2017年10月5日
安藤忠雄展―挑戦―
国立新美術館主任研究員 本橋弥生
元プロボクサー。世界中を旅し,独学で建築を学ぶ――ユニークな経歴を持つ建築家,安藤忠雄氏(1941年-)は,1969年に大阪で「都市ゲリラ」として建築設計活動を始めて以来,常に既成概念を打ち破る斬新な建築作品で人々を驚かせ続けてきました。本展では,世界各地で様々なプロジェクトを手がける安藤氏が,いかに生きて,いかに創り,今またどこに向かおうとしているのか――その壮大な挑戦の軌跡と未来への展望を「原点/住まい」,「光」,「余白の空間」,「場所を読む」,「あるものを生かしてないものをつくる」,「育てる」という六つのセクションに分けて紹介します。安藤氏の約半世紀にわたる活動の全貌を紹介する,過去最大規模の個展である本展は,模型やスケッチ,ドローイングなど,89プロジェクト,計270点余りの設計資料を,安藤氏自身の空間デザインにより展示しています。
プロローグ 建築家 安藤忠雄
安藤忠雄氏の優れた感性と行動力は,いかにして育まれたのか。そのエネルギーの源は何か。建築家となる前に世界放浪をした際の旅のスケッチや,アトリエの一部を原寸大の再現なども展示し,建築家の日常に迫ります。
ポートレイト,(撮影:荒木経惟)
セクション1 原点/住まい,セクション2 光
大きなプロジェクトを手がける安藤氏の活躍からは意外に感じられるかもしれませんが,安藤建築の原点は「住宅」にあります。「住宅」を展開する中で,「打ち放しコンクリート」,「幾何学的形態」,「自然との共生」という安藤建築の原型が誕生したのです。また,光など,そぎ落とされたシンプルな造形に自然の息吹を感じさせる作風も,安藤建築の特徴です。
住吉の長屋,1976年,大阪府大阪市 (撮影:新建築社 写真部)
セクション3 余白の空間,セクション4 場所を読む
自らの活動を「都市ゲリラ」と称した安藤忠雄氏が,都市において一貫して追求してきたのは,意図的に「余白」の空間をつくりだし,人の集まる場を生み出すことです。一方,大自然に包まれた立地で,周辺環境と一体化した美しくも力強い作品も安藤建築の魅力です。
直島 ベネッセハウス,1992/1995年,香川県直島町 (撮影:松岡満男)
セクション5 あるものを生かしてないものをつくる,セクション6 育てる
安藤忠雄氏にとって,歴史の刻まれた建物の再生は,常に挑戦心をかき立てられるテーマです。また,社会活動を建築ととらえ,子供たちの未来のために枠組みを超えた旺盛な取組も展開しています。会場では,建物の周辺環境の整備から,まちづくりの活動や環境再生活動など,安藤氏の思想をドキュメンタリー映像にして紹介しています。
本展をとおして,安藤氏の歩みを追体験し,建築という文化の豊かさとその無限の可能性を感じとっていただけると思います。
プンタ・デラ・ドガーナ,2009年,ヴェニス/イタリア
(撮影:© Palazzo Grassi SpA. Foto: ORCH, orsenigo_chemollo)
国立新美術館
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当日 1,500円(一般) 1,200円(大学生) 800円(高校生)
団体(20名以上) 1,300円(一般) 1,000円(大学生) 600円(高校生)
※団体券は国立新美術館でのみ販売
※中学生以下及び障害者手帳を御持参の方(付添いの方1名を含む)は入場無料
※11月3日(金・祝),4日(土),5日(日)は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要) - ホームページ
- http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/