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文化庁月報
平成25年11月号(No.542)

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文化庁ニュース

「富士山」の世界遺産一覧表への記載決定及びその後の動き

文化庁文化財部記念物課世界文化遺産室

 カンボジアのプノンペンで開催された第37回ユネスコ世界遺産委員会において,我が国が世界文化遺産に推薦していた「富士山」について審議が行われ,6月22日に,世界遺産一覧表に「記載」することが決定されました。また,記載する名称は,「Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration (富士山-信仰の対象と芸術の源泉)」に決定され,審議最終日の6月26日に世界遺産一覧表へ正式に記載されました。
 決定に際し,世界遺産委員会から,平成28年2月1日までに保全状況の報告書を作成するよう勧告があり,この報告書には来訪者対応や情報提供,登山道の保全方法について新たに策定する計画と,既存の管理計画の全体的な改定に関する進展状況を含めて記載することとなっています。

世界遺産委員会の様子

世界遺産委員会の様子

世界遺産一覧表に記載された観点

 「富士山」について,「信仰の対象」と「芸術の源泉」という観点から世界遺産一覧表に記載されました。

<信仰の対象>
 独立成層火山としての荘厳な富士山の形姿は,間欠的に繰り返す火山活動により形成されたものであり,古代から今日に至るまで山岳信仰の伝統を鼓舞し続けてきました。頂上への登拝と山ろくの霊地への巡礼を通じて,巡礼者はそこを居所とする神仏の霊能を我が身に吹き込むことを願いました。これらの宗教的関連性は,その完全な形姿(なりかたち)としての展望を描いた無数の芸術作品を生み出すきっかけとなった富士山への深い憧憬(しょうけい)(<,その美しさへの感謝,自然環境との共生を重視する伝統と結び付きました。一群の構成資産は,富士山とそのほとんど完全な形姿に対する崇敬を基軸とする生きた文化的伝統の類いまれなる証拠となっています。

<芸術の源泉>
 湖沼及び海から立ち上がる独立成層火山としての富士山の図像は,古来,詩・散文その他の芸術作品にとって,創造的感性の源泉であり続けました。とりわけ19世紀初期の葛飾北斎及び歌川広重により浮世絵に描かれた富士山の図像は,西洋の芸術の発展に顕著な影響をもたらし,今なお高く評価されている富士山の荘厳な形姿を世界中に知らしめました。

「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産

 以下の25資産で構成されています。文化財保護法に基づく指定の類型を( )に示しています。
 構成資産の位置図(PDF)PDFファイルが別ウィンドウで開きます

  1. 1 富士山域
    1. 1-1 山頂の信仰遺跡群(史跡・特別名勝)
    2. 1-2 大宮・村山口登山道(おおみや・むらやまぐちとざんどう)現富士宮口登山道(げんふじのみやぐちとざんどう))(史跡・特別名勝)
    3. 1-3 須山口登山道(すやまぐちとざんどう)(現御殿場口登山道)(史跡・特別名勝)
    4. 1-4 須走口登山道(すばしりぐちとざんどう)(史跡・特別名勝)
    5. 1-5 吉田口登山道(史跡・特別名勝)
    6. 1-6 北口本宮冨士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)(史跡・重要文化財)
    7. 1-7 西湖(さいこ)(名勝)
    8. 1-8 精進湖(しょうじこ)(名勝)
    9. 1-9 本栖湖(もとすこ)(名勝)
  2. 2 富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)(史跡・需要文化財・特別天然記念物)
  3. 3 山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)(史跡)
  4. 4 村山浅間神社(むらやませんげんじんじゃ)(史跡)
  5. 5 須山浅間神社(すやませんげんじんじゃ)(史跡)
  6. 6 冨士浅間神社(ふじせんげんじんじゃ)走浅間神社(すばしりせんげんじんじゃ))(史跡)
  7. 7 河口浅間神社(かわぐちあさまじんじゃ)(史跡)
  8. 8 冨士御室浅間神社(ふじおむろせんげんじんじゃ)(史跡)
  9. 9 御師住宅(おしじゅうたく)旧外川家住宅(きゅうとがわけじゅうたく))(重要文化財)
  10. 10 御師住宅(小佐野家住宅(おさのけじゅうたく))(重要文化財)
  11. 11 山中湖(名勝)
  12. 12 河口湖(名勝)
  13. 13 忍野八海(おしのはっかい)出口池(でぐちいけ))(天然記念物)
  14. 14 忍野八海(お釜池(おかまいけ))(天然記念物)
  15. 15 忍野八海(底抜池(そこなしいけ))(天然記念物)
  16. 16 忍野八海(銚子池(ちょうしいけ))(天然記念物)
  17. 17 忍野八海(湧池(わくいけ))(天然記念物)
  18. 18 忍野八海(濁池(にごりいけ))(天然記念物)
  19. 19 忍野八海(鏡池(かがみいけ))(天然記念物)
  20. 20 忍野八海(菖蒲池(しょうぶいけ))(天然記念物)
  21. 21 船津胎内樹型(ふなつたいないじゅけい)(天然記念物)
  22. 22 吉田胎内樹型(天然記念物)
  23. 23 人穴富士講遺跡(ひとあなふじこういせき)(史跡)
  24. 24 白糸ノ滝(名勝・天然記念物)
  25. 25 三保松原(みほのまつばら)(名勝)

世界遺産一覧表記載後の主な動き

○「富士山世界遺産登録記念レセプション」の開催
 7月12日,「富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議(主催:山梨県及び静岡県)」及び認定NPO法人「富士山を世界遺産にする国民会議」の共催により,東京の帝国ホテル「富士の間」において「富士山世界遺産登録記念レセプション」が開催されました。国民会議の会長である中曽根元内閣総理大臣をはじめ,両県選出の国会議員,市町村長,市町村議会議長,国や自治体の行政関係者,世界遺産登録を推進した団体関係者など約850名が出席し,富士山の世界遺産登録を祝福しました。

富士山世界遺産登録記念レセプションの様子

富士山世界遺産登録記念レセプションの様子

○富士山における利用者負担の検討
 富士山世界文化遺産協議会(主催:山梨・静岡両県)では,富士山の環境保全と登山者の安全確保を図るため必要な財源の一部を登山者に求める利用者負担制度を検討し,来年の夏山期間の本格導入を目指しています。7月25日から8月3日の10日間,検討に必要なデータの収集,課題等を整理するため,社会実験として試行(1人1,000円を基本とし,登山者に任意で協力を求める)及びアンケートを実施し,約3,413万円が集まりました。

協力金呼びかけの様子

協力金呼び掛けの様子

○「三保松原白砂青松保全技術会議」の開催
 「三保松原」は,「富士山」の構成資産として世界文化遺産に登録されましたが,世界遺産委員会に先立ちイコモスから,消波堤などが景観上望ましくないなどの理由により除外勧告を受けたため,世界遺産にふさわしい景観改善に取り組む必要があります。静岡県は,9月10日に第1回「三保松原白砂青松保全技術会議」を開催し,「防護,景観に関する現状と課題」,「景観改善方法」について審議しました。今後,同会議で出された意見を基に世界遺産構成資産の三保松原にふさわしい海岸保全と景観改善の両立について,景観改善計画の立案に向け検討が進められる予定です。また,同会議の助言や提案を踏まえ,清水海岸侵食対策検討委員会(主催:静岡県)において,詳細な検討と地元意見の反映・調整などを行い,平成25年度中を目途に対策工法案が決定されます。

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