2016年4月4日
入り口から奥深くまで,「楽しさ」を
十日町市博物館 学芸員 阿部 敬
十日町市では,国宝・火焔型土器で知られる笹山遺跡の発掘調査事業に伴って,市民の皆さんに調査の結果を知ってもらうだけでなく,断片的な発掘出土品から歴史の証拠を形作っていく過程も楽しんでもらいたい,という思いから,市民向け体験企画を種々実施してきました。
体験といっても作業的な色合いが強くては敷居も高いし興味を持っていただけない気がしたので,まずは「楽しそう!」と感じてもらえるよう配慮しました。企画が楽しそうなら参加しやすく,参加しているうちにいろいろな意識が生まれ,いつしか個々人の好む形と深さでの自発的な学びに至れるのではないか,というわけです。そこで生み出されたのが体験企画「ささやまラボ」や博物館ホームページの「笹山日記」でした。
ささやまラボとは,笹山遺跡から出土した土器の破片を接着したり,拓本(注:凹凸のある土器に貼った紙の上から墨を打って,紙に文様を写し取ったもの)を作ったりする記録作業の体験企画です。
土器同士を接着する「これ,本当につくのかなあ?」
当初はミニ講義もしていましたが,最近は本物の火焔型土器破片からとったシリコン型に溶けたチョコを流し込んで,本物そっくりのチョコを作る体験をしています。チョコ効果は抜群で,「正直,そのためだけに来ちゃった!」という方が大半ですが,接着や拓本にも興味を持っていただけるのが常です。
火焔型土器チョコを作る
「チョコもいいけど,意外にこっちも楽しい!」
そんな声も多く聞きます。
チョコ型に使った土器も,接着や拓本に使った土器も,全体がわからないカケラばかりです。でもそういうカケラからでも大事な情報をくみ取れることがある,ということも併せてお伝えしています。
「へ~,例えば何がわかるの?」
そう聞かれると,私たちはちょっとうれしくなります。本物さながらのチョコを持って帰って,御家族と一緒にもう一回盛り上がって,この経験を忘れ難いものにしてくれたらと思っています。
とある日の笹山日記
笹山日記は,博物館ホームページにあるコーナーのひとつで,笹山遺跡に関することなら何でも書く日記です。大抵は作業員さんたちの整理作業,ささやまラボなどのイベント,日々の出来事について,思ったことを率直に記しています。お堅いのは厳禁です。遺跡や土器に縁のない人が初めて現場に入ったときに感じるようなことを,わかりやすく親しみを込めて伝えるものです。たまに担当調査員が「しまった!つい真面目なことを記してしまった!」なんていうこともありますが,これはディープなことが知りたい方々の御期待にも応えるためです。皆さんの興味は様々です。
これらの企画を歴史や文化を知るきっかけにしていただき,また興味があれば,より奥深い世界に楽しさを感じながら入っていっていただければと思っています。
十日町市博物館
(住所)〒948-0072
新潟県十日町市西本町1丁目
- 問合せ
- 025-757-5531
- 交通
- JR十日町駅から徒歩10分
- 開館時間
- 火曜日~日曜日 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日),祝日の翌日
- 観覧料
- 一般300円,中学生以下無料
※20名以上の団体は250円 - ホームページ
- http://www.tokamachi-museum.jp/index.cgi