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文化庁月報
平成25年9月号(No.540)
連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」
子どもたちの学びを起こす京都大学総合博物館
京都大学総合博物館長 大野照文
研究者の卵である大学院生や学生が,取り組んでいる研究テーマや興味を持っていることについて子どもたちに真剣勝負で伝える。子どもたちは,自分の意見や推理を言ったり,疑問を素直に返したりする。京都大学総合博物館では,研究者をめざす人たちと子どもたちが向かい合って,学びを通じた交流が9年近く続いています。
「京都大学子ども博物館」が始まったきっかけ
京都大学総合博物館では,2004年9月から毎週土曜日に「京都大学こども博物館」を開催しています。当館には約260万点の学術標本資料が保管され,また京都大学の研究成果が展示されています。しかし,展示だけでは研究の面白さや研究している人たちの個性的な魅力などがなかなか伝わりません。そこで,研究している人たちと来館する人たちが直接に出会える場を作りたいとの希望が大学院生の間に生まれ,子どもたちの学びの動機づけになるようにとターゲットを絞って「京都大学子ども博物館」が始まりました。土曜日の朝,講師役の大学院生や学生数名が資料を机に広げて博物館のエントランスに集まり,待ち受けます。子どもたちが来ると,話しかけたり質問を受けたり,対話が始まります。
子どもたち1人1人にあった対話
子ども博物館の様子 あちこちで大学院生と子どもたちや家族との対話が起きている
子どもたち一人一人の興味に応じて,同じ流れにはならない,オーダーメイドの対話です。5分で飽きれば別の講師のところに行ってもよいし,興味が続けば同じ講師と何時間対話してもよいのです。参加者は,家族連れの小学校低学年が中心です。リピーター率が高いのが特徴で,中には質問を記入したノートを持参する熱心な子どももいます。また,研究について対話するだけでなく,お兄さんお姉さんとお話すること自体を楽しんでいる子どももいます。もちろん,子どもの心を持った大人の参加も歓迎しています。
子ども博物館の様子 親子でいろいろなは虫類を真剣に見る
和やかな真剣勝負
爬虫類を研究している学生に対して「何歳くらいから(研究対象に)興味を持ち始めたの?」「エサは何をあげているの?」という素朴な疑問から「突然変異は進化なの?また,どの段階から進化というの?」という即答できない鋭い質問をされて戸惑うこともあります。専門用語は使わず,子どもの年齢を考慮した言葉や経験に即した例え話を用いるなどして必死に説明をおこなっています。そのため和やかな雰囲気の中にもよい意味での緊張感が漂っています
京都府全域の子どもたちに体験してもらう
丹後半島での出張子ども博物館の様子 理科実験を見守る子どもたち
さて,当館の位置する京都府の南と北の端には,「大学」という存在が珍しい地域もあり,京都府教育委員会の要請で,年に数回出張子ども博物館を開催しています。「大学ってどんなところ?」「大学生ってどんな人たち?」を身近に体験し,「大学で研究するぞ!」と強い動機づけを得る子どももいます。また,熱心に話を聞き,質問する子どもたちの姿を見て,教職を希望する大学院生や学生も出始めています。
まとめ
対話プログラムなので一度に対応できる人数には限りがありますが,可能な限り丁寧に向き合い,少しでも子どもたちの学びへの興味や関心を広げる機会になればと思って,まずは10年間,休まずに続けることを目標に取り組んでいます。
京都大学総合博物館
〒606-8501 京都府京都市左京区吉田本町
- お問い合わせ
- 075-753-3272
- 開館時間
- 9:30〜16:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日,火曜日(平日・祝日にかかわらず),年末・年始(12月28日〜1月4日)
- 観覧料
- 一般400円,大学生・高校生300円,小学生200円
※身体障害者手帳をお持ちの方および70歳以上の方は無料です。 - ホームページ
- http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/


