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文化庁月報
平成25年9月号(No.540)
連載 「文化交流使の活動報告」
野村萬斎 N.Y. 狂言ワークショップ報告書
世田谷パブリックシアター
参加者16名:SITI劇団員,SITIでトレーニングを積んでいる俳優
萬斎の簡単な挨拶の後,以下の通りワークショップ(以下WSと略す)は進められた。
【お辞儀】
・参加者全員でお辞儀
WSのはじまりに,狂言の稽古はじまりに必ずするように参加者全員でお辞儀をした。その様子を見て,萬斎からいくつかの注意点やお辞儀をすることの意味などが説明される。お辞儀をする相手から目線を外さないことなどは武士の身体性に起因することなどが説明されるが,現代においては稽古をする身体に緊張感を憶い出させる役割があるなどの説明もなされた。再度参加者全員で一斉に行う。
また,萬斎から,今回の参加者の多くがスズキ・メソッド(SCOT・鈴木忠志の俳優訓練法)の訓練を受けていることから,狂言とスズキ・メソッドとの共通点や相違点を確認しながらWSを進めたいとの発言がなされる。
【狂言の精神の説明】
狂言のはじまりでは「このあたりの者でござる」と登場人物が名乗ることがほとんどで,それは身の回りにあるもの全てを慈しむという狂言の精神や人間は全員平等であるという考え方を示している,など狂言の精神について大まかな説明がなされた。
【狂言「
・狂言「茸」の簡単な説明
・「茸」に登場するきのこの動き(直進及び萬斎の発声にあわせて移動・止まるを繰り返す)
狂言「茸」の説明において,狂言では人間ばかりではなく動物・植物をも演じることがあること,また,それが前述の身の回りにあるもの全てを慈しむという狂言の精神と繋がっていることが紹介される。
【構えと
・狂言の基本の構え
・摺り足で進む
・序破急の概念を意識し摺り足で進む
・摺り足で進み,最後に自分の名前を名乗る
・摺り足で進み,一歩身体を引いてから,最後に名前を名乗る
・女役の摺り足の仕方
狂言の身体の基本的な在り方を構えと摺り足を中心に実践された。構えにおいては身体の前後にベクトルを感じ身体のバランスを取っていること等具体的にレクチャーを行い,摺り足の実践へ移行。集団と個別に行い,それぞれに「
【主人と従者の動き】
・二人一組となって,主人と従者の関係で動く
主人は座った(正座した)まま目によって,従者を立たせたり座らせたり,左右に移動させたりする。役割やペアを変えて数回行われる。萬斎と行う参加者も現れた。ここで重要なことは,二人の関係性に緊張感を持続させることと,従者は忠実な従者であること,主人は従者のポテンシャルを最大に引き出すことを最大限に意識することである。
休憩
【狂言「蚊相撲」を使った動き】
・「蚊相撲」の蚊の動き(直進と風に煽られたときの二つの動き)
・上記をペアとなって行う。
萬斎が実際に行い,参加者がそれを真似る。まずは,直進と風に
【笑いと泣きの型】
・狂言における「笑い」の型の実践
萬斎が,まず「笑い」の型を実演。その後,音の高低・長短,身体の在り方等を細かく説明しながら参加者と行う。「泣き」の型を萬斎が実演し,先ほどの「笑い」と「泣き」を交互に行う。この時,萬斎から「特に楽しいこともなければ悲しいこともない。つまりこれは型なのです」と説明。これが,この狂言WSの締めくくりの言葉となり,身体を中心とした狂言の「型」のWSは終了した。
【質問】
・今回のWS並びに「マクベス」の公演について質疑応答。
萬斎がWS冒頭に狂言とスズキ・メソッドとの共通点や相違点を確認しながらWSを進めたいとの発言の通り,狂言とスズキ・メソッドの違いについて「身体のベクトルが上だけではなく前後にあるのはなぜか?」「摺り足の違いはどこに起因していると思うか?」など多くの質問がされた。「マクベス」を観た参加者から「マクベス」と日本の死生観の関連についても質問があり,狂言のみならず日本(及びその文化)への関心の高さを実感することとなった。質疑応答が白熱し時間を大幅にオーヴァーし充実したWSとなった。

世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアターは、現代演劇と舞踊を中心とする専門的な活動と、市民の自由な創作や参加体験活動を通し、新しい舞台芸術の可能性を探る劇場です。2002年より狂言師の野村萬斎が芸術監督を務めています。
三軒茶屋駅前のランドマーク、キャロットタワーの中にあり、主劇場・世田谷パブリックシアターと小劇場・シアタートラムの2つの劇場のほか、稽古場や作業場、音響スタジオなど「舞台作品創造」のためのさまざまなスペースが用意されています。こうした施設を利用して、区民の生活と文化・芸術をつなぐという大きな目的を実現するために、1997年の開場当初より様々な「上演」と「学芸」のプログラムを展開してきました。
作品創造のために芸術監督や制作・学芸・技術分野の専門スタッフを配置した新しい運営スタイルは、全国の公共劇場から常に注目されています。

