2022年1月25日
「学び」がおこるプログラム
~見る・考える・話す・聞く+検証を取り入れて~
御所野縄文博物館 峠 友香
御所野縄文博物館では2019年から「ドキドキ考古学者体験」という教育プログラムを開始しました。このプログラムでは、土器の観察を通して、参加者自身の「気づき」や「主体的な学び」を促すことを目的としています。これまでに小学生、小学生親子、中学生以上と対象を変えながら年に1、2回ほど実施しています。
縄文土器って何?
プログラムの最初に「そもそも縄文土器ってなんでしょう?」とスタッフが問いかけると、参加者の皆さんから「入れ物!」「水を入れるもの!」「鍋!」など、様々な意見が飛び交います。観察の前に、参加者とコミュニケーションを取りながら、縄文土器や発掘調査のようすを紹介しています。
【見る・考える】土器を観察する
それぞれ特徴の違う3種類の土器のかけらを観察します。スケッチの時間は皆さん真剣そのもので、とても静かな時間です。まるで土器と対話しているかのようです。そして違う土器がまわってくると「おー!」「なんだこれ?」と様々な反応があり、新しい土器との出会いにワクワクしているようすが伺えます。
観察する土器のかけら3種類
それぞれ文様や特徴の違うものを選んでいます
土器を観察しスケッチを書いているようす
【話す・聞く】参加者同士で話し合う
観察の後は、自分の予想をグループ内で発表します。自分と違う予想を聞いて「なるほど!」と納得したり、驚いたりしています。
文様以外にも「土器の色が気になる」「何か光っているものが混ざっている」など、観察をするなかで気付いたことを話してくれることもあります。
グループごとに自分の予想を発表しているようす
(小学生親子対象の回)
【検証】 粘土に文様をつけてみる
皆さんが予想した道具を使い、実際に粘土に文様を付けてみます。
ある日の小学生対象の回のことです。縄目の文様の土器を見て、予備知識がある子どもは「縄」と予想を立ててくれました。縄目を付けてもらうよう促すと、粘土に縄を押し付けてくれますが、土器のように規則的な文様になりません。そこでスタッフから「どうやったら同じような文様になるかな?」と問いかけると、子どもたちは考えたり、試したりします。ついに誰かが縄を転がしてみると、土器と同じような文様が粘土に付きました。すると、子どもたちから「わー!」「すげー!」という歓声が上がり、スタッフ自身、これまでに体験したことのないほどの盛り上りを見せました。
普段は展示室でなんとなく見ている土器も、今回は自分で観察し、考えて予想を立てているため、驚きや感動もひとしおだったのだと思います。
粘土に文様を付けて検証しているようす
(小学生対象の回)
プログラムが終わったあと、参加してくれた親子がさっそく展示室を見て帰ってくれました。また、土器を見に何度も博物館に足を運んでくださっている方もいらっしゃいます。
このプログラムはスタートしたばかりで、その都度新しいことを試し、改良を繰り返しています。何よりスタッフ自身が毎回、新たな発見や気づきがあり、楽しみながら取り組んでいます。
2021年の7月には、御所野遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されました。博物館への来場者も増え、縄文時代への関心の高まりを感じます。
「ドキドキ考古学者体験」を通して、皆さんがより縄文文化に興味を持ち、学ぶ楽しさに気づいてもらえるよう、これからもプログラムを継続していきたいと思います。
御所野縄文博物館
(住所)〒028-5316 岩手県二戸郡一戸町岩舘字御所野2
- 問合せ
- 0195-32-2652
- 交通
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- JR東北新幹線二戸駅から車で15分
- 東北自動車道八戸線一戸I.C.から国道4号を南下し車で5分
- IGRいわて銀河鉄道一戸駅からタクシーで5分
- 開館時間
- 午前9時から午後5時(ただし入館は午後4時30分まで)
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし月曜日が祝祭日の場合、その翌日)、祝日の翌日、年末年始
- 観覧料
- 一般300円、大学生200円、小中高生(18歳以下)無料
※20名以上の団体の場合は1人につき50円割引 - ホームページ
- https://goshono-iseki.com