2022年11月25日
圧倒的なボリュームと密度で迫る大回顧展
東京国立近代美術館 主任研究員 成相肇
東京国立近代美術館(東京・竹橋)では「大竹伸朗展」(主催:東京国立近代美術館、日本テレビ放送網)を開催中です(2023年2月5日(日)まで)。創作活動40年以上、現代日本を代表するアーティストの16年ぶりの大回顧展です。大竹伸朗(1955–) は、1980年代初めに華々しくデビューして以来、絵画、版画、素描、彫刻、映像、絵本、音、エッセイ、インスタレーション、巨大な建造物に至るまで、猛々しい創作意欲でおびただしい数の仕事を手掛け、トップランナーであり続けてきました。アートファンのみならず幅広い層から支持を受け、2014年には第64回芸術選奨文部科学大臣賞美術部門を受賞。近年ではドクメンタ(2012年)とヴェネチア・ビエンナーレ(2013年)の二大国際展に参加するなど、現代日本を代表するアーティストとして海外でも評価を得ています。また国内でも「東京2020 公式アートポスター展」への参加、国指定重要文化財「道後温泉本館」の保存修理工事現場を覆う巨大なテント幕作品《熱景/NETSU-KEI》の公開など、ますます精力的に活動を続けています。
今年で開館70周年を迎える東京国立近代美術館でついに開催される大竹伸朗の回顧展は、国際展に出品した作品を含むおよそ500点を7つのテーマに基づいて構成しています。2006年に東京都現代美術館で開催された「全景 1955–2006」以来となる大規模な回顧展であり、今年は1982年の大竹の初個展から40周年となる年でもあります。本展では大竹が小学生の頃に描いた最初期の作品から近年の海外発表作、そしてコロナ禍に制作された最新作までの作品が一堂に会し、小さな手製本から巨大な小屋型のインスタレーション、作品が発する音など、ものと音が空間を埋め尽くします。
あらゆる素材、あらゆるイメージ、あらゆる方法。作者が「既にそこにあるもの」と呼ぶテーマのもとに半世紀近く持続してきた制作の軌跡を辿るとともに、時代順にこだわることなく作品世界に没入できる展示によって、走り続ける強烈な個性の脳内をめぐるような機会となるでしょう。
《残景0》2022年 Photo:岡野圭
2019年以降大竹が取り組む「残景」シリーズの最新作《残景0》(2022年) を初めて公開。あわせて本作の制作過程を追った「21世紀のBUG 男画家・大竹伸朗」(BS8K、2022 年6月放送)を会場内で上映。大竹の創作の現場に初めて密着した貴重なドキュメンタリー映像です。
《スクラップブック#71 /宇和島》2018-21 年 Photo:岡野圭
大竹がライフワークとしてほぼ毎日制作しているスクラップブックは、ノートや既製本にあらゆる印刷物を貼り込み、インクや絵の具を塗り重ねたもので、中には895ページ、重さ28.9kg ものボリュームにおよぶ作品もあります。2013年のヴェネチア・ビエンナーレには当時の最新作66冊目までが出品され、世界の注目を集めました。本展では、1977年の1冊目から最新作の71冊目まですべて展示しています。
《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》2012 年 Commissioned by dOCUMENTA(13) Photo: 山本真人
5年に1度ドイツ・カッセルで開催される世界最大級の国際展・ドクメンタへ2012年に唯一の日本人として参加した大竹伸朗。現地で好評を博した《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》(2012年) は関東初公開です。ネオンサイン、トレーラー、舟、ギター、映像、巨大なスクラップブックなど、ものと音が凝縮された小屋型のインスタレーションです。※会場にあわせた再構成バージョンを展示
《宇和島駅》1997 年 Photo:岡野圭
宇和島駅舎のリニューアルにともない駅名の古いネオンサインをもらい受けた大竹は、これまでも個展開催の度に会場となる美術館にそのネオンサインを作品として設置してきました。本展会期中、東京国立近代美術館のテラスで《宇和島駅》(1997年)のネオンが輝く姿をお楽しみください。
東京国立近代美術館
(住所)〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- 東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口徒歩3分
- 開館時間
- 火曜日~日曜日10:00~17:00(金・土曜は20:00 まで。入場は閉館30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし1月2日、1月9日は開館)、年末年始(12月28日-1月1日)、1月10日(火)
- 観覧料
- 一般¥1,500、大学生¥1,000
- ※いずれも消費税込。
- ※高校生以下および18 歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名) は無料。
- ※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展「MOMAT コレクション」もご覧になれます。
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