2016年12月5日
企画展
「THE PLAY since 1967 まだ見ぬ流れの彼方へ」
国立国際美術館 主任研究員 橋本 梓
1967年より関西を拠点に活動するプレイ(THE PLAY)は,かたちに残る何かを「作る」のではなく「体験する」ことに取り組み続ける唯一無二の美術家集団です。活動開始以来メンバーは流動的で,何らかのかたちでこれまで参加した人数は100名を超えますが,現在活動するのは,池水慶一,小林愼一,鈴木芳伸,二井清治,三喜徹雄の5名です。メンバーで集まって計画を練り,準備し,実行し,報告することを,実に50年近く続けてきました。美術館での初個展となる本展は,印刷物・記録写真・記録映像・音声記録・原寸大資料などにより,その活動の全貌を展覧します。
プレイ《VOYAGE: Happening In An Egg》記録写真
1968年8月1日 和歌山県串本町南方海上
撮影 石井信夫 © THE PLAY
プレイの活動は「美術」という言葉からはちょっと想像ができないものかもしれません。例えば,巨大な卵型の彫刻を船で運び黒潮に乗せる,発泡スチロール製のイカダに乗って京都から大阪まで流れる,羊を連れて旅をするなどが彼らの表現です。いえ,彼らはそれを「表現」とは呼ばず,1960年代から1970年代には「ハプニング」,その後はシンプルに「行為」などと呼んできました。こうした「行為」は,その大部分が都市近郊の自然の中で行われています。美術の制度から常に一歩外に出ようとする活動は,牧歌的ながらも批評性に富み,活動当初より大いに注目を浴びてきました。
プレイ《現代美術の流れ》記録写真
1969年7月20日 淀川
撮影 樋口茂 © THE PLAY
とはいえ,プレイはただ美術館の外で人々を驚かせることを目的にしていたわけではありません。彼らは,自然の中で人間が行う普遍的な営みについて常に考えを巡らせてきました。彼らにとって海や山や川,風や雷は,単なる環境や現象ではなく,過去や未来へと開かれた永い時間を示唆するものです。彼らの暮らしからそう遠くない自然の中での「行為」を計画し,身体ごと飛び込んで非日常を体験すること,その体験をまた日常に持ち帰ることの繰り返しにこそ,プレイの活動の本質を見てとることができます。その意味では,山の上に丸太で20mの高さのやぐらを組んで,そこに雷が落ちるのを待つ《雷》(1977~1986年)は,彼らの代表的な行為と言えるでしょう。雷は結局一度も落ちることがなく,この雷を待つ行為は,10年に亘って行われることになりました。その粘り強い時間感覚は,遠回りでも自分たちの手で着実に計画を実行していくという,身体を使った経験への揺るぎない信頼を伴うものです。めまぐるしく変わる時流に応じた柔軟性が評価される現代において,プレイの活動は独自の強度を保ち続けていると言えるでしょう。
「THE PLAY since 1967 まだ見ぬ流れの彼方へ」(国立国際美術館,2016年)
展覧会場風景(撮影:福永一夫)
国立国際美術館
(住所)〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55
- 問合せ
- 06-6447-4680
- 交通
- 京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2番出口)から南西へ徒歩約5分
地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」(3番出口)から西へ徒歩約10分
JR「大阪駅」,阪急電車「梅田駅」から南西へ徒歩約20分
JR大阪環状線「福島駅」,東西線「新福島駅」(2番出口)から南へ徒歩約10分,阪神電車「福島駅」(3番出口)から南へ徒歩約10分
地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」,京阪電車「淀屋橋駅」(7番出口)から西へ徒歩約15分
市バス「大阪駅前」から,53号・57号系統で,「田蓑橋」下車,南西へ徒歩約3分 - 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 10:00~17:00
毎週金・土曜日は20:00閉館(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日(ただし,1月9日[月・祝]は開館し翌日休館),12月28日[水]-1月4日[水]
- 観覧料
- 一般430円(220円),大学生130円(70円),( )内は20名以上の団体料金
高校生以下,18歳未満,65歳以上無料
心身に障害のある方とその付添い者1名無料(証明できるものを御提示願います) - ホームページ
- http://www.nmao.go.jp/
- その他
- 同時開催の「日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」は開館時間(火曜日~木曜日及び土・日曜日10:00~17:00,金曜日10:00~19:00),観覧料が異なります。詳細は当館ホームページにて御確認ください。