2016年2月10日
飛鳥の古墳の最新成果を紹介します。
平成27年度 飛鳥資料館冬期企画展
「飛鳥の考古学2015-飛鳥の古墳調査最前線-」
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 若杉智宏
近年,飛鳥の古墳に関する新発見が相次いでいます。
平成22年度の牽牛子塚古墳の調査では,古墳の南方で新たな石室(古墳)の存在が明らかとなりました。これらの2古墳の状況は,『日本書紀』天智天皇六年条にある斉明天皇と間人皇女,大田皇女の葬送記事と一致する部分が多く,大きな話題となりました。また,平成26年度に行われた都塚古墳の調査では,我が国に類例のない多段構造の墳丘であることが確認されました。古墳の場所が,蘇我馬子の墓と考えられる石舞台古墳と近いことなどから,葬られた人物についても様々な説が出されています。さらに,平成26年度の小山田遺跡の調査では,石を敷き詰めた大規模な堀がみつかり,これまで知られていなかった巨大方墳の一部と考えられています。これまでの調査成果を考慮すると,古墳の一辺は50m以上で,同時代の古墳では最大級の規模となり,舒明天皇の初葬陵とする見解が発表されました。一方,すぐ西隣にある菖蒲池古墳とあわせると,『日本書紀』皇極天皇元年条に記された蘇我蝦夷・入鹿親子の大陵・小陵との関連が想起され,今後の調査成果にも注目が集まっています。
今回の展示では,飛鳥の終末期古墳にスポットを当て,これらの最新の調査成果を含め,紹介したいと思います。
あわせて,飛鳥地域の平成26年度の発掘調査成果を展示します。飛鳥京跡苑池では遺跡の南東部で苑池の東側を限る塀がみつかり,「槻木の広場」があったとされる飛鳥寺西方遺跡では,掘立柱建物が初めて確認されました。また,市尾瓦窯跡では良好な状態で瓦窯が検出され,出土した軒瓦からこの瓦窯で藤原宮の瓦を生産していたことが確実となりました。さらに,檜隈寺北西の丘陵斜面では,10世紀頃に寺の補修のために造られた瓦窯跡が新たに発見されました。これらの調査成果をあわせて御覧いただくことで,飛鳥のもつ幅広い魅力を再確認していただければ幸いです。
この冬は,飛鳥の新発見とともに,7世紀の飛鳥の古墳の世界をぜひお楽しみください。
上5号墳出土馬具
檜隈寺瓦窯(西から)
奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄・橿原神宮前駅,飛鳥駅から「かめバス(周遊)」飛鳥資料館下車
JR・近鉄桜井駅から石舞台行きバスで飛鳥資料館下車 - 開館時間
- 9:00~16:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 一般¥270,大学生¥130
※高校生及び18歳未満,65歳以上:無料(年齢のわかるものが必要です)
障がい者とその介護者各1名は無料(手帳の提示が必要です)
2月7日(日)は無料入館日 - ホームページ
- http://www.nabunken.go.jp/asuka/