2017年9月7日
来館者の絵本エピソードを会話のきっかけに!
絵本美術館 森のおうち・学芸員 米山裕美
当館は,国内外の絵本原画を年間5~6回企画を変えて展示をしています。1994年の開館以来,館の指針を宮沢賢治が作品に込めた思い「生きとし生けるものの生命の大切さ平等さ,自然との共存」としています。
昨年は宮沢賢治生誕120年で,当館では春と秋に賢治作品絵本の原画展を企画しました。
賢治作品は,とても好きな人とほとんど読むことがない人と両極端といっていいほど分かれます。その中で当館の思いが来館者へどれほど伝わっているかが疑問でした。
いくつかの現状確認や反省から,館長はじめスタッフ皆で話し合い,来館者と積極的に会話をすることで,企画展や館の指針を理解してもらい,さらには館のファンになってもらおうと考えました。
そこで,ツールとしてアンケートやワークシートを,これまでなかった内容~来館者が自ら取り組み,考え,発見できるものにして会話の糸口をつかむことにしました。
まず,企画展が始まってすぐの関連イベントのアンケートで,用紙内に感想だけでなく,参加者が賢治作品を身近なものとして感じられるよう「あなたの宮沢賢治にまつわるエピソードをぜひ教えて下さい。」という枠を作成し,自身を振り返えってもらう機会にしました。また,その答えをどこかで共有できればと考え,SNSで紹介することにしました。
取り組んでもらいやすくするためイラストで柔らかい雰囲気を作りました
すると,想像以上に様々なエピソードなどが出てきたことで,後日,お話会出演者による反省会の席で「設問が新しい視点でとてもよかった」「出演者側にも新しい発見がある」などの感想をもらえました。
いのちの讃歌,自然の讃歌語りと音楽で紡ぐ賢治からのメッセージ コンサートの様子
ワークシートでは,エピソードの設問の他,展示原画中での好きな場面についてなどを追加して作成しました。また,スタッフと会話をするきっかけになるよう,事前に展示の画家にも好きな場面を伺い,「知りたい方は,スタッフにお声かけください。」と促し,さらにスタッフに書いた内容を見せるとポストカードをもらえる形にしました。
展示室の一画に座って書けるスペースを作りました
しかし,ワークシートをただ展示室に置いているだけでは,なかなか積極的に取り組んでもらえず,先に来館者と話をしながら手渡すことで取り組んでもらえ,さらなる会話の広がりに役立ちました。
返ってきたワークシートには「父からの本のプレゼント,宮沢賢治全集。小3の頃だったので,母に中から選んで読んでもらっていました。(以下略)」などの思い出をつづったものや,「宮沢賢治は内容が難解すぎて,私にはなかなか親しみを感じられないという印象が強かったですが,今回の展示で(中略)分かりやすく,自分自身の心情にも重なる部分がありました。」とスタッフの励みになるものもありました。
森のおうちSNSより
また,ある団体の代表より,「ワークシートのおかげで帰りのバスでお互いの書いたことを披露しあって話が弾み,素敵な交流のきっかけをいただけた」とうれしいメールが届きました。
ワークシートで,来館者が予想以上に様々な賢治作品をあげてくださり,館としても楽しく来館者のことを知ることができ,会話も弾みました。その後,味をしめ,各企画展に合わせたワークシートを何回か作り,続けています。これからも工夫を重ね,来館者と会話の中から更に発展した学びの場が生まれることを目指していきたいと思います。
絵本美術館 森のおうち
(住所)〒399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9
- 問合せ
- 0263-83-5670
- 交通
- JR大糸線穂高駅下車,タクシーで約10分,長野自動車道安曇野ICから約25分
- 開館時間
- 9:30~17:00(1,2月16:30まで,最終入館は閉館30分前,変更日あり・館HPカレンダー参照)
- 休館日
- 木曜日(展示替え休館・祝日振替休館・1月上旬連続休館あり,G.W.とお盆の週は無休)
- 入館料
- 大人 800円,小・中学生 500円,3歳以上 250円,3歳未満 無料
※団体料金(15名様以上)大人700円,小・中学生 400円,3歳以上 200円
※障がい者手帳をお持ちの方は半額,付添い1名100円引き - ホームページ
- http://www.morinoouchi.com/