2021年5月24日
国立工芸館石川移転開館記念展Ⅲ
近代工芸と茶の湯のうつわ―四季のしつらい―
国立工芸館長 唐澤昌宏
東京国立近代美術館工芸館は,石川県金沢市に移転し開館して以来,通称として使用してきた「国立工芸館」を,4月1日から正式名称といたしました。この名称変更により,政府関係機関の地方移転の意義をより明確にし,地域との連携を深めながら,更なる工芸文化の振興発展に努めてまいります。
さて,開館を飾った記念展の第1弾では「素材・わざ・風土」をキーワードに,工芸館が所蔵する近代日本の工芸の名作を紹介しました。続く第2弾では,「うちにこんなのあったら」という視点で,工芸作品とともに工芸館が所蔵するもう一つのコレクションであるデザイン作品を展示,紹介いたしました。
そして本展は,開館記念の第3弾として開催いたします。茶の湯の文化が広く根付いている金沢という土地柄を意識して,テーマを「茶の湯のうつわ」としました。
荒川豊蔵《志野茶垸 不動》1953年頃
東京国立近代美術館蔵(加藤孝造氏寄贈)
撮影:エス・アンド・ティ フォト
日本では茶の湯の発展とともに,様々な素材や技術を駆使した“茶の湯のうつわ”がつくられてきました。特に作家と呼ばれるつくり手が登場した近代以降,それらはつねに時代を映す鏡のように,そのときどきの新たな考えや造形,そして意匠を見せてきました。
そのような「茶の湯のうつわ」=「作品」は,用途を前提とした機能性と実用性を重視した使い勝手のよい,いわゆる一般的な茶道具とは異なり,個人の美意識に基づき生み出された想いを伝える「表現のうつわ」として,個性ある姿や形を見せるものも少なくありません。
手前から,
安藤源一郎《紙胎蒟醤風籟茶器》2020年
内田綱一《白金彩茶盌》2020年
新里明士《光器水指》2020年(すべて東京国立近代美術館蔵)
撮影:大屋孝雄
また,茶の湯にまつわるうつわは,つくり手からの提供だけでなく,使い手からの美意識による新たな使い道,いわゆる「見立て」によっても発展してきた歴史があります。それは,道具として様々な制約のあるうつわを,作家が個人としての表現を求めるのと同じように,使い手もそれぞれに「うつわ=作品」を見立てて茶の湯に用いて楽しむという,茶の湯の世界で確立され受け入れられてきた原点ともいうべき姿でもあります。
ルーシー・リー《スパイラル文花瓶》1980年頃
東京国立近代美術館蔵
撮影:エス・アンド・ティ フォト
本展では,個としての想いを造形や意匠に表している「作品=茶の湯のうつわ=表現のうつわ」と,使い手からの「見立てのうつわ」を,器の種類や四季の取り合わせの中で紹介し,時代によって移りゆく茶の湯に対する作家の思考や茶の湯の造形について探ります。
国立工芸館
(住所)〒920-0963 石川県金沢市出羽町3-2
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
-
JR金沢駅東口(兼六園口)からのアクセス方法
■バス
【路線バス】
3番乗り場:18系統に乗車(約12分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分
7番乗り場:どの系統でも乗車可(約11分),「広坂・21世紀美術館(しいのき迎賓館前)」下車徒歩9分
6番乗り場:乗車(「柳橋」行を除く)(約12分),「出羽町」下車徒歩7分【城下まち金沢周遊バス】
6番乗り場:右回りに乗車(約18分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社前)」下車徒歩7分。左周りに乗車(約20分),「広坂・21世紀美術館(石浦神社向い)」下車徒歩7分【まちバス】※土日祝のみ運行
5番乗り場:乗車(約20分),「金沢21世紀美術館・兼六園(真弓坂口)」下車徒歩約7分■タクシー
約4km,平常時で約10~15分 - 開館時間
- 9:30~17:30(入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 月曜日
- 観覧料
-
一般500円,大学生300円
*高校生以下及び18歳未満,障害者手帳をお持ちの方と付添者1名までは無料 いずれも消費税込。 - ホームページ
- https://www.momat.go.jp/cg/exhibition/the-third-of-the-national-crafts-museums-grand-opening-exhibitions/