2018年9月25日
日本・スウェーデン外交関係樹立150周年
インゲヤード・ローマン展
東京国立近代美術館 主任研究員 中尾優衣
東京国立近代美術館では,日本とスウェーデンの外交関係樹立150周年を記念して,スウェーデンを代表するデザイナーであり,また陶芸家としても知られるインゲヤード・ローマン(1943- )の個展を開催します。
スタジオでのインゲヤード・ローマン
photo: Anna Danielsson/Nationalmuseum Stockholm
ローマンは,スウェーデンのコンストファク(国立美術工芸デザイン大学)や,イタリアのファエンツァにある国立陶芸美術学校で陶芸を学んだ後,スウェーデンのガラスメーカーで絵付けの仕事に関わったのをきっかけに,ガラスデザイナーの道へと進みました。自分で使いたいと思うものしかデザインしない,という信念を持つローマン。その言葉通り,彼女の作る器はどんな食べ物や飲み物にも合わせやすく,しかも好きな組合せで使ってみたり,重ねて収納できたりと,使い手の自由度が高いことが大きな特徴です。
《ティー・サービス・セット(2016/ Ingegerd Råman)》
2016年 2016株式会社
photo: Anna Danielsson/Nationalmuseum Stockholm
こうした色も形も極めてシンプルな器は,一貫して凛とした美しさが感じられ,流行に左右されない普遍的な強さを秘めています。そして何よりも,彼女自身が一人目の使い手として,機能性を追求する真摯な視点にも気づかされます。それは,ローマン自身の手で作られる陶器のボウルでも,彼女のデザインをもとに熟練の職人たちが制作するガラスの皿や花瓶でも,変わることはありません。
《ボウル》 2016年 インゲヤード工房
photo: Anna Danielsson/Nationalmuseum Stockholm
今回の展覧会のためにローマンが考えたステートメントは,「シンプルであること,機能的であること,そして美しさ,――それをつなぐのが,私の仕事。」まさにこの言葉に,彼女の物づくりの姿勢がギュッと凝縮されています。
《花瓶》 2003年、2004年、2009年 オレフォス
photo: Anna Danielsson/Nationalmuseum Stockholm
会場となる東京国立近代美術館工芸館は,その名の通り工芸作品を扱った展覧会だけを行っていると思われがちですが,実はデザインもその活動の重要なテーマとなっています。近代という時代の潮流の中で,芸術と産業の分野では工芸とデザインをめぐる様々な動きが繰り返し起こりました。この二つの領域を長きにわたって自由に行き来しているローマンの活動は,工芸館の軌跡とも重なる部分があるのです。
近年は,日本企業とも仕事を手がけ,また天然素材の竹に初めて取り組んだイケアの「ヴィークティグト」コレクションや,スウェーデン大使館のための建築プロジェクトなどにも関わり,今なお新しいことに挑戦し続けています。
《VIKTIGT/ヴィークティグト ペンダントランプシェード》 2016年 イケア
© Inter IKEA Systems B.V.
日本初の大規模個展となる本展では,工芸館の建物を生かした展示デザインと約180点の代表作で,彼女の制作プロセスや造形思考を御紹介します。ローマンの作品を通して,心豊かに日常を愉しむための手掛かりを見つけていただければ幸いです。
東京国立近代美術館工芸館
(住所)〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1
- お問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口徒歩8分
東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」2番出口徒歩12分 - 開館時間
- 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(9/24,10/8は開館),9/25(火),10/9(火)
- 観覧料
- 一般 600円,大学生 400円
※高校生以下及び18歳未満,障害者手帳をお持ちの方とその付添い者(1名)は無料。
- ホームページ
- 東京国立近代美術館(工芸館)