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文化庁月報
平成25年11月号(No.542)

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連載 「鑑 文化芸術へのいざない」

京都国立近代美術館
皇室の名品―近代日本美術の粋
別ウィンドウが開きます
皇室が護ってきた日本画,洋画,彫刻,工芸が一堂に

学芸課主任研究員 小倉実子

はじめに

 京都国立近代美術館のみで開催される本展は,代々の皇室に引き継がれてきた美術品群が国に寄贈されたことを受け,平成5(1993)年に開館した宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する美術工芸品の中から,よりすぐった近代以降の作品約180点を紹介するものです。明治・大正・昭和と大切に受け継がれてきた,正に近代日本美術の「(すい)」と言える作品群を,皇室のコレクションに加わった経緯を基に六つの章に分け,時代に沿って展示いたします。

宮殿装飾

二代川島甚兵衞 《綴錦「百花百鳥之図」壁掛》より 《桐牡丹に孔雀図》明治38(1905)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵

二代川島甚兵衞 《綴錦(つづれにしき)「百花百鳥之図」壁掛》より《桐牡丹錦(きりぼたんにしき)孔雀(くじゃく)図 明治38(1905)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※前期のみの展示

 第1章は,明治21(1888)年に完成し,残念ながら昭和20(1945)年に焼失してしまった先代の皇居である,明治宮殿に焦点を当てます。この明治宮殿に実際に飾られていた作品を展示するとともに,宮殿のモノクロ写真や造営時の資料を基として,部分的ではありますが壁クロスや天井の再現を試みます。和風建築でありながら家具や装飾には西洋的な要素が多く取り込まれ,和風イメージと洋風イメージが見事なハーモニーを作り出していたという明治宮殿に思いを()せてみてください。

明治期の美術工芸と博覧会

並河靖之《七宝四季花鳥図花瓶》 明治32(1899)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵

並河靖之《七宝四季花鳥図花瓶》
明治32(1899)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵

 第2章は,現在の人間国宝(無形文化財保持者)制度の(いしずえ)となった帝室技芸員制度と,特に皇室が力を入れ,御下命によって帝室技芸員達に出品作を制作させた,明治33年パリで開催の万国博覧会に焦点を当てます。帝室技芸員によるパリ万博出品作や明治の三大作等,江戸時代以来伝えられてきた,卓越した工芸技術を駆使して細部まで極められた,明治時代工芸の超絶技巧を御堪能ください。

皇室と官展

上村松園《雪月花》より《雪》昭和12(1937)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示

上村松園《雪月花》より《雪》
昭和12(1937)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵
※後期のみ展示

 第3章は,明治40年に開設された,我が国初の官製美術展覧会である文部省美術展覧会(文展)やその後継である帝国美術院展覧会(帝展)と,皇室の関係に焦点を当てます。文展が始まると,時代の風潮とあいまって個性的な作品が次々と発表され,美術界は百花(ひゃっか)繚乱(りょうらん)の相を呈し,世間で注目を浴びるようになりました。官展で御買上げとなった作品は,各作家達の代表作であるとともに大正,昭和の美術界を代表する作品となっており,画集などでよく目にするものが多く含まれていますので,その実物をお楽しみください。

慶祝の美

 第4章は,前章までで主に紹介してきた「買上」というコレクションの形とは別の,もう一本の柱とも言うべき「献上」に焦点を当てます。明治時代半ば以降,大礼(即位の礼),立太子礼,成年式,御成婚など,皇室の慶祝行事に対するあり方が調うに従い,そのための献上品として,皇族の方々や官公庁,地方公共団体,民間等各方面からの依頼により数多くの作品が制作されました。中でも,複数のジャンルの,当時一流の作家たちが総力を結集して制作した作品や皇室ゆかりの地である京都に関係のある献上品に御注目ください。

江馬長閑(文台),神坂祐吉(硯箱),神坂雪佳(図案)《歌蒔絵文台・硯箱》大正8(1919)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示
江馬長閑(文台),神坂祐吉(硯箱),神坂雪佳(図案)《歌蒔絵文台・硯箱》大正8(1919)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示

江馬長閑(文台),神坂祐吉(硯箱(すずりばこ)),神坂雪佳(図案)《歌蒔絵文台(うたまきえぶんだい)硯箱(すずりばこ)
大正8(1919)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示

皇室と日本美術院

 第5章は,在野の美術研究団体でありながら,中心人物の大観が尊王の気風が強い水戸藩出身ということもあって,皇室への崇敬の念が厚く,大正11(1922)年再興第9回院展への皇太子行啓に際しての画帖(がじょう)献上以来,現在に至るまで折々に作品を献上し続けている日本美術院と皇室の関係に焦点を当てます。最初の献上画帖(がじょう)をはじめ,大正15年に明治宮殿の豊明殿で使用するために制作の御用命を受けて描いた《朝陽霊峰》等,大観の御下命あるいは献上作品を御覧ください。

横山大観《朝陽霊峰》 昭和2(1927)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示
横山大観《朝陽霊峰》 昭和2(1927)年 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示

横山大観《朝陽霊峰》 昭和2(1927)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵
※後期のみ展示

御肖像と大礼

 第6章は,皇室の美術品が儀式でどのように使われているのか,と,天皇を中心とする近代日本の国家体制の確立に寄与した御肖像に焦点を当てます。天皇陛下御即位の折に開かれる宴・「大饗(おおあえ)の儀」。大正度,昭和度の「大饗(おおあえ)の儀」で実際に使用された軟障(巨大な幔幕(まんまく)),悠紀・主基(ゆき・すき)地方風俗歌屏風等を並べ,その厳かな雰囲気を味わっていただきます。また,御肖像(いずれも御物)には,一般に公開されることのなかった作品が多く含まれており,明治初期洋画の今後の研究の進展にも大きく役立つものと期待されます。

竹内栖鳳《大正度主基地方風俗歌屏風》 大正4(1915)年 ※後期のみ展示
竹内栖鳳《大正度主基地方風俗歌屏風》 大正4(1915)年 ※後期のみ展示

竹内栖鳳(たけうちせいほう)《大正度主基地方風俗歌屏風》 大正4(1915)年
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 ※後期のみ展示

みなさまへ

 天皇陛下が傘寿(さんじゅ)を迎えられるこの佳き年に,開館20周年を迎えた宮内庁三の丸尚蔵館と開館50周年を迎えた京都国立近代美術館が,各館の記念事業の一つとして開催する本展は,皇室が護り育んでこられた近代日本美術の粋を体系的に広く御観覧いただける又とない機会となるでしょう。日本近代美術史に燦然(さんぜん)と輝く至高の作品群が初めて一堂に展覧される「皇室の名品−近代美術の粋」展をどうぞお見逃しなく。

 ※本展には繊細な作品が多く出品されるため,前後期で大幅な展示替えをいたします。

京都国立近代美術館

〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町

問合せ
075-761-9900(テレホンサービス)
交通
JR〜バスを御利用の方
■JR・近鉄京都駅前(A1のりば)から
市バス5番 岩倉行
「京都会館美術館前」下車
■JR・近鉄京都駅前(D1のりば)から
市バス100番(急行)銀閣寺行
「京都会館美術館前」下車
阪急電鉄・京阪電鉄〜バスを御利用の方
■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪三条駅から
市バス5番 岩倉行
「京都会館美術館前」下車
■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪祇園四条駅から
市バス46番 平安神宮行
「京都会館美術館前」下車
市バス他系統御利用の方
「京都会館美術館前」下車すぐ
「東山二条」下車徒歩約10分
地下鉄御利用の方
地下鉄東西線「東山」駅下車徒歩約10分
開館時間
午前9:30〜午後5:00(入館は閉館30分前まで)
休館日
毎週月曜日(ただし12月23日(月・祝),1月13日(月・祝)は開館)
及び12月10日(火),12月24日(火),12月30日(月)〜1月2日(木)
観覧料
当日 一般1,300円, 大学生900円, 高校生400円
前売り(販売期間:9月2日〜11月8日) 一般1,100円, 大学生800円, 高校生300円
団体(20名以上) 一般900円, 大学生 600円, 高校生200円
お得なペアチケット(2回券)(販売期間:9月2日〜11月8日) 2,000円
※中学生以下,心身に障害のある方と付添人1名は無料(要証明)
ホームページ
皇室の名品展ホームページ
http://k-meihin.exhn.jp/別ウィンドウが開きます
京都国立近代美術館ホームページ
http://www.momak.go.jp/別ウィンドウが開きます

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