2018年1月10日
開館40周年記念展
「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」
国立国際美術館 情報資料室長 植松 由佳
国立国際美術館は1977年に開館し,本年度,開館40周年を迎えました。これを記念する特別展「トラベラー:まだ見ぬ地を踏むために」を開催します。この展覧会は,数々の新作や,展覧会場で日々繰り広げられるパフォーマンスなどの新しい試みと,選りすぐりの所蔵品,合わせて45作家,130余点から成る展覧会です。
ロバート・ラウシェンバーグ《至点》
1968年 国立国際美術館蔵
© Robert Rauschenberg Foundation
提供:NTT InterCommunication Center [ICC]
全館を会場に,二部構成となる本展では,第一部を「The Multilayered Sea:多層の海」と題して,時間や歴史,記憶という多層化したレイヤーから私たちの社会の姿を浮かび上がらせる作家の作品を展示します。ここでは,当館のコレクションとして親しまれてきた作品に新たな眼差しを向け,作品同士の対話が紡ぐ物語によって,時や場所を越えた旅へと鑑賞者を誘います。美術館は,おびただしい数の作品が展示された痕跡,鑑賞者の心に湧き起こった様々な感情,展覧会や作品にまつわるあらゆる記憶が漂う場所です。
また,大阪・中之島の長い歴史を思えば,当館を支えているのは,美術館のそばを流れる大川がまさに堆積してできた土地です。江戸時代には蔵屋敷が並び人や物が行き交い,後には大阪大学の医学部・理学部の学究の地となったという歴史,経験,記憶の上に,私たちは今新たな層を重ねているのです。
アローラ&カルサディーラ
《Lifespan》2014年 国立国際美術館蔵
© Allora & Calzadilla, Courtesy Lisson Gallery
また第二部では「Catch the Moment:時をとらえる」と題して,これから積み重ねていく美術館の未来の可能性を探ります。時に「美の墓場」のアレゴリーで語られる美術館は,絵画や彫刻など,今日では「静的」とさえ言える性質の作品を,可能な限りオリジナルのまま留めて保存・公開する場を理想としてきました。この意味において,パフォーマンスをはじめとする時間的な展開を伴った作品形態は,そうした美術館の性質になじまないため,たとえ美術史上の重要性を認められた作品であっても,収蔵庫での居場所を見つけにくいものでした。
しかし,そうした表現がより普遍的なものとなった今日,これまでと同様の扱いを続けるという選択は美術館と鑑賞者にとって大きな損失を意味します。いまや美術館は,そうした新しい表現に積極的に取り組み,芸術にまつわる様々な実践をより広く,また深く検証すべき地点にいるのです。
新たなる表現を探求する作家たち,そうした作家の表現の変容にともない新たな美術館像を模索するキュレーターをはじめとする美術館関係者たち,またその美術館という場で作品や作家との出会いを楽しむ鑑賞者たち。それぞれが「トラベラー」となって,次なる歩みを踏み出すために深慮する場の創出となれば幸いです。
国立国際美術館
(住所)〒530-0005 大阪市北区中之島4-2-55
- お問合せ
- 06-6447-4680
- 交通
- 京阪電車中之島線「渡辺橋駅」(2番出口)から南西へ徒歩約5分
地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」(3番出口)から西へ徒歩約10分
JR「大阪駅」,阪急電車「梅田駅」から南西へ徒歩約20分
JR大阪環状線「福島駅」,東西線「新福島駅」(2番出口),阪神電車「福島駅」(3番出口)から南へ徒歩約10分
地下鉄御堂筋線「淀屋橋駅」,京阪電車「淀屋橋駅」(7番出口)から西へ徒歩約15分
市バス「大阪駅前」から,53・75号系統で「田蓑橋」下車,南西へ徒歩約3分 - 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 10:00~17:00
金・土曜日は20:00閉館(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 月曜日
※ただし,2月12日(月・休)は開館し,13日(火)は休館。4月30日(月・休)は開館。 - 観覧料
- 一般1,200円(900円),大学生800円(550円),( )内は20名以上の団体料金
夜間割引料金(対象時間:金・土曜日の17:00~20:00):一般1,000円,大学生700円
リピーター割引料金:一般600円,大学生400円(本展の使用済み観覧券を御提示ください)
高校生以下,18歳未満無料
心身に障がいのある方とその付添い者1名無料(証明できるものを御提示願います) - ホームページ
- http://www.nmao.go.jp/