2018年11月19日
地下の正倉院展
―荷札木簡をひもとく―
奈良文化財研究所企画調整部展示企画室 アソシエイトフェロー 座覇えみ
平城宮跡資料館では,今年も「地下の正倉院展」を開催しています。秋の恒例となった本展には,近畿圏のみならず,毎年遠方からも多数の方々に御来場いただいています。そうした全国各地から平城宮跡を訪れてくださったみなさまに,木簡にもっと親しみをもってもらいたい,そのような思いから,今年度は,全国各地から送られた荷札木簡を御覧いただく展示を企画しました。
平城宮・京で出土する木簡の中には,地方で作成され,都へ送る荷物に付けられた木簡,荷札木簡が多く見られます。
平城宮・京で出土した奈良時代の荷札木簡は,北は陸奥国(今の東北地方太平洋側)から南は薩摩国(今の鹿児島県西部)まで,数か国を除くほとんどの国からのものが確認されています。
それら荷札木簡には,地方で調えられた各地の産物や,それらを納めた地域の地名などが記載されています。本展に登場する荷札の中には,みなさんが日常の中で身近に目にし,耳にする国名や地名,特産品の書かれたものが,きっとみつかるはずです。見知った地名,特産品などを通して,奈良時代をぐっと身近に感じていただけることでしょう。
阿波国からのワカメの荷札
奈良文化財研究所蔵
例えば,これは阿波国(今の徳島県)から天皇の食膳にあがる贄として納められたワカメの荷札です。「板野郡牟屋海」という産地名が書き入れられており,今の鳴門ワカメにあたります。1300年前の奈良時代でも,鳴門のワカメは高級ブランド品として食べられていたようです。
(赤外線写真)
(カラー)
陸奥国からの昆布の荷札
奈良文化財研究所蔵
こちらは,遠く「陸奥国名取郡」(今の宮城県名取市)からの昆布の荷札です。冷たい海に育つ昆布は,現在も北海道,青森,岩手,宮城県などで収穫されています。まさに東北地方の特産品としてふさわしい品が,遠路遥々平城京に貢納された事例と言えるでしょう。
(裏)
(表)
上部の切り込みに紐の残る荷札
奈良文化財研究所蔵
今回の展示では,全国から納められた荷物にはどのような産物があったのか,荷札の記載内容から御紹介するとともに,荷札そのもののカタチや大きさ,樹種,税目といった側面からも,荷札木簡をひもといていきます。一口に荷札と言っても,その様相は多種多様。それらひとつひとつにどのような背景があるのか,思いを巡らせていただければ幸いです。
都に送られた全国の荷札に会いに,是非平城宮跡資料館にお越しください。
奈良文化財研究所 平城宮跡資料館
(住所)〒630-8577 奈良県奈良市佐紀町
- 問合せ
- 0742-30-6753(奈良文化財研究所連携推進課)
- 交通
- 近鉄奈良線大和西大寺駅北口より東へ徒歩10分
- 開館時間
- 9:00~16:30(入館は16:00まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 観覧料
- 無料
- ホームページ
- https://www.nabunken.go.jp/heijo/museum
秋季特別展「地下の正倉院展 ―荷札木簡をひもとく―」
- 開催期間
- 10月13日(土)~11月25日(日)
- 場所
- 平城宮跡資料館 展示企画室
- 会期
- (Ⅰ期)10月13日(土)~10月28日(日)
(Ⅱ期)10月30日(火)~11月11日(日)
(Ⅲ期)11月13日(火)~11月25日(日) - ギャラリートーク
- Ⅰ期:10月19日(金) Ⅱ期:11月2日(金) Ⅲ期:11月16日(金)
各回14:30~