2018年7月6日
夏のこども展示
「たいけん!なぶんけん」
奈良文化財研究所企画調整部展示企画室 アソシエイトフェロー 座覇えみ
奈良文化財研究所では,お盆や正月の休み,雨の日を除き,一年中発掘調査が続けられています。間もなくやってくる夏の炎天下でも,同様です。今年の「夏のこども展示」は,そんな発掘調査に携わる研究員の職業体験をテーマに開催します。
発掘調査は地下に埋もれた遺跡を対象に行うものですから,一度掘り返してしまえばやり直しは利きません。そのため,調査に先立っては綿密な計画を立て,掘り進める作業も慎重に,精密に実施されなければなりません。そして,その遺跡から得られる情報を事細かに記録し,それを発掘調査報告書や展示などの形で外部の人も共有できるよう公開していくことも,発掘調査を担当する研究員たちの大事な仕事です。
発掘調査の様子
慎重な作業は発掘作業が終わった後も続きます。小さな遺物を多量に含んでいそうな層に当たると,発掘現場で一点一点の資料を取り上げるのではなく,周囲の土ごと整理室に持ち帰る場合があります。遺物を見逃さないように,整理室で少しずつ洗いながら遺物を探すのです。
洗い場の様子
そうして慎重に取り上げられた出土資料は,研究員によって分析されます。考古学の博物館などでみる展示物は,多くは完全な形をした出土資料ではないでしょうか。しかし,出土する資料が完全な形をしていることはごくまれで,大抵は,折れたり,割れたりした状態で見つかることがほとんどです。研究員はその破片から,遺物の元の形を復元し,その遺物の年代や広がりなどを推測します。そのためには破片をじっくり観察する目と,破片の原型を探し当てるための膨大な知識が必要です。
例えば,下の破片はどんなものの一部だと思いますか?
折れた出土資料
この破片の素材は木です。緩やかなL字の片側に,たくさんの切れ目が入っていますね。みなさんもどこかで見たことがあるかもしれません。あるいは,今朝,同じような形のものを使ったかもしれません。ひらめいたでしょうか。そう,答えは「櫛」です。
平城宮跡出土の櫛
櫛は現代と同じく日常生活の品としての側面もありますが,古代においては祭祀具としての側面もあります。そのため,櫛の出土地点で祭祀が行われた可能性も考えられます。そういったひとつひとつの出土資料の性格とともに,出土した場所や一緒に出土した他の資料などから,出土した場について考えを深めていくのです。
発掘から整理作業,調査・研究,報告・展示公開と,発掘調査に携わる研究者の仕事は多岐にわたります。少しでも昔のことを解明したい,伝えたいとの思いから,今日も頑張っているのです。この夏,発掘調査の最前線にいる研究員たちが,どのように発掘調査を進め,どのように出土資料を分析し,どのように考えているのか,親子そろって体験してみませんか。
奈良文化財研究所平城宮跡資料館
(住所)〒630-8577 奈良県奈良市佐紀町
- 問合せ
- 0742-30-6753(奈良文化財研究所連携推進課)
- 交通
- 近鉄奈良線大和西大寺駅北口より東へ徒歩10分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は閉館16:00まで)
- 休館日
- 毎週月曜日
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- 奈良文化財研究所平城宮跡資料館ウェブサイト
夏のこども展示「たいけん!なぶんけん」
- 開催期間
- 7月21日(土)~9月2日(日)
- 場所
- 平城宮跡資料館 展示企画室
- ギャラリートーク・ワークショップ
- 7月27日(金),8月3日(金),8月10日(金),8月17日(金),8月24日(金),8月31日(金)
各日とも14:30~,約30分程度