2019年1月16日
「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」展
国立国際美術館 企画室長 安來正博
国立国際美術館では,「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」展が開催中です。
1977年に開館した当館にとって,80年代は美術館としての進路を究める重要な時代でした。ゼロからのコレクション形成に際しては,新しい歴史を時代とともに刻んでいくことを目指し,現代美術に焦点が当てられました。本展では,こうして集められた80年代の日本作家のコレクションに加え,作家本人や各地の美術館が所蔵する作品約100点を展示します。
中西學《THE ROCKIN' BAND: The Guitar Man》1985年
作家蔵 撮影:寿福滋(C) Manabu Nakanishi
80年代。日本は世紀末の混沌とした世界情勢の影響を受け,人々の感情や内面が激しく揺さぶられた10年でした。美術もまた社会のうねりの中をさまよった感があります。高度成長期が終焉を迎えた70年代。現代美術は「もの派」とその影響を受けたストイックで抑制的な作品が主流となりました。
その背景には,更に遡る60年代の熱い政治闘争の季節との訣別がありました。「しらけ世代」と呼ばれた70年代の若者たちは,そのような風潮に反応し,思慮深く,時にシニカルな態度で時代と対峙しました。こうした70年代を経た後の80年代は,その幕開けから,何か新しい時代の到来を期待させる雰囲気に満ちていたといえるでしょう。
日比野克彦《BJ.MACKEY》1982年
岐阜県美術館蔵(C) Katsuhiko Hibino
美術も,そうした時代状況を反映し,複雑で多様な展開を示します。70年代までの現代美術が,幾つかの主義や流派によって分類されたのに対して,80年代以降は,主流となる大きな動向がなくなり,異なる傾向の作品が併存するようになっていきます。それを「前衛」の消失と言い換えることもできるでしょう。
そのような捉えどころの無さがある一方で,逆に80年代の美術状況が,かつてないほど活気づき刺激的なものになったことも事実です。過去の経緯に束縛されない,自由奔放な若者たちが現代美術の表舞台に一斉に登場し始めたのです。
小田英之《スペクタクル(2018バージョン)》1989/2018年
作家蔵(C) Hideyuki Oda
本展では,80年代の10年間を2年ごとに区切って展示します。その結果,例えば80年代初頭には,概念芸術に代表される,70年代の美術の様相が色濃く残っていますし,終盤になると,「シミュレーショニズム」と呼ばれるような,90年代以降の動向を予感させる作品が散見されることになります。そして,何よりも80年代を代表する時代様式となった新表現主義のピークが,その中間に出現するなど,ブームの消長を見て取ることができるでしょう。
1980年代。今日の私たちの目に,その時代はどのように映し出されることでしょう。御鑑賞いただければ幸いです。
国立国際美術館
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- 観覧料
- 一般900円(600円),大学生500円(250円),( )内は20名以上の団体料金
夜間割引料金(対象時間:金・土曜日の17:00~20:00):一般700円,大学生400円
高校生以下,18歳未満無料(要証明)
心身に障がいのある方とその付添者1名無料(要証明) - ホームページ
- http://www.nmao.go.jp/