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文化庁月報
平成26年1月号(No.544)
連載 「伝建地区を見守る人々 伝建歳時記」
町並み保存と住み良い環境の両立を目指して
東近江市五個荘 金堂 伝統的建造物群保存地区
五個荘金堂伝統的建造物群保存地区全景
五個荘金堂は,
近江商人の町並み
五個荘金堂に近江商人の大規模な居宅が集まっていることは早くから注目されており,昭和50年代の全国的な町並み保存運動の高まりを受けて,昭和56年度に伝統的建造物群保存対策調査が行われました。
近江商人は京都,大阪,東京をはじめ全国の主要都市や,遠く朝鮮半島にも店を構え活躍しましたが,居宅はあくまでも出身地に置き,妻子が本宅を守り,地域の祭礼に参加し,社寺に寄進するなど,故郷に貢献していました。商人の本宅は広大な敷地に主屋を中心として離れ座敷や土蔵,納屋などの附属屋が建ち並び,周囲には庭園が配されています。主屋の建築年代は,五個荘の商人が活躍した明治・大正時代のものが多く,木造2階建てで,農家の整形四間取りを基本とし,これに更に居室を加えた形態になっています。離れ座敷は数寄屋風の意匠で茶室などを設けるものもあります。土蔵の外壁には
農村集落の景観
五個荘金堂の町並みを構成するのは近江商人の大規模な居宅だけでなく,
湖東平野一帯は古代条里制の地割りが受け継がれており,五個荘金堂の集落もほぼこれによっています。現在も集落内は昔のままの狭い通りが多く,通りごとに様々な景観を展開しています。集落を周辺から眺望した場合,寺院の大屋根が目につき,その周りに民家が建ち並び,更に鎮守の
通りごとに変化のある町並み
まちなみ相談業務
五個荘金堂の町並みは近江商人の本宅から農家住宅まで,規模も形態も様々な建物で構成されています。しかも個々の形態が個性的で,固定的な修景基準を設けることは困難です。
このため現状変更行為にかかる許可の判断については,地区としての一体感を保ちながら,これまで培われてきた住民の景観意識を取り入れるため,地元住民を中心に組織されたNPO法人金堂まちなみ保存会に「まちなみ相談」業務を委託し,市と定期的に会議を開き,許可の判断をするようにしています。同じ住民としての目線から所有者の相談に対応していただくことで,地元の意見が反映されたまちづくりを目指しています。
五個荘金堂の眺望
保存事業とまちづくり
五個荘金堂が重要伝統的建造物群保存地区に選定されて今年で15周年を迎えました。平成23年度には第33回全国重要伝統的建造物群保存地区協議会総会が東近江市で開催され,五個荘金堂の町並みも全国的に知られるようになりました。また,昨年には献血運動推進全国大会で滋賀県を訪れられた皇太子殿下が町並みを御視察されるという名誉なこともありました。しかし一方で地方の農村部に見られる少子高齢化の波は徐々に押し寄せてきており,空き家問題などが発生してきていることも事実です。
五個荘金堂の町並み保存は,過疎対策や観光地化を望んで出発したものではありません。重伝建選定後は観光客も増えましたが,観光地として飛躍的に発展してきているわけではありません。歴史的な美しい町並みや環境を保存することで,そこに暮らす人々の生活の質の向上を図ることが目的です。安定した住み良い環境と歴史的な景観を維持することの両立は非常に困難ですが,伝建事業をまちづくりに生かしていけるよう努力していきます。
☆重伝建選定15周年記念展「これまでのまちなみ保存・これからのまちなみ保存」開催中
■期間:平成26年1月19日(日)まで■会場:近江商人博物館(東近江市五個荘竜田町583)
☆特定非営利活動法人金堂まちなみ保存会HP(http://members.e-omi.ne.jp/kondo-machinami/
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