2016年11月10日
「観る」から始まる発見の喜び
稲沢市荻須記念美術館 河合志穂
「面白かった」,「カードの作品あったよ」,「好きな絵はあの作品!」。受付で渡した『探偵カード』を片手に子供たちが笑顔で話しかけてくれます。「どうしてその作品だと思ったの?」,「どういうところが気に入ったの?」再度言葉を投げかけると,また展示室へ戻っていきます。先ほどよりは時間をかけて,子供たちはじっくり作品と向き合い考えます。
カードを片手に作品をみる
子供たちにとって未知の世界である美術館。好奇心と不安が織り交ざり,1人で展示室に入った子供は大抵長くて3分,本当に作品を観たのかな?というスピードで出ていきます。見た気になってさっと通り過ぎてしまうのではなく,じっくりと作品を観て,新しい発見をしてもらいたい。そんな思いから,まずは「観る」ことに重点をおいた探偵カードを作りました。カードには美術館のマナーも書き添えました。
探偵カード
名前の通り子供たちに『探偵』になった気持ちで,カード裏面に書かれた言葉のヒントを頼りに,展示室のどの作品のことかを推理してもらいます。作品を探し終えると,次は自分の好きな作品を見つけるよう自発的に観ることを促します。
美術館では子供たちに「いつでも」「楽しく」「自分で」作品を観られるよう,日時を限定せずにこのカードを配布しています。
じっくり作品を観る
以前よりは子供たちの展示室での滞在時間は確実に長くなりました。また,観た後に一人で完結しないよう受付で再び言葉を投げかけるようにもしています。コミュニケーションをとることで,子供のやる気は更に高まり,カードは現在4種類ありますが,「もっとやりたい!」,「もっと難しいのはないの?」と言われます。ゲーム感覚で無理なく「観る」ことにつなげることができています。
作品を観ることが楽しければ,次回もまた鑑賞したくなります。その体験により,芸術鑑賞がその人の人生に自然と位置づけられ,感性を豊かに,そして人生を彩ることへとつながります。美術館がより身近な親しみのある存在として実感され,最終的にはその次の世代へと広がっていってほしい,そんなきっかけになればと夢が膨らみます。
今後は,子供と美術館職員の間での発見の共有だけではなく,子供たち同士で,家族で一緒になって,うれしさや楽しさを共有することができ,さらに,次の段階となる自発的な鑑賞につなげていけるツールを考えていきたいと思います。
稲沢市荻須記念美術館
(住所)〒492-8217 愛知県稲沢市稲沢町前田365番地8
- 問合せ
- 電話 0587-23-3300
- 交通
- 名鉄本線「国府宮駅」又はJR東海道本線「稲沢駅」より,名鉄バス「アピタ稲沢店」,「矢合観音」行き「美術館・保健センター」で下車
- 開館時間
- 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(祝日の場合は翌日),祝日の翌日,はだか祭の日,年末年始
- 観覧料
- 一般310円,大学生・高校生210円,中・小学生50円
※特別展は別料金 - ホームページ
- http://www.city.inazawa.aichi.jp/museum/