2015年8月7日
お盆はみんなで回したり流したり
~佐田岬半島の初盆行事~
伊方町町見郷土館 学芸員 高嶋賢二
四国の最も西の端,九州にむかって細長くのびた佐田岬半島。そこに位置する愛媛県伊方町では,夏のお盆になると,各地で個性的な行事がたくさん行われています。いくつかご紹介しましょう。
お盆は,むかしから亡くなった人たちの霊が家に帰ってくる日と考えられてきました。佐田岬半島では,大切な家族が亡くなって初めて迎えるお盆を,ニイボンとかミーボンとかシンボンなどと呼び,いつもの年よりもていねいで細やかな行事を行って,帰ってくる霊を大切にお迎えし,もてなし,そしてあの世へと送りかえします。
半島先端の三崎地域では,モーリョウとかモーロウなどと呼ばれる行事があちこちにありますが,中でも松地区のモウナは個性的です。竹を十字に組んで着物を着せ,顔を付け, 裾にアワビ貝をぶらさげた大きな人形を作り,それを初盆の家の人たちが地面に突き立てて,「モーナ,モーナ,モーミードーブ」のかけ声でぐるぐる回します。ほかにも,人形は作りませんが,やはりみんなで輪になってぐるぐる回ったり,海に向かって唱えごとをしたりと,地区ごとに様々なモーリョウ行事が行われています。
川之浜地区では,ナッポイドウという行事があります。初盆の家からたくさんの短冊を付けた笹を持った子供たちが集まり,合図でいっせいに砂浜にたたきつけて,短冊をすべて落とし,最後に火で燃やします。
また,大久・川之浜・大江などの地区では,初盆の家の人々を中心に,藁でオショロブネという大きな船を作って,海に流します。船は形や大きさも各地様々で,亡くなった人になぞらえた市松人形を立てたり,ナスビやカボチャに顔を彫った「船頭さん」を付けたりします。
ほかにもご紹介しきれないくらい,たくさんの行事が各地で行われています。これらは平成22年に「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され,現在地元で調査が続けられています。また行事の一部は,平成26年度の「変容の危機にある無形の民俗文化財の記録作成の推進事業」に係る映像記録が作られました。