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文化庁月報
平成25年9月号(No.540)

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イベント案内

東京国立近代美術館工芸館
クローズアップ工芸

会期:平成25年9月14日(土)〜12月8日(日)
会場:東京国立近代美術館工芸館

 素材の力と技術と表現が織り合わされた工芸作品では,その質感や細部に意外な表情を発見することがあります。遠目には見えなかった色やかたちが,作品にぐっと近づくことで,生き生きとした姿を現します。ときにはそれが,作品の印象をガラリとかえてしまうことも少なくありません。素材の表情を豊かに伝えるテクスチャーや,精巧な技術に裏打ちされた細部,そんな小さな部分にこそ,作家の表現を支える秘密が潜んでいます。

鈴木長吉《十二の鷹(部分)》1893年 東京国立近代美術館蔵

鈴木長吉《十二の鷹(部分)》1893年 東京国立近代美術館蔵

 2013年秋の工芸館の企画展「クローズアップ工芸」は,近現代を代表する作家5名―鈴木長吉(1848-1919),富本憲吉 (1886-1963),松田権六(1896-1986),森口華弘(1909-2008),小名木陽一(1931- )―を取り上げ,その作品の特色にフォーカスするオムニバスの展覧会です。ここでは,本展出品作の一つ,鈴木長吉の《十二の(たか)》について触れ,展覧会の見どころの1つをご紹介します。

 (ほこ)と呼ばれる漆塗りの止まり木の上で羽を休める猛禽が,迫力ある様子で活写されたこの作品は,鷹狩りのために訓養された鷹をモチーフとして,金属を鋳造して作られています。19世紀末,日本美術の海外紹介に功績のあった林忠正の発注になるもので,同時代に輸出工芸の分野で活躍した鈴木長吉が制作監督を務めました。羽の一枚一枚には彫金が施され,爪先や(くちばし)の先には黒漆が塗られる等,細部にわたって,生々しい表現が追求されています。

鈴木長吉《十二の鷹》1893年 東京国立近代美術館蔵

鈴木長吉《十二の鷹》1893年 東京国立近代美術館蔵

 実は,このように止まり木にとまった鷹を一羽一羽肖像のように描き出す表現には先行例があります。室町時代末から江戸時代初期にかけて盛んに制作された架鷹図屏風(かようずびょうぶ)です。六曲一双の屏風(びょうぶ)の一扇に一羽ずつ配置され,計12羽がさまざまなポーズを とっています。鷹狩りを好んだ武将たちは,誇らしげに描かれた鳥たちに,自分たちの理想とする姿を重ね合わせ,こうした鷹図を賞翫(しょうがん)しました。《十二の鷹》の12という数字も,先行するイメージを踏まえてのことと考えられます。 本作は,1893年のシカゴ万国博覧会で展示をされましたが,この作品をプロデュースした林忠正は,明治の日本人の気概を鷹の勇猛な姿に託し,当時の最高の技術で日本の表現力を世界に示そうとしたのではないでしょうか。時代のテーマと技術が渾然(こんぜん)一体(いったい)となった《十二の鷹》の迫真性は,作品の隅々にまで行き渡っています。

 本展では,《十二の鷹》を,江戸時代に制作された架鷹図屏風とあわせて展示し,伝統の絵画の形式をふまえながら,金属による立体表現に,明治の名工・鈴木長吉がどのように挑んだのかをご覧いただきます。

 そのほか,図案と創作の問題に向き合った富本憲吉,古代粉の研究を通して蒔絵の近代を実現した松田権六,(まき)(のり)技法で友禅染めの新境地を開いた森口華弘,織りで自律する立体表現を追求する小名木陽一の作品を展観します。作品の細部に垣間見られる,時代と向き合い制作を進めていく作家の姿にご注目ください。

(工芸課主任研究員 北村仁美)

東京国立近代美術館工芸館

〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1

お問い合わせ
03-5777-8600 ハローダイヤル
交通
東京メトロ東西線「竹橋駅」徒歩8分/東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」徒歩12分
開館時間
10:00〜17:00(入場は閉館30分前まで)
休館日
毎週月曜日(9月16日・9月23日・10月14日・11月4日は開館),9月17日(火),9月24日(火),10月15日(火),11月5日(火)
観覧料
一般500円, 大学生300円
※18歳未満および高校生以下,障害者手帳等をお持ちの方とその付添者1名は無料
※それぞれ入館の際,年齢のわかるもの,障害者手帳等をご提示ください。
ホームページ
http://www.momat.go.jp別ウィンドウが開きます

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