文化庁月報
平成25年9月号(No.540)
日本の宗務行政
寄稿 公益財団法人日本宗教連盟の役割
1 日本宗教連盟とは
公益財団法人日本宗教連盟
(略称・日宗連)は,教派神道連合会
,公益財団法人全日本仏教会
,日本キリスト教連合会
,宗教法人神社本庁
,公益財団法人新日本宗教団体連合会
の五団体によって構成されています。
日宗連は,昭和21年(1946)6月2日,日本国憲法が規定する信教の自由の尊重と擁護,および政教分離の原則のもと,宗教文化の振興を図り,道義に基づく豊かな社会の形成に寄与し,もって世界平和の確立に貢献することを目的として設立されました。
日宗連のような組織は世界に例を見ないと言われますが,信仰の対象も教義も異なる五団体が,今日に至るまで分裂することなく協調を保って来られたのは,団体間の緊密な連携のもと,議事運営に際しては全会一致を旨とし,一団体でも反対を表明した時は議決しないという不文律を守ってきたことにあります。これは日宗連の大きな特徴です。
2 日宗連の活動
真言宗醍醐派大宝院僧侶による東日本大震災三回忌法要(宮城県石巻市)
天照御祖神社の神輿渡御(岩手県上閉伊郡大槌町)
仮設住宅での日本バプテスト連盟主催による心のケア活動(岩手県上閉伊郡大槌町)
最も重要な活動は,新たな法律の制定や法改正に際して,憲法に定める信教の自由や政教分離原則との整合は取れているか,宗教法人の運営や宗教団体の活動に影響を及ぼすようなことはないかを検討することです。問題があれば日宗連としての見解を表明し,意見書を提出するなどして是正を求めます。
平成17年6月,行政手続法の改正により,政令や省令等を定める際に予め国民の意見を募集する制度(パブリックコメント制度)が導入されました。この制度の導入によって,誰しもが意見を寄せることが出来るようになった反面,一方的に提出期限が設けられるため,団体として意見を表明する場合には,内部の合議手続きに時間を要し,検討作業にあまり時間をかけられなくなってしまいました。
また,生命倫理や教育,税制などの問題については,宗教者の立場から調査・研究を行い,テーマに応じて宗教者,あるいは一般の方を対象としたセミナーやシンポジウムを開催しています。問題の啓発に努めるとともに,内容によっては意見を表明したり,問題提起を行うなどしています。
宗教に関する行政事務をつかさどる文化庁とは,宗務課を窓口として,宗務行政の現状や施策について機会あるごとに情報交換を行っています。文化庁主催の会議や研修会に際しては,役職員や講師を派遣するなどして協力し,法人の管理運営に必要な事務能力の向上や意識の徹底に努めています。
ところで,平成23年3月11日の東日本大震災では,多くの宗教施設が甚大な被害を受けました。津波によって,コミュニティー全体が流失してしまった地域もあります。
五団体では,それぞれの団体の特性を活かし,支援物資の調達・配給や義援金の募集,炊き出しや
日宗連では,一部ではありますが,これら東日本大震災に際しての五団体の活動状況をまとめ,機関紙やホームページ等を通して,広く一般の方にも御理解をいただくよう広報にも努めています。
3 大震災からの復興に際して
震災から早二年,被災地では官民あげての懸命な復興作業が続けられている中,神社や寺院,教会等は,犠牲者の慰霊,被災者の受入れ,支援物資の中継など,それぞれの特性を活かして支援活動を実施してきたところです。
こうしたなか宗教施設の復興にはどうも政教分離の問題が障壁の一つとなっているように思われます。このことは,震災からおよそ一ヶ月後に創設された政府の復興構想会議の中でも指摘されていますが,平成24年6月,復興庁が実施した「福島復興再生基本方針(案)」に関する意見募集に際して,同庁より「一般的に,宗教そのものの観点から復興施策を講ずることについては,憲法第20条の規定を踏まえ,慎重な対応が必要と考えています。なお,地域の歴史的,伝統的な宗教施設等が,地域の文化,観光等の再生の観点から,復旧・復興の対象となることもありますが,これらは,あくまでも文化,観光等の再生の観点から結果的に対象となっているものです。」との見解が示されました。
これに対し日宗連では,9月27日,意見書を提出し,復興庁に申入れを行いました。詳しい全文は,本連盟のホームページで公開している意見書
を御覧ください。
「福島復興再生基本方針」に関する意見書
新聞報道では,復興庁に限らず,一部の官公庁からも「寺や神社などの宗教法人は,憲法が定める『政教分離の原則』により,直接的な公的支援を受けることができない」といった見解が示されたり,宗教者の側からも「宗教施設には国や自治体からの補助は期待できない。(再建)費用は自ら調達するしかない。」といった意見も見られました。憲法に定める政教分離原則の解釈や運用上の誤解が,津市地鎮祭訴訟最高裁判決以降,判例の積み重ねによって一定の方向性が示された今日にあっても,意外なほど根強いのかもしれません。
4 今後の課題
再建された青巣稲荷神社での植樹祭(宮城県亘理郡山元町)
去る平成25年6月5日,復興推進委員会は,「『新しい東北』の創造に向けて」と題する中間とりまとめを発表しました。住宅の再建とともに加速化する「復興まちづくり」の中で,人々の心のよりどころである神社や寺院など宗教施設の復興はどのように位置付けられ,なされていくのでしょうか。
もちろん,その前提として,神社や寺院などを支えて来られた地域の方々の意向というものが尊重されなければならないことは言うまでもありません。離散や集団移転など,市街地や集落の根本的改造が必要な地域において,果たしてこうした方々の意見を集約することができるのか,たとえ時間はかかろうとも,その先にあるコミュニティーの再生にまで配慮した慎重かつ丁寧な取り進めが必要となりましょう。
と同時に,会社や事務所,工場や商店などの再建が進み,宗教法人と同じく広義の公益法人とされる社会福祉法人や学校法人,医療法人等の施設も再建されていく中で,宗教法人や宗教団体が有する施設だけが政教分離を理由に除外されるようなことはないか,被災地の宗教者とも連繋を取りながら,この問題の啓発にも引き続き取り組み,復興事業を支えて参りたいと存じます。
信教の自由や政教分離の問題は,日宗連がこれまで最も重要視してきたテーマです。この他にも,生命倫理や教育の問題など,取り組まなければならない課題は多岐にわたります。その一つ一つの問題について日宗連としてどう対応していくのか,五団体の間で真摯に議論を重ね,社会の要請にこたえつつ,宗教文化の振興を図って参りたいと思います。
今後とも,公益財団法人日本宗教連盟の活動に御理解御協力をいただきますようお願い申し上げます。

公益財団法人日本宗教連盟 事務局長
日宗連を構成する団体の一つである宗教法人神社本庁の渉外部長。神社本庁では,国際課長,秘書課長,本宗奉賛課長等を務め,関係団体である日本文化興隆財団(当時の名称は国民精神研修財団)出向中には,公益法人制度改革による一般財団法人化の事務に従事す。
日宗連では,平成23年7月から幹事として参加。平成25年6月20日開催の理事会において,田中恆清神社本庁総長が理事長に選定されたことにより,事務局長に就任す。
公益財団法人日本宗教連盟

