2019年9月20日
話しているのは誰? 現代美術に潜む文学
国立新美術館主任研究員 米田尚輝
国内外で活躍する6名の日本の現代美術家,田村友一郎,ミヤギフトシ,小林エリカ,豊嶋康子,山城知佳子,北島敬三によるグループ展「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」展を開催いたします。本展は,タイトルが示唆する通り文学をテーマに掲げていますが,ここで文学という言葉が指し示すのは,必ずしも書物の形態をとる文学作品だけではありません。しかしながら,いずれの作家も,作品のうちに文学の要素が色濃く反映されているという共通性を持っています。
古代ローマの詩人ホラティウスは,詩と絵画のあいだの密接な関係について「詩は絵のごとく」という一節を記しました。以来,詩や文学のような言語芸術と,絵画や彫刻のような視覚芸術との関係を巡る議論は,様々な時代と場所で繰り広げられてきました。今日の芸術表現は,絵画や彫刻といった伝統的な芸術ジャンルの区分では捉えきれないほど多様化しています。こうした状況の中で,現代美術における文学の役割もまた新たな様相を見せているといえるでしょう。
北島敬三 《ツィルカール村 アルメニア共和国》
(「USSR 1991」シリーズより)1991/2019年
顔料印刷 66.0×93.0cm 作家蔵 ©KITAJIMA KEIZO
本展に参加する6名の作家は,1950年代生まれから80年代生まれまでと年齢層が幅広く,表現方法も写真,映像,インスタレーションなど多岐にわたります。しかしながら,いずれの作家の作品にも,物語性,歴史,詩情,政治といった,古来文学が備えていた特性が随所に表れています。彼らの作品を通して,現代美術における文学の様々な表れ方を体験していただければ幸いです。
小林エリカ 《わたしのトーチ》 2019年
Cプリント 54.9×36.7cm(各,47点組) 作家蔵
©Erika Kobayashi Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery
撮影:野川かさね
作品画像は,小説家やマンガ家としても活動している小林エリカの47点組の写真作品《トーチ》の一枚です。海辺を背景に人差し指から炎が立ち昇る図像は,オリンピックの式典に用いられる聖火を灯すトーチを暗示しています。来るべき2020年には東京でオリンピックが予定されています。1964年に東京でオリンピックが開催されたことは周知の事実ですが,1940年にも東京での開催が計画されていながら頓挫したことはあまり知られていないのではないでしょうか。小林は本展で,オリンピックやそれにまつわる物語を取り上げた,《トーチ》を含む新作インスタレーションの発表する予定です。
国立新美術館
(住所)〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
- 問合せ
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)
- 交通
-
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7出口から徒歩約4分
- 開館時間
- 10:00~18:00 毎週金・土曜日は,9月は21:00まで,10・11月は20:00まで
入場は閉館の30分前まで - 休館日
- 毎週火曜日 ※ただし,10月22日(火・祝)は開館,10月23日(水)は休館
- 観覧料
- 当日 1,000円(一般) 500円(大学生)
前売り/団体(20名以上) 800円(一般) 300円(大学生)
※団体券は国立新美術館でのみ販売
※高校生,18歳未満の方(学生証又は年齢のわかるものが必要)及び障害者手帳を御持参の方(付添いの方1名を含む)は入場無料 - ホームページ
- https://www.nact.jp/exhibition_special/2019/gendai2019/