2017年9月7日
芦屋の八朔行事
芦屋町教育委員会生涯学習課文化係 山田 克樹
芦屋は肥沃な筑豊地方を流れる遠賀川の河口に開けた港町です。また江戸時代には響灘に面した廻船の基地となり,唐津街道の宿場であることも重なり,交通の要衝として栄えました。
八朔行事の八朔とは旧暦八月朔日のことです。もとは節句の一つで,田の実の節句ともいい,豊作を祈る行事でした。また,この日に目上の人に贈り物をする風習がかってあり,古くは鎌倉時代以前まで遡ります。
全国に残る八朔行事の中には,豊作祈願行事や踊り,相撲,作り物などが報告されています。芦屋の八朔行事は子供の誕生や健やかな成長を祝うもので,瀬戸内の古い港町,広島県福山市鞆浦,香川県丸亀市などに似た行事が残されています。起源についての確かなことは,残念ながらわかっていませんが,江戸時代の中頃から約300年間以上にわたって続いていると言われています。
八朔 ワラウマ
製作風景
八朔風景
ワラウマ
現在の芦屋町では9月1日に作り物を飾って,翌日の2日に近所の人や親せきが作り物をもらいに行きます。初めての男の子が生まれた家では,藁で作った馬に紙製の旗指物と武者人形を乗せた「ワラウマ」と弓矢の作り物を吊した「ササダケ」,女子の家では,米の粉を蒸して団子にし彩色したものから食べ物・吉祥もの・動物・人形などの「ダゴビナ(団子雛)」を飾ります。表座敷や床の間などに雛壇状のものを作って,ひときわ大きな大将馬や内裏雛とともに飾ります。ワラウマやダゴビナは,家によっては300以上製作することもあります。
このほか昭和30年代までは,木製や張り子の飾り馬を台車に乗せ,後ろにササダケを立てて町内を引いて回る「ヒキウマ」という行事も行われていました。
八朔 ダゴビナ
製作風景
八朔風景
ダゴビナ
芦屋の八朔行事は昭和35年に福岡県指定無形民俗文化財となり,平成19年には「記録製作等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択されました。平成20・21年には八朔行事の詳細な民俗学的調査・現状記録を行いました。八朔行事を行う家庭が絶えないように芦屋町教育委員会では,ワラウマ・ダゴビナ講習会や記念写真の贈呈などを行い,行事の継承に努めています。しかし,社会構造の変化(核家族化や住環境の変化など)・原材料(わら)の入手が難しくなったことなどで,行事の存続が困難になりつつあります。現在では,貴重な伝統文化を未来に継承すべく,個人や町興し団体も保存継承に取り組んでいます。
八朔風景
ウマモライ
八朔風景
ヒキウマ