2019年8月20日
今日着ている服,あなたはどうやって選びましたか?
「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」
京都国立近代美術館 主任研究員 牧口千夏
ファッションには,時代や地域,社会階層における文化や慣習と結びついた様々なルールや規範が存在します。最近,職場でのヒール靴の強要をなくしたい,という女性たちの声を集めたインターネット上の運動が話題になりました。東日本大震災直後の電力不足を背景に広がった「クールビズ(男性が夏期にビジネスシーンでネクタイやジャケットを強要されないこと)」と同様,これまで社会生活におけるマナーと見なされてきた明確な,あるいは暗黙の〈ドレス・コード〉が,社会の価値観の変化に伴って見直されるケースも少なくありません。
また,ドレス・コードは社会規範として存在するだけでなく,「視る/視られる」という他者との関係性においては自分がなりたい人物像・キャラクターを「装う」ための手段ともなりえます。このように,ファッションにおけるドレス・コードは,自己と他者との間に駆け引きあるいはゲームにも似たコミュニケーションを生み出しています。そしてインターネットとSNSの普及によって,誰もが自らの装いを自由に発信できるようになった現在,私たちとファッションのかかわり方もまた新しい局面を迎えています。
COMME des GARÇONS(川久保玲)2018年春夏
京都服飾文化研究財団所蔵
撮影=畠山崇
この度,京都国立近代美術館で開催される展覧会「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」では,13の架空の〈コード〉を設定し,現代社会における装いの諸相を様々な角度から紹介しています。コードといっても,「裸で外を歩いてはいけない」といった法律で定められているものもあれば,「教養を身につけなければならない」や「大人の言うことを聞いてはいけない」といった,必ずしも着ることだけに限らない,社会生活におけるルールや反語的な格言めいたものも含まれています。それはこの展覧会が,既存のコードそのものではなく,服と社会,あるいは私たちの生き方との関わりにこそ焦点をあてているためにほかなりません。
シンディ・シャーマン《Untitled #471》2008年,個人蔵
©Cindy Sherman, courtesy of the artist, Sprüth Magers & Metro Pictures
本展は,18世紀フランスの華やかな宮廷服から,制服やスーツ,デニム,トレンチコートといった日常のワードローブのアイテム,ストリート・カルチャーを吸収した現代服まで,京都服飾文化研究財団のコレクションから精選した約90点を中心に,美術家や写真家,演劇作家,マンガ家によって描かれたファッションに関する300点を超える作品・資料で構成。現代における新たな〈ドレス・コード〉,私たちの装いの実践(ゲーム)を見つめ直します。
元田敬三《ツッパルな》2015年
作家蔵 ©Keizo Motoda
1980年代から京都国立近代美術館は,京都服飾文化研究財団と協力し,衣服がもつ美的・文化的価値を様々な角度から紹介し,「美術館で見る衣装展」という分野を日本にいち早く広げてきました。8度目のコラボレーションとなる本展は,日本で初めてとなる国際博物館会議(ICOM)の京都大会(2019年9月1日〜7日)に合わせて開催されます。本展が提起するファッションをめぐる諸問題を,国内外の専門家とも共有する機会となれば幸いです。なお,本展は2019年12月より熊本市現代美術館に巡回します。
京都国立近代美術館
(住所)〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町
- 問合せ
- 075-761-4111
- 交通
- □JR~バスを御利用の方
■JR近鉄京都駅前(A1のりば)から
市バス5番 銀閣寺・岩倉行「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■JR・近鉄京都駅前(D1のりば)から
□阪急電鉄・京阪電鉄~バスを御利用の方
市バス100番(急行)清水寺・銀閣寺行「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪三条駅から市バス5番 銀閣寺・岩倉行
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ■阪急烏丸駅・河原町駅,京阪祇園四条駅から市バス46番 祇園・平安神宮行
□市バス他系統御利用の方
「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車すぐ「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車徒歩5分
□地下鉄御利用の方
「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約10分地下鉄東西線「東山」駅下車 1番出口より徒歩約10分
- 開館時間
- 火曜日~木曜日,日曜日 9:30~17:00
金・土曜日は21:00閉館(入場は閉館30分前まで) - 休館日
- 毎週月曜日,8月13日,9月17日,9月24日(火)
※ただし8月12日,9月16日,9月23日,10月14日(月・祝)は開館 - 観覧料
- 一般1,300円(1,100円),大学生900円(700円),高校生500円(300円)
※( )内は前売・20名以上の団体料金
※中学生以下は無料
※障害者手帳を御持参の方 (付添いの方1名を含む)は無料 - ホームページ
- http://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionArchive/2019/433.html