2014年10月21日
学校でできることは,学校でしてもらう
―出前授業の実践から―
宇治市歴史資料館 坪内 淳仁
「今日,僕がここへ来たのは,みんなが今,社会科で勉強していることについて,“何かお話をしてくれませんか”,と先生から相談を受けたからです。そういうお話,みんな,聞きたい?」と,僕。「うん,聞きたい!聞きたい!」と,子供たち。「本当に聞きたいの?」と,また僕。「本当に聞きたい!!」と,子供たち。「オーライ!じゃあ,僕の話を聞いてくれ!聞かせたい話がたくさんあるんだ!」,いつもと違う授業の始まりです。
宇治市歴史資料館外観
出前授業は,いつもと違う教室で,いつもと違う大人(僕のこと)が行います。その大人は,蛍光グリーンのTシャツの上に派手な模様のシャツを着て,カーゴパンツをはいています。使う言葉も聞き慣れた京都弁ではなく,名古屋弁。クラスはいつもと違う不安定な状態となり,何だかいつもと違うお話が始まりそうで,「学校に来たとき,なぜかすごいと思って,早く聞きたいと思って,ワクワク,ドキドキ」するのです。
問いかけにより頭の中の「見える」を増やす
いつもと違う授業では,一方的な情報の伝達はしません。子供たちが主体的に授業に参加できるよう,資料を中心とした対話によるお話をします。子供たちと資料を見ていくとき,まずは問いを投げかけます。「どういう形?」「何でできている?」「どうやって使った?」などなど。すると「こんな形」「この素材でできている」「こうやって使った」と,子供たち。「本当にそうか?」「そうしたらこんな問題があるんじゃないか?」「じゃあ,こういうときはどうなるんだ?」と,またまた僕。問いかけを通して,子供たち各人が意識している以上に,注意深く,丁寧に,資料をよく見て,考えることができるようにフォローします。
資料をよく見る
子供たちは,更に資料をよく見て,これまで各人が経験したことや学んだことを集約的に使って,自ら考え出した「!!!」といった気づきや,「???」といった積極的な疑問を,聞かせてくれます。こうして出された積極的な意見や疑問を,子供たちと一緒に,一つずつ,丁寧に,確認,点検していく作業も,僕の仕事です。
これまでの経験や知識を使って,私が考えた道具の使い方を発表
出前授業では,「先生色」に染まったクラスの状態をちょっと壊して不安定にし,新たな雰囲気を作ります。こうしてできたいつもと違う空間で,頭の中に「見える」モノを増やし,相対的な物事の見方や考え方が生まれるように手助けします。その辺りが学校とは違った,博物館がする教育の,やるべき面白いところであり,役割なのだと思うのです。
宇治市歴史資料館
〒611-0023 京都府宇治市折居台1-1(宇治市文化センター内)
- 問合せ
- 0774-39-9260
- 交通
- JR奈良線宇治駅,あるいは京阪宇治駅から,バス「太陽が丘」「維中前」「宇治文化センター」行に乗車し,「宇治文化センター」で下車。
- 開館時間
- 火曜日~日曜日 9:00~17:00
- 休館日
- 毎週月曜日,祝日,年末・年始
- 観覧料
- 無料
※特別展開催中は,高校生以上有料となります。 - ホームページ
- http://www.city.uji.kyoto.jp/