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文化庁月報
平成25年8月号(No.539)

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連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」

親と子のための美術鑑賞教室 「美術館ふしぎ発見!」

栃木県立美術館学芸員 鈴木さとみ

 「子どもに学校や家庭ではできない体験をさせたい」「美術館に連れていきたいけれど,鑑賞の仕方がわからない」…そんな保護者の方の声に応えて,栃木県立美術館では2008年より,第3日曜日の「家庭の日」に「親と子のための美術鑑賞教室」を実施してきました。親子で楽しみながら美術に親しんでもらうために,作品に用いられた技法の追体験や対話型鑑賞などを行っています。鑑賞の対象は主に展示室内の作品ですが,今回はスペシャル版として初めて,美術館という"空間"に着目したプログラムを企画しました。ここでは,美術館の建物から屋外彫刻,展示方法まで含めて美術館を楽しむ「美術館ふしぎ発見!」についてご紹介します。

目次

  1. 1 展覧会だけじゃない,美術館の見どころ
  2. 2 みんなで一緒に「美術館ふしぎ発見!」
  3. 3 宝ものは足元に

1 展覧会だけじゃない,美術館の見どころ

 来館者の主な目的は展覧会(作品)をみること。展示している“空間”に注目する人は多くありません。「美術館ふしぎ発見!」は,建物を探検しながら,普段見過ごしているおもしろいモノ,コトをスタッフと一緒に発見し,美術館という空間に親しんでもらうプログラムです。

屋外彫刻も見どころ満載! 建物壁面のハーフミラーガラスにも注目です。

屋外彫刻も見どころ満載!
建物壁面のハーフミラーガラスにも注目です。

 建物探検で子どもに人気なのはバックヤードツアーですが,残念ながら当館は裏側を見せない方針です。そのため本プログラムでは,通常の公開スペースで参加者が自発的に美術館の魅力を探せるように工夫しました。

 一方的な解説ツアーの形は避けましたが,やみくもに探すのではなく,あらかじめこちらでチェックポイント(建築,屋外彫刻,展示備品など)を14ヵ所設定しました。おもしろいモノを探しながら,美術館の仕事や空間の意味を知ってもらえそうな所を選びました。随所にクイズを設け,キーワードを隠したお手製フリップボードや触れる小道具もちりばめて,学芸員ならぬ学芸人(・・)的な楽しい雰囲気で進めました。

2 みんなで一緒に「美術館ふしぎ発見!」

 今回の対象は小学生。はじめに「美術館でのお約束」を確認し,常設展示室から探検スタートです。当館は川崎清氏の設計で,デザイナーズ建築の先駆けともいえるちょっと変わった建物です。1971年の開館以来,何度か増改築をしているため,昔の写真と今を比較しながら,人にも作品にも快適な展示空間について考えるクイズを出しました。「発見」するタイプの問題は上級生に有利になってしまうので,3択クイズも投入。参加者には探検カードを配り,正解したらクマなどかわいい形の穴空けパンチでパンチング。子どもたちは大喜びで,進んでクイズに参加していました。

 展示室内では,いつも隅の方に置いてある不思議な箱(温湿度計)に注目。「これは何かな?」と尋ねると「地震があった時に波線描くのかなぁ?」あるお母さんは「これも作品じゃないの?」・・・と,目盛に気付いた男の子が「わかった!温度を計ってるんだ!」。現在の温湿度をみんなで読み取り,昨年の同じ時期の記録票を見て,作品を守るため室内の温湿度が一定に保たれていることを確認しました。

免震台を触ってみると・・・「あっ,動いた!」

免震台を触ってみると・・・「あっ,動いた!」

 次に,展示の仕掛けを大公開。一見ふつうの台に見える「免震台」。今回は特別に,参加者の皆さんの目の前で免震台を動かしてみました。台車に免震台を設置し,湯呑(ゆのみ)(作品ではなく日用品)を載せ,台車を勢いよく動かします。しかし湯呑は倒れません!これには子どもたちもお父さんも「おぉーっ!」と大興奮。

 ほかにもテグスや鉛玉を触ってみたり,絵画の免震対策を探ったり・・・。額の裏側を(のぞ)きこみ,はね止め付フックを見つけた女の子は「家に飾ってある絵のフックとは形が全然違う!」とびっくり。

ひみつ道具「照度計」。照明の明るさはどれくらい?

ひみつ道具「照度計」。照明の明るさはどれくらい?

 さらに,照度や紫外線といった目に見えないものを数値にして見せるスペシャルな体験も提供。屋外で高い紫外線数値を示した計測器を展示室内でかざすと,見事「0」に!皆さんから拍手が起こりました。

 屋外展示場の彫刻を鑑賞し,企画展示室エントランスで建築に溶け込んだ作品(照明や壁面オブジェ)を探し歩いて,あっという間に1時間が過ぎました。最後に,参加してくれた子どもたちの名前を読み上げて一人ずつ認定証を進呈し,思い出を持ち帰ってもらいました。

3 宝ものは足元に

 保護者の方からは「普段何気なく見ていた物が何だったのかよくわかり,親子ともども大変勉強になりました」「美術と美術館の良さをもっと知って,自分でも子どもにやってみたいと思います」との感想をいただきました。通常の親子鑑賞教室では,親は子どものサポートにまわりがちですが,今回は初めて知ることが多いからか,子どももお父さんもお母さんも,みんな同じスタート地点に立って一緒に探し楽しんでいたのが印象的でした。

 好奇心いっぱいのこどもたちはチェックポイント以外にもどんどん発見し,こちらが美術館の魅力を再認識することも。開館41年の施設ゆえ様々な問題もありますが,見方によっては教育普及の素材の宝庫だと実感しました。

 今後の課題としては,近年増えつつあるリピーターに対して内容をどう練り直すか。同じクイズを出せないとなると大変ですが,そこは自ら新鮮な眼で宝ものを再発見し,次回に向けて改良していきたいと思います。来館者の方々に,作品だけでなく空間も含めて美術館を楽しみ,親しんでいただければ幸いです。

栃木県立美術館

〒320-0043 栃木県宇都宮市桜4-2-7

お問い合わせ
028-621-3566
開館時間
9:30〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
毎週月曜日(祝日,振替休日は開館して火曜日休館),祝日の翌日(土・日を除く),展示替期間,年末年始
観覧料
コレクション展:一般 250(200)円,大高生 120(100)円,中学生以下は無料
※( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と第1種または第1級と記載のある方の介護者1名の観覧料は無料
※企画展観覧料は展覧会ごとに設定
※企画展観覧券でコレクション展もご覧いただけます。
ホームページ
http://www. art.pref.tochigi.lg.jp/別ウィンドウが開きます

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