HOME > 文化庁月報 > 連載 「鑑 文化芸術へのいざない」
文化庁月報
平成26年1月号(No.544)
連載 「鑑 文化芸術へのいざない」
東京国立近代美術館工芸館
日本伝統工芸展60回記念 工芸からKOGEIへ
陶芸,染織,漆芸,金工,木竹工,人形,諸工芸の現役作家97名の代表作が一堂に
諸工芸・ガラス 石田知史《パート・ド・ヴェール線刻文鉢「風をきく」》2003年
(第50回日本伝統工芸展,2003年,朝日新聞社賞)
東京国立近代美術館工芸館で開催される本展は,今秋,日本伝統工芸展が60回目を迎えたことにちなみ,現役作家の代表作を一堂に会することで,伝統工芸の「今」を改めて概観し,そして,伝統工芸の「未来」を見据えてみたいと企画しました。展示作品は,日本伝統工芸展における近年の受賞作や入選作がほとんどで,正に伝統工芸の「旬」を
金工 村上浩堂《
(第58回日本伝統工芸展,2011年)
日本伝統工芸展とは
日本伝統工芸展は昭和29年にスタートしました。その第1回展は国の文化財保護委員会が選定した「助成の措置を講ずべき無形文化財」の紹介を目的として,「第一回無形文化財・日本伝統工芸展」の名称で,同委員会の主催で開催されました。現在の日本伝統工芸展は公益社団法人日本工芸会が主催し,陶芸・染織・漆芸・金工・木竹工・人形・諸工芸(ガラス・七宝・
文化財保護法と重要無形文化財保持者(人間国宝)
染織 森口邦彦《友禅訪問着「位相開花文様」》2010年
(第57回日本伝統工芸展,2010年)
文化財という言葉が広く使われるようになったのは,昭和25年に制定された「文化財保護法」からだと言われています。その文化財保護法は,建造物や絵画,工芸品などの目に見える有形の「物」(有形文化財)だけでなく,工芸技術や芸能など,特定の個人や団体が伝承し体得している目に見えない無形の「技」を「無形文化財」と定義し,その保存と活用を図ることとしました。それは世界に類のない画期的な制度であるとともに,今日では日本のみならず,多くの国々がその存在意義を評価しています。
その後,昭和29年に「文化財保護法」が改正されると,無形文化財の中で重要な「技」を重要無形文化財として指定し,その「技」を高度に体得している人を重要無形文化財の「保持者」(人間国宝)として認定する制度が確立されました。これにより,芸術上,歴史上特に価値の高い伝統工芸の技の存在が,作品を通して具体的に示されることになりました。
そして同じ年に第1回展が開催された日本伝統工芸展は,こうした伝統に基づく卓越した技術と洗練されたスタイルによって,日本の工芸の素晴らしさを人々に伝え,それと同時に,多くの優れた作家を輩出するという,大きな役割を果たしてきたといえましょう。
陶芸 神農巌《
(第7回パラミタ陶芸大賞展,2012年,大賞)
工芸から「Kogei」へ
今日,先達たちの努力によって独自の発展を遂げたといっても過言ではない日本の「工芸」は,技術や品質の高さ,そして表現の幅の広さが世界に類のないほどに優れたものとして認識されています。それは「工芸」を英語で訳す際,単純に「Craft」という言葉に置き換えることができないくらいに,優れて芸術性に富んでいるからにほかなりません。そうであるならば,現代の日本の「工芸」は,「Craft」という既成の言葉ではなく,あえて「Kogei」として世界に発信することで,その素晴らしさが素直に伝わるのではと考えます。例えば,「漆」は英語で「Lacquer」と訳されます。しかしその「Lacquer」を日本語に訳すと元の「漆」には戻りません。この事例でもわかるように,独自の発展を遂げた日本の「工芸」は,「Kogei」として紹介することがふさわしく,正に今,世界に発信するチャンスを得ようとしています。
日本伝統工芸展のカタログには,「伝統工芸は,単に古いものを模倣し,従来の技法を墨守することではありません。伝統こそ工芸の基礎になるもので,これをしっかりと把握し,父祖から受けついだ優れた技術を一層錬磨するとともに,今日の生活に即した新しいものを築き上げることが,我々に課せられた責務であると信じます。(抜粋)」とあります。
日本の工芸は,制作者が素材や技法と向き合って,それらに根ざして制作することで発展を遂げてきました。それは単なる伝承ではなく,時代の流れや制作者の考えが強く反映された革新や創造の連続があったからこその展開といえましょう。イメージやアイデアだけでは生み出すことができず,そこには伝統の技が不可欠であり,制作者はそれらを一体とすることで優れた作品を生み出してきたのです。
本展では,そうした意志を踏まえつつ,新たな発想と深い思考を見せる現役作家97名の代表作によって,伝統工芸の「今」を紹介するとともに,未来の伝統工芸の姿をも考えてみたいと思います。
東京国立近代美術館工芸館
〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1
- 問合せ
- 03-5777-8600 ハローダイヤル
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」徒歩8分/東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」徒歩12分
- 開館時間
- 10:00〜17:00(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(12月23日・1月13日は開館,翌日休館),年末年始(12月28日〜1月1日)
- 観覧料
- 一般500円, 大学生300円
※18歳未満及び高校生以下,障害者手帳等をお持ちの方とその付添者1名は無料
※それぞれ入館の際,年齢の分かるもの,障害者手帳等を御提示ください。 - ホームページ
-
http://www.momat.go.jp


