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文化庁月報
平成25年11月号(No.542)

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連載 「祭り歳時記 伝承を支える人々」

神原八幡宮の取り追う祭

伊万里市歴史民俗資料館副館長 荒谷義樹
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財 「神原八幡宮の取り追う祭」

指定・登録年月日:平成21年3月11日
所在都道府県:佐賀県

 神原八幡宮の取り追う祭は,南北朝時代の故事にちなむという伝承を持ち,遅くとも江戸時代から伊万里市二里町大里地区に伝わる行事です。地区の男たちが二手に分かれ,激しい松明合戦の中で御供(ごくう)さんという神への供え物を奪い合う収穫祭です。

松明合戦を伴う収穫祭

激しい松明合戦

激しい松明合戦

 神原八幡宮の取り追う祭は,毎年12月最初の卯の日の前夜に行います。伊万里市では稲の実りに感謝する収穫祭を旧暦11月の霜月に行うことが多く,この祭も収穫祭の一種です。
 祭を取り仕切るのは,1年交代の当番班です。当番班にある会所(えいしょ)という家では,新米を神社のそばの神聖な水で調理し,息がかからないように(さかき)の葉をくわえた男たちが丸く握って833個の御供さんを作ります。その後,御供(ごくう)さんを,テボという竹製の容器に納め,神原八幡宮へ運びます。
 神原八幡宮の境内では,大里地区の男たちが攻め手と守り手に分かれ,御供(ごくう)さんの奪い合いをします。このときの松明合戦が祭の見せ場です。ひとしきり激しい松明合戦の後,御供(ごくう)を入れたテボと呼ばれる竹籠の奪い合いがあり,攻め手がテボの蓋を開けます。中の御供(ごくう)さんが,境内に集まった氏子や見物者に配られて祭は終わります。

「取り追う」の意味

テボの奪い合い

テボの奪い合い

 この祭の核心は,御供(ごくう)さんの入ったテボを奪い合うことにあります。この御供(ごくう)さんの入ったテボを奪い合う「取り追う」が祭の名前の由来だと思われます。
 テボを奪い合うときにテボを激しく揺すります。これは魂振りの呪術です。稲は(もみ)を脱いで米になるので,再生すると考えられ神聖視されました。中でも新米は,最も強い再生力に満ちていると考えられました。新米で作った御供さんは再生力に満ちた(こく)(れい)の象徴です。激しく揺することで,穀霊の再生力が増します。それを氏子が分け合って食べることで,氏子も長寿や健康になるという(まじな)いであったと思われます。

記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択を受けて

伝承に燃える大里地区の若者たち

伝承に燃える大里地区の若者たち

 類例の少ない地域的特色の豊かな祭りとして注目され,我が国の民間信仰や祭りを考える上で貴重なので,平成21年3月11日に記録作成の等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択されました。
 大里地区では国選択を励みに前にも増して祭の伝承意欲が高まっています。

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