2016年10月5日
この連載では,日本各地の地域の日本語教室で日本語を学び,地域で活躍する外国人の視点から地域の魅力,日本語や日本文化の魅力,日本語の学習などについて語ってもらいます。様々な背景を持つ外国人の方々がどのような思いで日本語を学び,日本の社会で暮らしているか,是非知ってください。
私と日本語とチャンス
<栃木県・小山市>
近藤ポア(カンボジア出身)
株式会社 きぼう国際外語学院
カンボジア語・英語通訳
1.英語が通じないなんて・・・
(はじめまして) 。私は近藤ポアと申します。カンボジアから来ました。出身はプノンペンです。
私は,日本に来る前,カンボジア大学で勉強しながら仕事をしていました。また,それだけでなく,少し自分のビジネスをしていました。そして,その頃カンボジアにボランティア活動に来ていた日本人の主人と出会いました。
2012年,大学卒業の6日後,その主人と結婚して,すぐに日本に来ました。カンボジアではとても忙しくて,なかなか日本語を勉強する時間がとれなかったため,日本に来たときも日本語が全然分かりませんでした。一方,仕事でアメリカ人と働いたり,カンボジア大学では5年間英語を使って勉強したりしたので,英語には自信がありました。また,外国で暮らすとき,英語ができれば困ることは少ないだろうと思っていました。 しかし,実際に日本に来てみると,英語を使っても誰も理解してくれませんでした。最初の1年間は,つらいことがたくさん起きました。どこへ行っても漢字が読めません,乗り物の乗り方もよく分かりません。注意されても分かりません。友達も一人もいません。円通貨の使い方に慣れるのにも時間が掛かりました。日本語ができなかったので,自分の気持ちや自分の思っていたこと,困っていることなどを,誰かに伝えたくてもちゃんと伝えられませんでした。もちろん,同居する義理の父母や家族と話すのは大変でした。習慣も違う日本での「お嫁さん」は本当につらいです。毎日寂しくて,人見知りになって,どんどんストレスが溜まりました。このまま日本で暮らせるのか,とても不安でした。
2.日本語の勉強はどこでする?
私は5か月間,日本語学校で日本語を勉強することにしました。そこでは,日本語はもちろんのこと,日本文化や習慣もたくさん覚えましたが,それだけでは足りない気がしました。やはり外へ出て,実際に日本語を使ってみることが大切だと思いました。そこで,まず地域の国際交流協会に行きました。外に出るといろいろな人に会うことができ,いろいろな勉強になる機会が増えました。私は日本語が分からなくても,とりあえず外に出ていろいろな体験をしたり,セミナーや勉強会,ボランティア活動などへ参加したりしました。
国際交流協会の皆さんと
3.私はここにいていいんだ
こうしていろいろな場に顔を出しているうちに,きぼう国際外語学院の「やさしい日本語」プロジェクトに出会いました。このプロジェクトは,きぼう国際外語学院が地域に公開している日本語教室を中心とした取組で,日本語教育を一般の人にも理解してもらうことを目的としたものです。このプロジェクトの日本語教室では,日本語を学ぶだけでなく,自分の日本での体験や,思ったことを日本人に話す機会があります。また,いろいろな分野で活動している人たちから話を聞いたり,避難訓練などの体験活動の中で日本語を学んだりすることができます。
その日本語教室に通い続けたところ,私の日本語や私自身も大きく変化しました。日本語が上達したのはもちろんのこと,「日本人にカンボジアの文化を見せたい」「日本人の友達も作りたい」「早く自分の夢の仕事をやりたい」「チャンスがあれば何でもチャレンジしてみたい」と,気持ちがどんどん前向きになりました。難しくても,間違った時に笑われても,楽しんで日本語を勉強できました。友達もいっぱいできました。日本人と日本語を話す機会も増えました。
日本語教室で出会った看護学生と
避難訓練で感想を述べる
4.私の特別な体験
きぼう国際外語学院の「やさしい日本語」プロジェクトでは,自分の日本語を使って教室以外へ自分自身を発信する機会もあります。先日は,地元のFMラジオにも出演しました。これは,外国人自身が教室活動の中で作った日本語の川柳をラジオで披露して,日本人住民に対して外国人の存在を知ってもらったり,活動について理解してもらったりするための活動の一環で行われました。私も自分で川柳を作って,スタジオでヘッドホンをつけて収録しました。この川柳は,日本人住民が多く聞いている栃木県のFMラジオで実際に放送されます。貴重な体験ができて,本当に楽しかったです。
ラジオを聴いている日本人は多いと思います。しかし,その中でどれだけの人たちが地域の外国人や日本語教室のことを知っているでしょうか。少しでも地域に住んでいる外国人のことを知ってもらって,「なるほど」と思ってもらえたらうれしいです。
川柳をつくっています
みんながつくった川柳
ラジオ番組収録現場
ラジオ番組収録中
5.現在の私
この1年くらいは,「やさしい日本語」プロジェクトへの参加がきっかけとなって,きぼう国際外語学院で学ぶ技能実習生へのカンボジア語,英語の通訳の仕事をしています。その仕事からの出会いで,別の場所でも通訳の仕事ができるようになりました。楽しく働きながら自分の日本語をレベルアップしています。3年前のすごく寂しい私,人見知りの私,困った私はもういません。 困ったことがあるときはいつも家族や,日本人の友達,会社で一緒に働いている人,国際交流協会のスタッフなどが,相談に乗ってくれたり助けてくれたりします。いつもとてもお世話になっていて,感謝の気持ちでいっぱいです。今後は今の仕事での自分の経験を生かして,日本で生活する外国の方々の生活をサポートしてあげたいと思っています。
各国語の通訳のみなさんと研修
今まで出会った人々のおかげで,たくさんの経験をさせていただき,本当に感謝しています。日本に住む外国人の人も,日本語の勉強を頑張って,たくさん外に出て,自分に自信を持って,日本人と一緒に楽しいことができるようになってほしいと思います。地域にいる日本人の仲間,外国人の仲間が増えると楽しいことがたくさんありますよ!!
株式会社 きぼう国際外語学院
(住所)〒323-0828
栃木県小山市神山2-8-18
- 問合せ
- 0285-32-6656
- 交通
- JR宇都宮線「小山駅」より徒歩15分
- 開館時間
- 月曜日~金曜日 8:30~18:30
- 休館日
- 土,日曜日
- 会社説明
- 技能実習生の日本語教育
その他,文化庁委託事業,EPA候補生の国家試験対策,地域のボランティア講座講師など
平成24~28年度「生活者としての外国人」のための日本語教育事業採択団体 - ホームページ
- http://www.ajiken.jp
ブログ:tochigikibou
FB:「やさしいにほんご」