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文化庁月報
平成25年12月号(No.543)
連載 「いきいきミュージアム 〜エデュケーションの視点から〜」
みんなで発見!美術館の魅力を見直すプログラム
目次
皆さんは美術館へ行ったら何を見ますか?展覧会,美術作品…もちろんそうですよね。でも,せっかく来たのだから,美術館という
美術館へ行ったら何を見る?
どの美術館にも共通の悩みでしょうか?美術館に来る人の多くが,特別展さえ見られれば「用は済んだ,さあ帰ろう」とばかりに足早に去ってしまいます。そんな光景を「美術館には面白いものがほかにもたくさんあるのだから,ゆっくり過ごしてくれればいいのに」と思いながら眺めていました。常設展を見て欲しいのはもちろんですが,例えば美術館に置かれているイス。各所にたくさんの種類のデザイナーズチェアが置かれ,誰でも座ることができます。それに美術館の建物。名古屋出身の建築家・黒川紀章氏による建築は,よく見ると外側にも内側にも不思議な造形をいくつも見つけることができます。所蔵作品とは異なるとはいえ,それらも館の財産に違いないのに,あるのが当たり前と思い込んでちゃんと紹介してこなかったのはもったいない!改めてその良さを来館者に知ってもらおうと今年の夏休みプログラムのテーマに取り上げ,大人も参加できるよう対象年齢を広げました。
“わたし”の目で見る/“よく見る”ために描く
美術館の図書室のイスには,どんな特徴があるかな?
スケッチしているときの表情は真剣そのもの。床にだって座っちゃいます。
ワークショップ<イスのつうしんぼ>では,参加者全員でイスの形や色,材質などをじっくり観察した後でイスに座り,その違いを確かめ合いました。参加者は自分の体格に合うイス,自分にとって座り心地の良いイスを意識して探すことで一つ一つの違いが
もう一つのワークショップ<スケッチではっけん>は,1日館内を探検して気になったり面白いと感じたりしたモノや景色をひたすらスケッチブックに描き留めるプログラムです。学校では“見て描く”課題に取り組む機会が減っているようですが,講師の具体的な説明や柔軟な働きかけによって,参加者は経験の有無や絵の上手・下手を気にすることなく,純粋に発見する→
館の魅力を見直す機会を
みんなのスケッチ。どこを描いたかは,美術館で確かめて!
実は,自館の魅力を分析したり見直したりする機会はほとんどなく,勤務している学芸員といえども正しく把握しているとは言い難いものです。大して特徴と思わないものがほかから見ると際立った魅力に映ることもあります。今回のイスや美術館の建物は開館した25年前からあり,全く目新しいものではありませんが,来館者とともに改めて見て,その良さを考えることで興味深いプログラムになりました。既に価値の定まっているものを紹介するだけでなく,ふだん気に留めないものや多くの人が存在に気付いていないものに目を向けさせること,その価値を一緒に考える機会を提供することも美術館学芸員の仕事の一つと捉え,これからも活動を続けていきたいと思っています。
名古屋市美術館
〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄二丁目17-25
- 問合せ
- 052-212-0001
- 開館時間
- 9:30〜17:00(入場は閉館30分前まで)
祝日でない金曜日は20:00閉館 - 休館日
- 月曜日(祝日の場合は直後の平日に休館)
- 常設展観覧料
- 一般300円,高大生200円,小学生・中学生無料
※名古屋市内在住65歳以上の方は100円
※特別展はその都度定める - ホームページ
- http://www.art-museum.city.nagoya.jp


