶴亀(つるかめ)」は玄宗(げんそう)皇帝(こうてい)の長寿が(たた)えられるおめでたい作品,天女の華麗な舞が印象深い能「羽衣(はごろも)」,梅の花の下での酒宴に狂言独特の雰囲気が描かれる「(いおり)(うめ)」,そして〔三日目〕の最後には,獅子が戯れ舞う,祝賀性に満ちた「石橋(しゃっきょう)」を半能で上演致します。
 能「鶴亀」は宝生流にのみ伝わる「曲入(くせいり)」の小書で,流儀の長老・近藤(こんどう)乾之(けんの)(すけ)がシテを勤めます。能「羽衣」は小書「舞込(まいこみ)」にて,シテ方喜多流・人間国宝の友枝(ともえだ)昭世(あきよ)がシテの天女の役を,また狂言「庵の梅」では狂言方和泉流・人間国宝の野村(のむら)(まん)がシテの老女の役を演じます。「石橋」は,能の後半部分のみを演じる半能にて上演。シテはシテ方観世流・観世(かんぜ)銕之丞(てつのじょう)家の当主,観世銕之丞が勤め,4体の獅子が登場する「大獅子(おおじし)」の小書での上演です。

〔四日目〕9月20日

 〔四日目〕は狂言の会として,次世代に一層の活躍が期待される狂言方をシテに迎え,狂言5番を能の五番立〈神・男・女・狂・鬼〉になぞらえてお送りします。大蔵流からは「通円(つうえん)」「(ゆう)(ぜん)」。茶屋の最期を描いた「通円」を茂山(しげやま)正邦(まさくに)が,傘張りの最期を描いた「祐善」を大藏(おおくら)千太郎(せんたろう)が演じます。「祐善」は珍しい「古式(こしき)」の小書により,傘張りを弔う僧が通常より二人多く登場します。また,和泉流からは「夷大黒(えびすだいこく)」「八尾(やお)」「老武者(ろうむしゃ)」。夷と大黒が一度に勧請(かんじょう)される「夷大黒」を三宅(みやけ)右矩(すけのり)が,閻魔(えんま)大王(だいおう)と八尾の地蔵の艶な関係があらわにされる「八尾」を野村(のむら)(また)三郎(さぶろう)が,また,年寄り仲間と若者との争いを描く「老武者」を野村(のむら)萬斎(まんさい)が,それぞれシテを勤めます。5人のシテ全員が面をかけて登場し,囃子とともに演じられるのも大変珍しく,この公演の大きな特徴となっています。

次の30年に向けて

 国立能楽堂はこれからも,能・狂言の魅力をさまざまな角度から伝えられるよう努めてまいります。また今年は,能の大成者・世阿弥(ぜあみ)の生誕から650年の記念年にあたります。時代の波とともにダイナミックに変化しつつも,その時代を反映しながら脈々と発展を遂げてきた能・狂言の面白さを,この先30年,それよりもずっと先へ伝えていくことを大きな使命として,国立能楽堂は常に観客の皆様とともにありたいと思います。

国立能楽堂開場30周年記念公演ポスター

国立能楽堂
開場30周年記念公演ポスター

国立能楽堂

国立能楽堂

国立能楽堂9月 国立能楽堂開場30周年記念公演      ※全公演字幕付きです。

〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-18-1

お問い合わせ
【国立劇場チケットセンター】(午前10時〜午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[PHS・IP電話]     ※予約開始8月9日(金)10時〜
交通
JR(総武線)千駄ヶ谷駅より徒歩5分,都営地下鉄(大江戸線)国立競技場駅より徒歩5分,
東京メトロ(副都心線)北参道駅より徒歩7分
公演日時
〔一日目〕9月15日(日) 「翁」・能「楊貴妃干之掛・臺留」・狂言「萩大名」・能「土蜘蛛千筋之伝・ささがに
※「翁」上演中のご入場はできませんのでご了承ください。
〔二日目〕9月16日(月・祝) 能「住吉詣悦之舞」・狂言「鶏聟」・能「正尊起請文
〔三日目〕9月17日(火) 能「鶴亀曲入」・能「羽衣舞込」・狂言「庵の梅」・半能「石橋大獅子
〔四日目〕9月20日(金) 狂言の会 「夷大黒」・「通円」・「八尾」・「祐善古式」・「老武者」
※全公演午後1時開演
入場料金
〔9月15日,9月16日,9月17日〕
正面  10,000円/脇正面 8,000円(学生:5,600円)/中正面 7,000円(学生:4,900円)
〔9月20日〕
正面  8,000円/脇正面 6,500円(学生:4,600円)/中正面 5,500円(学生:3,900円)
※全公演障害者の方は2割引です。
※各公演とも予約開始日(8月9日)は,お一人様2枚までの購入に限らせていただきます。
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