2024年4月26日
「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」展
国立西洋美術館 主任研究員 新藤淳
国立西洋美術館――そこは基本的に、遠き異邦の過去の芸術家たちが残した作品群だけが集っている場です。したがって、この美術館には、いわゆる「現代美術」は存在しません。しかし、今回の展覧会では、そんな国立西洋美術館へと、こんにちの日本で活動をしているさまざまなアーティストの作品を初めて大々的に招き入れます。
竹村 京《修復されたC.M.の1916年の睡蓮》
(部分、制作過程)2023-24年、釡糸、絹オーガンジー、
カラープリント、作家蔵
そうするのには、理由があります。
国立西洋美術館の母体となった松方コレクションを築いた松方幸次郎は、自らが西洋において蒐集した絵画などが、未来の芸術家の制作活動に資することを望んでいたといえます。また、戦後に国立西洋美術館の創設に協力した当時の美術家連盟会長、安井曾太郎のような画家も、松方コレクションの「恩恵を受ける」のは誰よりも自分たちアーティストであるとの想いを表明していました。
これらの記憶を紐解くなら、国立西洋美術館はじつのところ、未知なる未来を切り拓くアーティストたちに刺戟をもたらすという可能性を託されながらに建ったと考えることができるでしょう。けれども、この美術館が実際にそうした空間たりえてきたかどうかは、いまだ問われていません。それゆえ本展では、今の日本に生きるアーティストが、国立西洋美術館やそのコレクションによって触発されるのかを検証してみたく思います。あるいは彼ら−彼女らの作品が、当館が所蔵する過去の芸術といかに拮抗しうるかを見てゆきます。こうしたことを通じて、きっといろいろな問題が炙りだされるでしょう。
小沢 剛《帰ってきたペインターF―Painter F Song》
2015年、ビデオ、12分8秒
森美術館
「展示室は未来の世界が眠る部屋である」と書き、さらに「未来の世界の〔……〕芸術家は、ここに生まれ育ち――ここで自己形成し、この世界のために生きる」と記したのは、ドイツの作家ノヴァーリスです。それはヨーロッパに「美術館」と呼ばれる制度が本格的に成立した時期とも重なる、18世紀末のことでした。
本展はノヴァーリスのその言葉を受けとめつつ、はたして「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」と問います。それは国立西洋美術館の自問であると同時に、参加アーティストたちへの問いかけです。そして、この展覧会を訪れてくださる皆さんとともに考えたい問いにほかなりません。
弓指 寛治《ウエノさんのブルーシート小屋》
2023年、アクリル、鉛筆/木製パネル、新聞紙
作家蔵
国立西洋美術館
(住所)〒110-0007
東京都台東区上野公園7-7
- 問合せ
- 050-5541-8600(ハローダイヤル)
- 交通
- JR上野駅下車(公園口)徒歩1分
- 京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
- 東京メトロ銀座線、日比谷線上野駅下車 徒歩8分
- 開館時間
- 9:30~17:30
- 毎週金・土曜日、4月28日(日)、4月29日(月・祝)、5月5日(日・祝)、5月6日(月・休) 9:30~20:00
- ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日、5月7日(火)(ただし、4月29日(月・祝)、4月30日(火)、5月6日(月・休)は開館)
- 観覧料
- 一般2,000円、大学生1,300円、高校生1,000円
※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料です(入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳をご提示ください)。
※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,100円、教職員1,800円でご覧いただけます(学生証または教職員証をご提示のうえ当館券売窓口にてお求めください)。
※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展もご覧いただけます。
※詳細は、国立西洋美術館公式サイトをご確認ください。 - ホームページ