2017年5月12日
藤原京の一等地の調査成果を紹介します。
平成29年度飛鳥資料館春期特別展
「藤原京を掘る―藤原京一等地の調査―」
奈良文化財研究所 飛鳥資料館 若杉智宏
今回の展覧会では,奈良文化財研究所が実施した藤原京の発掘調査のうち,最大規模の調査である左京六条三坊の調査研究成果を展示します。
調査地は,藤原宮の東に隣接する京内の一等地であり,大和三山のひとつで,古代より多くの和歌にも詠まれた香具山の西北麓に位置しています。現在は,奈良文化財研究所 都城発掘調査部(飛鳥・藤原地区)の庁舎が建っていますが,藤原京の条坊地割では,左京六条三坊東北坪・東南坪・西南坪の地に当たります。
発掘調査は,奈文研の庁舎建設に伴い1985年から1987年にかけて実施し,古墳時代から中世までの遺構を数多く確認しました。なかでも特筆すべきは,コの字形の配置に復元される藤原京期の建物群で,この地に四町(約265m四方)を占める大規模な施設が存在したことが判明しました。出土した「左京職 」と書かれた斎串の存在などから,この大規模施設は,当初はみやこの民政を司った「京職」であり,その後「左京職」に変わったと考えられます。百済に系譜をたどることのできる緑釉獣脚硯の優品が出土していることも,当地に重要な役所が置かれていたことを裏付けています。
「左京職」と書かれた斎串
調査で出土した緑釉獣脚硯
また,調査では,香具山を意味する「香山」と墨書された奈良時代の土器が数多く出土しており,平城京遷都後にも活発な土地利用がなされていたことがわかりました。
奈良時代の多量の土器
「香山」と書かれた土器
発掘調査では,5世紀代の竪穴建物も複数見つかっています。それらの建物にはカマドが設けられたり,韓式系土器が出土したりするなど,渡来系文化の影響が読み取れます。古墳時代の調査地一帯には,飛鳥地域の開発に関わった渡来系の人々が生活を営んでいたのでしょう。
本展は,初めての中国式都城,藤原京の一等地における京内官衙の様相や土地利用のあり方を紹介するものです。本展を通して,藤原京の理解が一層促進され,その歴史的価値に対する認識がさらに深まりましたら幸いです。
奈良文化財研究所 飛鳥資料館
(住所)〒634-0102 奈良県高市郡明日香村奥山601
- 問合せ
- 0744-54-3561
- 交通
- 近鉄・橿原神宮前駅,飛鳥駅から「かめバス(周遊)」飛鳥資料館下車
JR・近鉄桜井駅から石舞台行きバスで飛鳥資料館下車 - 開館時間
- 9:00~16:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 月曜日
- 観覧料
- 一般\270,大学生\130
※高校生及び18歳未満,65歳以上:無料(年齢のわかるものが必要です)
障がい者とその介護者各1名は無料(手帳の提示が必要です) - 開催期間
- 2017年4月28日(金)~7月2日(日)
- ホームページ
- https://www.nabunken.go.jp/asuka/