HOME > 文化庁月報 > 連載 「文化交流使の活動報告」

文化庁月報
平成26年1月号(No.544)

文化庁月報トップへ

連載 「文化交流使の活動報告」

H25年度文化庁文化交流使活動報告

明和電気 土佐信道

 平成25年度文化庁文化交流使として,アーティストの土佐(とさ)信道(のぶみち)さん(アートユニット「明和電機」社長)は,2013年6月〜7月にかけてフランスに滞在しました。
 フランスでは,スペイン人の世界的な振り付け家・ブランカ・リーさんやフランス人のダンサー,エンジニア,スタッフとともに,ダンス公演「ROBOT!」の共同制作を行いました。約1か月の舞台制作・リハーサルを経て,7月4日にモンペリエ・ダンスフェスティバルで行われた初演は,スタンディング・オベーションで会場が沸き上がったそうです。
 土佐信道さんのフランス滞在記は,「明和電機ジャーナル 特集:パリの明和電機」に詳しく記述されておりますが,文化庁月報においては,「明和電機ジャーナル」の中から,「ROBOT!」公演の翌日に,土佐信道さんが御出演された「ジャパンフェスティバル2013」について寄稿された文章を転載させていただきます。

4日間で23万人を動員したメガイベント

 ジャパンエキスポはJTS GROUP COMPANYが主催する,完全に民間レベルで開催されているイベント。日本のアニメや漫画,文化などをまとめて紹介しつつ,コミックマーケットのようにたくさんの個人出展者が同人誌やコスプレ,フィギュアなどを販売。また,日本からもたくさんのミュージシャンや漫画家,企業が来場。昨年はきゃりーぱみゅぱみゅが出演して話題になった。2013年は「北斗の拳」の漫画家・原哲夫や,マクロスの監督の河森正治,アイドルのでんぱ組.inc,モデルの益若つばさ,女優の夏菜などが会場に。明和電機もその一組として,ライブと講演会を行った。

記者会見とラジオ出演

 フランスに着いた6月4日,ジャパンエキスポのプレイベントとしてギメ美術館で開催されたプレス発表会に出演。司会は副代表のトマ・シルデさん。日本から明和電機の他にモデルのUnaさん。在フランス大使館の津川貴久さんも出席し,日本政府も無視できないスケールのイベントになっていることがうかがえた。

 6月26日にはフランス国営放送の「フランス・アンテール」に副代表のトマ・シルデさんと出演。トマさんのジャパンエキスポに対する熱いトークの合間にオタマトーンの演奏。出演の後は近くのバーでビール。トマさんが2000年に最初にジャパンエキスポの活動を始めたときは18歳だったそうで,その熱意に驚き,こういう方を日本は大事にしないとなあと感じた。

人,人,人だらけ

ジャパンエキスポ

ジャパンエキスポ

 メディアやネットのニュースなどでは,ジャパンエキスポのことは知っていたが,実際に行ってみるとその印象とは大違い。まずはとにかく人,人,人。一日では見切れない大きな会場が,まるで満員列車のようにぎゅうぎゅうに。会場にいる半分ほどの人がアニメや漫画のコスプレをしていた。人気だったのは「NARUTO」や「ONE PIECE」で,日本ではメジャーな「エヴァンゲリオン」のコスプレの方は余り見かけなかった。「()え」系のコスプレも少なく,やはり大人の色気の国フランス,という気がした。(日本が異常なのかも)。

 オタクはどこへ行っても同じだなあ,と感じるくらい,空気感や匂い(!)が日本と一緒。日本刀がよく売れていて,修学旅行生みたいだなと思ったが,どうやらアニメや漫画に登場する日本カルチャーのシンボルだからのようです。会場では剣道や弓道のデモンストレーションも行われており,そうした古い伝統文化とアニメ・漫画の最新の文化が同じレベルで扱われているのが興味深かった。また「可愛い」をテーマに,原宿系ファッションやお化粧方法などを紹介するブースや女の子たちもたくさんいて,日本ではありえない「アキバ系と原宿系」が同次元にいるのもこれまた興味深かった。とにかくこんなに日本大好きな人たちがフランスにいることに驚きでした。

17,000人のメインステージですべる

 明和電機の出番は二つ。17,000人の「メインステージ」と,1,000人の「ジャパンエキスポステージ」でした。7月6日の早朝,日本からの明和電機スタッフ(通称:工員さん)と合流し楽器のセッティング。ブランカさんで使っていた楽器が最新版の新品だったので,久しぶりに見た使いこんだ旧楽器のボロボロさに驚く。

 17,000人のメインステージに移動し,リハーサル。さすがに会場は広い。この広い会場で,「パチモク」と「オタマトーン」だけで演奏。何やら奥田民夫・弾き語りコンサートin広島市民球場みたいだなと,気が引き締まる。「せっかくでっかいステージなので,会場中が斉唱したら面白いだろうなあ」と思い付き,定番の,オタマトーンによる「君をのせて」の演奏のときに,会場に「一緒に歌おう!」とあおってみようと決意。工員さんと打合せしサビで突然社長が歌いだすネタを練習。

ジャパンエキスポ

ジャパンエキスポ


ジャパンエキスポ

ジャパンエキスポ

 14時15分いよいよ本番。長い花道を通って17,000人の観客の前に出てまずはパチモクを演奏。そこそこウケる。続いてオタマトーンの説明。これもウケる。いけるぞと,オタマトーンを演奏し,突然サビで社長が歌いだす。同じフレーズを2回歌い,さあ客席にマイクを向け,3回目はみなさんで!というアピールをするが,何と客席は沈黙。「やってもうた」と焦るが後の祭り。このままそのネタを続けるしかないと,静かな会場に向けてあおるための手を振り続ける。エンディングで再びオタマトーンの演奏に戻り,パフォーマンス終了。それなりに会場から拍手は頂いたが,17,000人の前で明らかに滑った。控室に戻って工員さんと「うひゃああ!やってもうたあ!」と頭を抱えるが,ここまで滑るとかえってすがすがしかった。(その後,YouTubeでその時の模様を見たが,実はそこそこウケていたことが判明。)

 16時30分からはジャパンエキスポステージで会社説明会とライブ。こちらは明和電機の活動を映像と拙い英語で紹介。また明和電機の小規模なライブを披露。がっつりとウケました。観客席にはマクロスの監督の河森正治氏もいらして,後で「明和電機さんは自然に機械が故障して羨ましい。アニメで機械を故障させようと思ったら,全て計算してイメージして描かなくちゃいけない」と言われました。バーチャルなアニメとリアルな機械との根源的な違いを指摘されたようで,ハッとした。

お盆がひっくり返ったよう

 ジャパンエキスポでは,「アキバ系と原宿系」や「ファンタジーの剣(ソード)と剣道」が同次元で並んでいました。これは日本では決してありえないこと。秋葉のヲタクと渋谷のギャルはお互いをバカにしているし,剣道を習っている人はベルセルクの剣を振り回すことはない。
 文化の輸出で面白いのは,幾ら日本でカテゴライズされたものを綺麗(きれい)にお盆に並べて海外に運んでも,外国に着いた途端,お盆はバシャーンとひっくりかえって,みんなごちゃ混ぜになってしまうことだ。それぞれの国の人たちが「日本ってこんな感じだったよね」と,自分の感覚でお盆に並べ替えてしまう。そこに立ち上がってくるのは,「架空の国 日本」。郷ひろみで言えば「エキゾチック・ジャパン」。
 ジャパンエキスポの二日間はそんなむせかえるようなジャパンだらけで,お腹一杯になったが,世界が日本をどう見ているか?という一面が分かり,とても勉強になった。来年は是非「明和電機」のブースを出して,商品を売ってみたいと思った。

土佐 信道

土佐(とさ)信道(のぶみち)(アートユニット「明和(めいわ)電機(でんき)」社長) 略歴

【出生地】 兵庫県赤穂市
【生年月日】 1967年4月14日
【学 歴】 筑波大学芸術研究科修士課程

 自身がプロデュ−スする中小電機メーカーを模した芸術ユニット「明和電機」として活動。作品制作のほか,おもちゃの開発,舞台パフォーマンス,タレント活動も行う。
(株)よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。

【 略 歴 】
1993 土佐正道(兄,社長)と土佐信道(弟,副社長)からなる明和電機結成。
1993 ソニーミュージックエンタテインメント主催「第2回アートアーティストオーディション」大賞受賞。1994年〜1998年まで専属芸術家となる。
1996 アルバム「提供 明和電機」でCDデビュー。
1998 吉本興業に移籍。
2000 グッドデザイン賞を人間として初めて受賞(新領域デザイン部門)。
2000 第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアート・インタラクティブ部門優秀賞受賞。
2001 土佐正道が「定年退職」。土佐信道が「代表取締役社長」に昇格。
2003 アルス・エレクトロニカ インタラクティブアート部門準グランプリ受賞。
2004 1年間の活動を総括する「事業報告ショー」開始。(2008年まで年1回定期開催)
2004 「ナンセンス=マシーンズ展」広島・東京で開催。
2006 「ナンセンス=マシーンズ展」鹿児島県霧島アートの森で開催。
2007 「ナンセンス=マシーンズ展」岡山県で開催。「バカロボ2007」開催。
2008 「ナンセン・オモチャ研究所」「バカロボ2008」開催。
2009 「ナンセンス・マシーンズ展2009」高知県立美術館で開催。
2010 オタマトーンが「日本おもちゃ大賞2010 ハイターゲットトイ部門」大賞受賞
2011 「TRANSFORMER」展 Le360(フランス)にて全製品を展示

【 作 品 】
 魚器(なき)シリーズ(自分とは何か?というテーマを魚をモチーフに製品化したシリーズ),ツクバシリーズ(アナログな動作を特徴とする電動楽器シリーズ),EDLEWEISSシリーズ(女性をモチーフにしたポエティックな製品シリーズ),ボイスメカニクス(様々な声を機械化したシリーズ)

【 著 書 】
1997 魚器(なき)図鑑 NTT出版
2004 明和電機 ナンセンス=マシーンズ NTT出版
2006 明和電機の広告デザイン(中村至男・土佐信道 著) NTT出版
2007 すーびょーるーみゅー(文・谷川俊太郎,絵・土佐信道) クレヨンハウス

【 公式サイト 】
http://www.maywadenki.com別ウィンドウが開きます

トップページへ

ページトップへ