2022年4月25日
展示物からその先の宇宙へ
―人がつなぐ展示コミュニケーションの実践―
仙台市天文台 企画・交流 郷古由規
「宇宙を身近に」を施設ミッションとする仙台市天文台では、地球近傍からはるか遠くの宇宙まで、天文学の「なぜ?」を解説するパネルや模型等を展示しています。展示室には専門知識を持ったスタッフが常駐し、多岐に渡る宇宙・天文の質問対応や展示解説、ワークショップを開催しています。
仙台市天文台の展示室内の様子
一見、自分には関係ないようにも思える「宇宙」について、どのように理解を深め、さらに「身近」なものとして捉えることができるのか。サイエンスの中でもとりわけ天文に関しては、実物を展示するわけにもいかないため、一筋縄にはいきません。「宇宙」を身の回りのものごとと関連づけて「日常」へと繋げる過程で、来館者自身にも「なぜ?」を考えてもらい、学ぶ楽しみを共に見出せるような工夫を凝らしてこそ、宇宙そのものを自分ごと化する一歩になると考えているのです。
では、そのためにどんなアプローチが有効か?そのヒントとして位置づけているのが、「展示物と来館者との間に”人”が介在し、対話を重ねながら共に宇宙への理解を深めよう」という姿勢です。
展示を解説する様子
現在、この視点をもとに「展示の教育プログラムの開発」に総勢11名のスタッフ全員で取組んでいます。スタッフは3つのグループに分かれ、展示ワークショップの企画案を作成。実際に展示室で実践し、他のスタッフは参加者としてワークシートに書き込みながら、気づきをシェアします。月に1回程度このような場を設け、半年程で3件の教育プログラムを開発しました。
展示の教育プログラム開発のグループワーク
教育プログラムの実践と評価・検証の様子
「思考を積み重ねていくプロセスが丁寧で分かりやすい」
「ここを見て、考えてもらうには、どんな発問の仕方がいいのかな」
「途中で体を動かすのが楽しい!参加者の”発見”を発表しあう場を設けたらもっと良いかも」
スタッフからの意見は様々。参加者の顔を思い浮かべながら、良かったところやリクエストを全員で共有し、改善に繋げます。ワークショップの開催に向け、互いにフィードバックしあいながら準備を進めています。
分からないこと・モノに対して、科学的な思考に基づき、他者の考えを取り入れながら対話によって共に学ぶ姿勢を持つのは、私たちスタッフも同じです。
「宇宙の“ふしぎ”を見つけよう。その”なんで?”に、一緒に近づいていきましょう。」展示室で人を介した展示コミュニケーションが生まれるとき、そんな私たちの思いが来館者の皆さんにも伝わっていくような気がします。
仙台市天文台
(住所)〒989-3123
宮城県仙台市青葉区錦ケ丘9-29-32
- 問合せ
- 022-391-1300
- 交通
- 電車をご利用の場合:JR仙山線愛子駅下車
- バスでお越しの場合:
- 愛子観光バス/仙台駅西口「52番」停留所→錦ケ丘七丁目北・天文台入口下車→徒歩5分
- タケヤ交通/「秋保・川崎仙台西部ライナー」仙台駅西口「63番」停留所→仙台市天文台
- 仙台市営バス/仙台駅前/バス(10番のりば)→錦ケ丘七丁目北・天文台入口下車→徒歩5分
- 開館時間
- 9:00~17:00(チケット販売は閉館30分前まで)
- 毎週土曜日は21:30まで開館(展示室は17:00まで)
- 休館日
- 毎週水曜日・第3火曜日(祝日の場合はその直後の平日)・年末年始
- 観覧料
- 大人¥610,高校生¥350,小・中学生¥250(展示室・プラネタリウム各1回)
- 大人¥1000,高校生¥610,小・中学生¥400(セット券:展示室+プラネタリウム1回)
- ホームページ
- http://www.sendai-astro.jp